資生堂、加齢によるシミリスク増加を抑制する方法を開発

粧業日報 2024年1月25日号 4ページ

カンタンに言うと

  • シミ部位特有の慢性炎症の正体を解明し、紫外線と加齢の両方に対応
資生堂、加齢によるシミリスク増加を抑制する方法を開発
 資生堂は、シミのある皮ふにおいて、日中の紫外線により高まることが知られている炎症因子受容体「インターロイキン6受容体(IL-6R)」の発現が、加齢によりさらに高まることを発見した。

 表皮細胞中のIL-6Rの発現が多いほど、メラノサイトの活性が高まることから、同じ量の紫外線を浴びた場合でも、加齢の要因によって、シミの発生・悪化リスクが増加することを明らかにした。

 さらに、紫外線と加齢による炎症反応を抑制する薬剤として、平実檸檬抽出液が有用であることを見出し、メラノサイトの活性を抑制することを確認した。

 これまで、シミの発生過程における紫外線と加齢の複合的な作用について、詳細は明らかにされていなかったが、今回の発見により、外的要因である紫外線と、内的要因である加齢の2つの側面からシミ予防にアプローチできるようになり、日中のシミリスクケアの重要性が改めて示された。

 同社はシミ研究において、早くから「メラニンの産生」という局所的な現象だけではなく、メラニン産生を促進しシミの発生リスクを高める「シミ肌環境」に着目した研究を進め、炎症状態によってシミ肌環境が作られるという、資生堂独自のシミに関する研究知見「慢性微弱炎症」を提唱してきた。

 一方、このシミ肌環境を作り出す炎症の2大要因として、外的要因である紫外線と、内的要因である加齢といった2つの側面の要因が挙げられるが、その複合的な作用については未解明な部分があった。そこで、この両側面からシミ発生のメカニズムを明らかにするため、研究に取り組んだ。

 ヒトの皮ふ組織のシミ部位とそうでない部位(非シミ部位)にて、炎症状態を比較したところ、炎症因子受容体IL-6Rの発現量がシミ部位で高くなっていることを発見した。皮ふのシミ部位では、炎症因子IL-6の受容体であるIL-6Rが過剰に増加することによって、炎症が慢性的に活性化されシミが「悪化しやすい」状態になっていると考えられた。

 次に、シミ部位で増加していたIL-6Rの発現に影響を与える要因として、「加齢」について検証した。若齢あるいは加齢のヒト由来表皮細胞を用いて実験したところ、日中の太陽光を想定した紫外線照射によって細胞中のIL-6Rの発現が、加齢した細胞においてより増加することが明らかになった。

 また、IL-6Rが実際にメラノサイトの活性化に影響を与えるかを探るべく、加齢表皮細胞とともに培養したメラノサイトの状態を観察したところ、若齢表皮細胞とともに培養したメラノサイトと比べ、メラノサイトの活性化の指標である樹状突起の長さと数が伸長・増加することが確認された。表皮細胞のIL-6Rの増加はメラノサイトの活性化の引き金であり、「加齢」によって促される可能性がある。

 今回、紫外線によるシミの発生・悪化リスクが、加齢によるIL-6Rの発現促進を通して高まることがわかったことから、IL-6Rの発現を抑制する薬剤の探索を行った。

 その結果、平実檸檬抽出液に表皮細胞のIL-6Rの発現を抑制する効果があることを発見した。さらに、平実檸檬抽出液は、加齢表皮細胞とともに共培養したメラノサイトの樹状突起の長さと数が伸長・増加を抑制する効果があることを発見した。IL-6Rの発現を抑制することで、加齢した肌でもシミの発生・悪化リスクを増大させない、新たなシミ予防アプローチの実現が可能になると考えられる。
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