粧業日報 2024年3月1日号 5ページ
カンタンに言うと
資生堂は、日本で唯一の体系的ふたご研究基盤を有する大阪大学ツインリサーチセンターとの共同研究を通じて、肌・身体・心の関係性を解明する新たなアプローチとして双子を対象にした検討を行い、スキンケアを含む生活習慣が肌内部に与える影響を科学的に明らかにすることに成功した。
同社が独自に開発した皮ふの毛細血管可視化技術を用いて、一卵性の双子の血管を解析したところ、遺伝情報が同じであっても生活習慣の違いにより、毛細血管の形状に違いがでることを明らかにした。さらに、双子間の毛細血管と肌内部との関係性を調べた結果、皮ふの毛細血管が適度に多い状態の場合、肌内部のコラーゲン密度が高く、酸素飽和度が高いという関係性を見出した。
これまでも、生活習慣により肌表面の状態が変わることは確認されてきたが、今回の検証により、日々のスキンケアや生活習慣によって、皮ふの毛細血管を含む肌内部の状態も良好に保つことができる可能性を確認した。
今後さらなる検討を行うことにより、後天的な因子(生活習慣、スキンケア、食生活など)と肌・身体・心の関係性を明らかにし、肌の健康状態を向上させるための革新的なアイテムやケア方法の開発に活用していく。
同社は、肌状態や、血管やコラーゲンなどの肌内部を可視化する技術を数多く開発し、スキンケアに関連する多くの知見を創出してきた。肌状態と毛細血管は、密接に関わっていると考えられているが、それらは生まれつきのものや生活習慣などの影響が複雑に絡み合うため、未解明なことが多くある。そこで研究では、一卵性の双子を対象にすることにより、生まれつきではない生活習慣などが肌に及ぼしている影響を明らかにすることに取り組んだ。
同社は、長年の研究の中で皮ふの毛細血管と肌の弾力の関係性を見出してきたが、皮ふの血管は顔の部位による差や個人差が大きく、これらが生まれつきのものなのか、生活習慣などの影響によるものなのかを見極めることが難しいという課題があった。
そこで今回、肌を傷つけることなく顔全体の皮ふの毛細血管を可視化する独自の計測技術を用い、一卵性の双子の血管を解析した。その結果、生まれつきの影響がほぼ同じである一卵性の双子であっても、皮ふの血管状態は異なっていることが明らかになった。これにより、皮ふの毛細血管はスキンケアを含む生活習慣などの影響を受けていることを確認することができた。
さらに、皮ふの毛細血管と肌状態との関係性を調べた。大阪大学ツインリサーチセンターに登録されているボランティアを対象に検討を行ったところ、一卵性の双子のペア内で毛細血管が多い群は肌内部のコラーゲン密度が高く、酸素飽和度が高い結果を得た。
このことから、肌状態の変化は、年齢や先天的な要素によるものだけではなく、スキンケアを含む生活習慣などの積み重ねによって、毛細血管やコラーゲンなど肌内部から生じることが示唆された。
この記事は粧業日報 2024年3月1日号 5ページ 掲載
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