資生堂、薬剤の皮膚浸透を劇的に高める新規導入促進成分を開発

粧業日報 2022年10月27日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 成分を液体化する特殊技術により高い薬剤効果と皮膚刺激低減を両立
資生堂、薬剤の皮膚浸透を劇的に高める新規導入促進成分を開発
 資生堂は、通常は固体の物質が特定の分子と相互作用することで液体化する現象を応用し、薬剤の浸透率を飛躍的に高めるとともに皮膚の安全性も両立する世界初の導入促進成分を開発した。

 皮膚内のターゲットとする作用部位に薬剤を素早く浸透させるためには、肌のバリア機能を低下させることが必要とされ、皮膚への安全性に課題があったが、今回開発した導入促進成分を活用することにより、安全性を保ちつつ、効率的に薬剤を浸透させることが可能になった。

 今回開発した新たな導入促進成分により、肌へのやさしさを追究した品質の高さはもちろん、浸透性に優れた機能的で効果的なスキンケア製品の実現を目指す。

 近年、生活者の間では、医薬部外品に対する非常に高い効果実感に期待する声が高まっている。そこで同社はその実現に向け、「独自成分の開発」や「有効成分の研究」をベースに「薬剤開発領域」の技術革新を進め、有効成分を肌の深くに存在するターゲット部位に素早く、より多く届けることに取り組んでいる。

 皮膚表面には油と親和性の高い層があり水をはじく性質がある一方、化粧品に使われる薬剤の多くは、基剤である水との親和性が高く設計されているため、水をはじく性質がある皮膚には浸透しづらく、以前から薬剤の導入促進剤の開発が行われてきた。

 導入促進剤は薬剤の浸透を促す一方で、界面活性剤のような構造や性質を持つことから、角層に浸透して脂質バリア機能を低下させ、皮膚の深くに浸透することで細胞へダメージを与えてしまうなどの課題が残されていた。

 そこで今回は、有効成分を確実に作用部位に届けるとともに、高い安全性を両立した製品を提供すべく、これまでにない新たな導入促進剤の開発を試みた。

 新たな導入促進剤を開発するにあたり、融点の高い物質同士を掛け合わせることで、元の物質の融点より低い温度で液体になる「イオン液体」という新しいタイプの液体に着目した。

 導入促進剤として一般的に使用されているアルキルベタイン(AB)に対して、様々な物質を組み合わせ、液体化する組み合わせやその配合比率を100通り以上検証したところ、アルキルベタイン(AB)とキシリトール(XY)の組み合わせ(AB/XY complex)で液体化すること、さらには皮膚への優れた浸透促進効果が認めらた。

 また、ヒトの皮膚を用いて美白薬剤である4MSK(4-メトキシサリチル酸カリウム塩)の浸透促進効果の評価を行ったところ、新規導入促進成分は、薬剤のみを適用した場合と比較して浸透速度が約3.7倍、浸透量で約3.5倍の増加が見られた。

 一般的な導入促進剤は角層の脂質に浸潤することで、秩序立った脂質構造を乱して共存する薬剤の浸透を促すが、新規導入促進成分は、角層の脂質を一部取り除いて隙間を作り、薬剤の浸透ルートを作り出す浸透促進メカニズムを示し、優れた効果につながっていた。

 続いて、薬剤の浸透促進効果を高めるだけでなく、皮膚の安全性向上の両立を検討した。一般的に皮膚の細胞にダメージを与えると考えられている物質の構造の一部を、キシリトールが覆うことにより、細胞へのダメージが緩和されることから、今回開発したキシリトールを組み合わせている新規導入促進成分AB/XY complexを、生きている皮膚の細胞に暴露して細胞の生存率を観察した。

 導入促進剤単独では細胞の生存が難しい実験条件における検証であったにも関わらず、新規導入促進成分AB/XY complexコンプレックスを細胞に暴露しても、ミトコンドリアの活性が失われる細胞の数は水への暴露同様、大きな減少は認められなかった。

 今後は「室温で液体化する」現象を応用した新規導入促進成分と、さまざまな薬剤を組み合わせ、医薬部外品における効果実感をより向上し、顧客の期待を超えるビューティーソリューションの提供を目指す。

 また、他の機能性成分の展開に向けては、「通常は固体の物質が特定の分子と相互作用することで液体化する」現象を活用した研究を継続することにより、薬剤開発領域における技術革新をさらに進めていく。
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