アルビオンでは、美しい肌、美しい笑顔を未来につないでいくことを重視してものづくりに取り組んでいる。美しい肌の実現には「研究開発」の進化、美しい笑顔の実現には「自然環境に影響を与えないものづくり」が欠かせない。
そこで今回は、研究開発、ものづくりにおける基本的な考え方や中長期的なビジョンなどについて、研究部の平井公徳部長、伊藤貴善主席研究員、熊谷工場の多治見満工場長、芳賀宏樹生産一課長に話を伺った。
魅力ある化粧品の開発には
手間暇をかけることが重要
――研究開発の基本的な考え方について教えてください。
平井 当社では、コロナ禍にあっても来店していただける魅力ある高級化粧品の開発が何よりも重要であると認識しており、その実現に向けては「手間暇をかけること」、言い換えると「素材にこだわり、丹念に作り上げ、磨きをかける」ことを基本姿勢としています。
「素材にこだわる」取り組みとして、独自原料の開発や、白神研究所を中心とした植物研究・エキス抽出を進めています。
「丹念に作り上げる」取り組みでは、新規処方開発や工程設計、新規基剤や独自処方研究、製法技術開発を行っています。
「磨きをかける」取り組みでは、有効成分の美容理論構築や横浜研究室における肌分析・肌質研究などを進めています。
――研究体制全般について教えてください。
伊藤 当社では、研究テーマに沿って最適な場所に研究所を分散配置することを基本方針としており、国内5拠点(白神研究所、八千代薬草園、東日本橋研究所、横浜研究室、沖縄研究所)・海外1拠点(スリランカ伝統植物研究所)で日々研究を行っています。
研究は、植物研究と製品研究に大別されますが、植物研究は、主に白神研究所と八千代薬草園の国内2拠点で行っています。
2010年にオープンした白神研究所では、植物研究がかなり進んでおり、すでに10種類の植物が実用化されています。初年度は91㎏の収穫量でしたが、現在は40倍以上に規模が拡大しています。試験栽培植物も55種類に達し、名実ともに当社の植物研究のメイン拠点になっています。
一方、230種類の薬草を保有する八千代薬草園では、希少性や機能性を踏まえ、30種類の試験栽培を行っています。
これほどの規模で植物研究に取り組んでいるのは、高品質で持続可能なものづくりを実現したいからであり、自社農園での有機栽培をはじめとしたトレーサビリティの強化により、安心・安全、安定供給を担保していくとともに、独自性・希少性による差別化を進めたいと考えています。
今後もこうした取り組みを継続していくことで、人にも地球にもやさしいという企業イメージの醸成を図っていきます。
薬草研究では、国立研究開発法人 日本医療研究開発機構のプロジェクトに参画し、「薬用植物の国産化・品質向上に向けた栽培技術の開発」を推進しています。
日本で使われる生薬の主要調達先は中国が8割前後を占めており、経済安全保障の観点からも生薬の自社生産は非常に重要な取り組みといえます。プロジェクトにおいては、主に寒冷地における芍薬栽培を担当しています。
植物研究では、細胞培養技術の向上に取り組んでいます。植物は種を土に植えて育てると花や実をつけるまで1年ぐらいかかってしまいますが、「カルス培養」というバイオテクノロジーを活用することにより、短期間で成分を抽出することが可能になります。また、希少な植物を大量に増殖できる「クローン培養」という技術を用いて、必要な有効成分だけを抽出することにも取り組んでいます。
これらの培養技術を活用することにより、研究スピードが格段に向上するだけでなく、化粧品製造に必要な植物成分を、環境負荷低減を図りつつ抽出することができるようになります。
以上のように、当社の植物研究は、安心・安全を第一に無農薬で原料となる植物の栽培を行う「手づくりマインド」と、カルス培養やクローン培養など「最新のバイオテクノロジー」の両輪で取り組みを進めており、それらをうまく連携させることで、持続可能な研究活動を実現しています。
それ以外にも、有効成分をさらにパワーアップさせ、違った効果を生み出す「発酵技術」、植物からより多くの有効成分を抽出すべく「抽出技術」そのものの強化にも努めています。
実用化にこぎつけた「亜臨界ジメチルエーテル抽出技術」は、従来の溶媒抽出と比較して、植物から化粧品向け高効果成分を抽出するために非常に有効な技術です。また植物抽出で課題となっていた残渣の問題を解消すべく、あますことなく植物全体を利用する研究も進めております。廃棄物を減らすことによって地球環境にやさしい持続可能なものづくりにもつながっていきます。