資生堂、世界初 オルタナティブオートファジーを化粧品分野に応用

粧業日報 2020年9月9日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 皮膚の細胞を内側から健やかにする新しいアプローチ
資生堂、世界初 オルタナティブオートファジーを化粧品分野に応用
 資生堂は、東京医科歯科大学との共同研究により、生体に備わる細胞の特別な応答機構「オルタナティブオートファジー」を世界で初めて化粧品分野に応用し、皮膚の細胞を内側から健やかな状態に整えて良好な細胞活動をサポートする新しいアプローチを見出した。

 また、カメリア種子抽出液にオルタナティブオートファジーの発動を促進する作用があることを発見した。

 今後得られた知見を活用し、生命感にあふれる健康的な美しさをもつ肌へと導くスキンケア製品の開発を目指す。同研究成果の一部は「Cell Symposia-Multifaceted Mitochondria」(2020/11・スペイン)で発表する。

 我々の皮膚は、バリア機能を担う表皮細胞やコラーゲンなどを産生する線維芽細胞などから構成されており、細胞が正常に活動することは健やかで美しい肌に重要だ。加齢や紫外線などのダメージにより細胞の活動力が低下すると、皮膚の構造が乱れ、肌荒れやシワ、たるみなどの発生につながる。

 そこで今回、細胞のエネルギー産生を担い、細胞の活動力の源となるミトコンドリアに着目して研究を進めた。

 ミトコンドリアは細胞内に存在する器官で、細胞が活動するために必要なエネルギー(ATP)を産生している。1つの細胞には300-400個のミトコンドリアが存在し、絶えず分裂や融合を繰り返し、生体活動におけるバランスを保っている。しかし、加齢や紫外線などによりミトコンドリアがダメージを受けると、ATP産生能が低下し、生体に悪影響を及ぼす活性酸素(ROS)を排出することがわかっている。

 生体には、細胞がミトコンドリアなどの細胞内小器官を自ら分解・処理するオートファジー(自食作用)という機構が存在している。オートファジーは新陳代謝に貢献する細胞内浄化やストレス応答などにおいて重要な役割を果たしており、細胞内組織の再構築を促している。オートファジーは日常的に行われており、例えば、機能が低下したミトコンドリアはこの機構により自ら再構築して機能を取り戻している。

 近年、日常的に行われている細胞内組織の再構築を行う通常のオートファジーとは異なり、紫外線ダメージによりDNAが損傷するなど、細胞が過度なダメージを受けたときに発生する特別な応答機構が東京医科歯科大学の清水重臣教授によって発見された。

 これまで知られていたオートファジーとは全く異なるメカニズムで発生するこの機構を「オルタナティブオートファジー」といい、通常のダメージやストレスでは対応できないトラブルにも機能して細胞内組織の再構築を促す、特別な応答機構として注目を集めている。

 資生堂は、東京医科歯科大学との共同研究により、この新しい機構を世界で初めて化粧品分野へ応用することに成功した。また、皮膚の細胞において、カメリア種子抽出液がオルタナティブオートファジーの発動を促進する作用があることを発見した。

 これはつまり、カメリア種子抽出液により皮膚の細胞が内側から健やかになり本来の力を取り戻すことで、生命感にあふれる美しい肌へ導く可能性を示している。

 今後、同研究成果を活用し、新たなアプローチで肌を内側から輝かせるようなスキンケア製品の開発を進めていく。
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