資生堂、環境負荷低減技術の使用を東洋大学に許諾

粧業日報 2022年3月30日号 1ページ

2022年3月30日 14:00

粧業日報制度品メーカー化粧品業界・化粧品メーカーの研究開発

カンタンに言うと

SDGs達成に向け、自社技術の外部活用を幅広く推進

　資生堂は、「WIPO GREEN」データベースに掲載している環境負荷低減技術を、東洋大学の「TOYO SDGs Students Project」に許諾した。

　ライセンス締結後、同大の学生が化粧品の企画に挑戦し、資生堂の「低エネルギー製造技術」を活用するとともに、大学周辺地域の活性化も目標とする、環境負荷の少ないサステナブルなハンドセラムの開発を実現した。

　今後も同大学は研究・教育活動の一環として、この技術を活用した化粧品の企画・開発を継続する。

　資生堂は2020年3月に「WIPO GREEN」に世界で初めて化粧品業界からパートナー企業として参画した。今回が技術の許諾を行った初めての事例となる。

　同社では、環境負荷に配慮した製品の研究に長年取り組んでおり、地球規模での環境課題への取り組みが一層重要となる中、それらの解決にグローバルで貢献していくためには、自社で保有する環境関連技術を広く社会で活用していくことが不可欠と考えている。

　「WIPO GREEN」は、2013年に世界知的所有権機関（WIPO）によって設立された、環境関連技術におけるイノベーションとその普及を促進するための国際的な枠組みであり、2022年2月末時点で世界の130以上の法人がパートナーとして参画している。技術の提供者と、解決策を求める法人や個人を結び付け、環境関連技術の普及と環境課題に対するグローバルな連携とイノベーションを促進している。

　今回、東洋大学の「SUGOMORI BOISEN project」と称するSDGsプロジェクト内の環境に配慮した化粧品の企画・開発において、コロナ禍で巣ごもり生活が増えたと言われる若年層世代に向け、ハンドセラムの企画・開発を行った。

　資生堂の「乳化化粧品の低エネルギー製造技術」を生産工程に活用するだけでなく、大学周辺地域の活性化も目標に、同大学の板倉キャンパス近くの群馬県館林市の名産品であるボイセンベリーから抽出したエキスを配合した。

　開発品「BOISEN」は3月23日に行われた同大学の卒業式の日に卒業生や大学関係者など約500名に配布された。資生堂グローバルイノベーションセンターにおいても、今回の企画を推進した東洋大学北脇秀敏教授から、技術知財部部長の木村友彦氏へ開発品の贈呈が行われた。

　資生堂は「乳化化粧品の低エネルギー製造技術」「濃縮化により、製造・運搬のためのエネルギー負荷を低減する技術」「優れた洗浄力とすすぎ時の節水の両立を図る技術」など特許権11件（2022年3月時点）を「WIPO GREEN」データベースに登録し、許諾可能であることを表明している。

　これらの技術は、渇水や地球温暖化の主な原因の1つであるCO₂排出といった、環境課題解決に向けた取り組みに貢献することから、今後も環境課題解決に向け、社会への貢献性の高い技術を積極的に「WIPO GREEN」データベースに登録していく。