AGC、ディスプレイ一体型ミラー「ミラリア」の本格販売を開始

　1907年に日本初の板ガラスメーカーとして誕生し、110年以上にわたり建築用･自動車用･ディスプレイ用ガラスのリーディングカンパニーとして高品質な製品をグローバルに供給するAGCでは現在、「ガラス」「電子」「化学品」「ライフサイエンス」「セラミックス」の各分野で培った多様な技術力を活かし、様々な最先端素材やサービスの提供を通じて新たな価値創造に挑戦している。

　建築用ガラスの新たな価値提案では、リアルとバーチャルを鮮明に映し出すディスプレイ一体型ミラー「Mirroria（ミラリア）」の本格販売を2023年11月1日より開始し、国内の化粧品販売店や美容室、商業施設などでの普及を目指している。

　AGC 建築ガラスアジアカンパニー日本事業本部新市場開拓部営業開発部の藤城留美氏は、ミラリアの開発経緯と主な特長について「これまでのディスプレイ一体型ミラーは海外製が一般的で、鏡として使うための反射性と、映像をしっかりとクリアに見せるための表示視認性が両立していないことが課題となっていた。そこで当社では、AGCのバックボーンであり最も得意とする建築用ガラスとディスプレイ分野で長年培ってきた独自の光学設計技術を組み合わせ、従来のミラー型ディスプレイでは難しいとされていた高い反射性と表示視認性の両立を実現するミラリアの開発を2015年から着手した。2017年に完成し、2018年より限定販売を行っていたが、需要の拡大を受けて今回の本格販売に至った」と説明する。

　ミラリアの特徴は、コンテンツを投影しつつ周りの空間が映り込むことで、一般的なモニター･ディスプレイでは体験できないこれまでにないAR表現を実現する。鏡像と映像が重なり、さらに背景が映り込むことによって「没入感」につながる。

　このように、ミラーの美しさを保ちながら明るく鮮明な映像を表現できることから、デジタルサイネージへの利用やDXへの活用など新しい表現の可能性が拡がるミラー型ディスプレイとして、様々な分野での活用を提案している。

　店舗や商業施設では、ミラリアを活用したインタラクティブな体験や広告配信のほか、館内･施設案内のデジタル表示、施設内店舗で使用可能な限定QRクーポン発行などにより、集客や販促、顧客体験（CX）の向上に寄与するという。

　インタラクティブな体験としては、アパレルでミラリアを試着室や売場のミラーとして採用することで、バーチャル試着やコーディネート提案ができるほか、バーチャルコンシェルジュによるホテルの無人チェックイン･アウトや、鉄道の行先案内なども可能になる。そして、住宅（自宅用）の鏡をミラリアに置き換えることで、天気予報などの情報提供から家族のコミュニケーションツールとして利用できる。

　オフィスや工場では、アイトラッキングによる疲労度把握や顔色による発熱･飲酒状態の可能性検知といったドライバーの健康状態チェックや、社員の健康管理、AIによる身だしなみや装備品チェック、状況記録などでミラリアの活用を提案している。

　化粧品･理美容業界におけるミラリアの具体的な導入事例としては、2023年4月23日から5月2日の期間限定でWITH HARAJUKUに設置されたNTTコミュニケーションズのBOX型パウダールーム「Smart Powder Room」に採用された。また、AI技術を用いてサロンの顧客とスタイリストをつなぐ新たなコミュニケーションサポートアイテムとして、タカラベルモントのヘアサロン向けスマートデバイスミラー「ECILA（エシラ）」に採用され、10月に正式販売となった。

　導入事例ではこのほか、2023年9月28日にオープンし、スギ薬局がアイシンと協業したヘルスケアの最先端を体験できるDX実験型店舗「SUGI+ 羽田イノベーションシティ店」のサービスカウンターに採用された。

　同店では、アイシンが自社開発したリアルタイム音声認識アプリ「YYProbe（ワイワイプローブ）」を搭載したミラリアを化粧品のサービスカウンターに設置し、聴覚障がい者や高齢者、訪日外国人客と販売員との会話内容をミラーに表示することで意思疎通を支援している。

　「SUGI+ 羽田イノベーションシティ店様は、立地的にインバウンドのお客様が多く来店される。YYProbeの自動翻訳機能により、日本人の販売員と海外のお客様の会話内容がタイムリーに表示され、円滑な店頭コミュニケーションを実現した。ミラーとディスプレイの両方を叶えるハードウェアのミラリアに、こうした先端技術のソフトウェアを組み合わせ、IoTを活用した顧客体験を高める新しい店頭サービスの提案に今後も注力していきたい」（藤城氏）