資生堂、宇金エキスに皮ふのリンパ管の機能回復効果を発見

粧業日報 2024年3月29日号 4ページ

カンタンに言うと

  • 皮ふのリンパ管の機能低下に女性ホルモンの減少が関与していることを解明
資生堂、宇金エキスに皮ふのリンパ管の機能回復効果を発見

 資生堂は、皮ふの恒常性維持に重要である皮ふのリンパ管に女性ホルモンが直接的に作用し、リンパ管の安定化に寄与することを発見した。同社が独自に開発した皮ふ内部構造の3次元可視化技術を活用し、女性ホルモンが急激に低下し始める更年期以降の女性にて、皮ふのリンパ管の形態が顕著に変化し、機能低下を起こしていることも確認している。

 また、大阪大学の高倉伸幸教授の研究協力により、加齢によって減少する女性ホルモンと相乗的に働き、リンパ管の安定化を誘導する因子としてアペリンを見出した。さらに、アペリンの産生を促進することで衰えたリンパ管の機能を高める成分として「ショウガ科の宇金エキス」を発見した。

 今後、血管やリンパ管、免疫、神経など皮ふの内部の状態と肌との関連について、ホリスティックな視点で研究を進め、皮ふ科学研究の新たな世界を切り拓いていく。

 同社は、肌本来の美しさを引き出すには体内との関わりが大切であると考え、血管やリンパ管、免疫、神経など全身との関わりを踏まえたホリスティックな視点での皮ふ科学研究にいち早く取り組み、その知見を商品に応用してきた。リンパ管は体内の老廃物を排出する役目を担っており、身体の「むくみ」などに関与することが知られている。

 これまでに、リンパ管の機能低下がしわ、たるみにつながることや、機能低下の根本要因であるリンパ管の老化メカニズムを解明し、さらにリンパ管の機能低下時の形態変化を3次元的に捉えることに成功している。今回は、全身状態の変化がリンパ管の機能に与える影響を視覚的に捉えることを目的とし、女性ホルモンとリンパ管の関係性について検証した。

 女性ホルモンが急激に減少する更年期以降にリンパの流れが滞り、むくみやすくなることは知られていたが、その関係性については明らかにされていなかった。そこで今回、更年期前後における皮ふのリンパ管の形態変化を捉えるため、独自の3次元可視化技術を用いて各年代の女性の皮ふを解析した結果、更年期以降から皮ふのリンパ管の体積が小さく、管が細く脆弱になっていることが確認できた。これにより、形態変化を伴う皮ふのリンパ管の機能低下の要因の1つが、女性ホルモンの減少である可能性が示唆された。

 女性ホルモンは、リンパ管内皮細胞に発現する受容体を介して、細胞の増殖及び安定化を誘導する。このようにリンパ管の機能に対して保護効果を示す女性ホルモンは年代とともに分泌量が低下するため、低濃度の女性ホルモンと相乗的に働き、その効果を亢進できる因子を探索した。その結果、大阪大学の高倉伸幸教授の研究協力により、血管構造を安定化する因子としてよく知られているアペリンを見出した。

 アペリンのリンパ管に対する機能については同社の先行研究ですでに明らかになっているが、今回、更年期以降に減少する女性ホルモンをアペリンがどのように補助しうるのかを検証した。それぞれで単独刺激した場合と比べて、両物質で同時に刺激すると細胞の接着がより強くなることがわかった。これにより、アペリンが女性ホルモンと相乗的に働き、リンパ管の安定化を誘導することが明らかになった。

 女性ホルモンと相乗的に働くアペリンの産生を促進する有用成分の探索を行った結果、「ショウガ科の宇金エキス」を見出した。「ショウガ科の宇金エキス」はアペリンの産生を促進することで、リンパ管の細胞間接着を強くし、リンパ管を安定化する効果が確認された。

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