ライオン、生成AIを活用した暗黙知伝承に関する取り組みを開始

粧業日報 2024年6月12日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 国内熟練技術者の技術継承に向けNTTデータとタッグ
ライオン、生成AIを活用した暗黙知伝承に関する取り組みを開始

 ライオンは、NTTデータの協力のもと、衣料用粉末洗剤の生産技術領域にて、国内熟練技術者(熟練者)の暗黙知となっている技術や知識・ノウハウを、生成AIを用いて形式知化する取り組みを6月から開始する。

 近年、少子高齢化、労働力人口減少により、熟練技術者の技術継承や人材確保が困難になりつつある。新規参画者への技術継承にはスキルと時間を必要とし、特に暗黙知化された情報の文章化と共有については課題があった。

 今回の取り組みでは、衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発にて文章化されていない暗黙知を抽出し「勘所集」として文書化する。さらに、生成AIを活用した検索サービス「知識伝承AIシステム」に「勘所集」を取り込むことで、新たに衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発を行うメンバーが、熟練者の技術や知識・ノウハウを容易に検索・活用し、効率的に担当業務が遂行できるように支援する。

 ライオンは、効率的な技術継承を生成AIの活用で実現することにより、国内・海外拠点における技術力やグローバルECMなどの強化につなげる。

 新規参画者への技術継承には、スキルと時間が必要であり、熟練者に多大な負担がかかるため、いかに効率的かつスピーディーに知識を伝承していくかが大きな課題となっている。

 そこで今回、アジアでの需要が堅調であり、製造プロセスの開発において熟練者の暗黙知が必要とされる「衣料用粉末洗剤」を対象テーマとして選定した。

 ライオンは、「スピードと効率を備え、高度化・新価値の創出を実現できる」状態を目指し、DXを推進してきた。2023年5月には、対話型生成AI「LION AI Chat」をグループの国内従業員5000人に向けて公開するなど、生成AIを活用した業務効率化に取り組んでいる。2023年12月には、膨大な社内情報を短時間で取得し、その結果を生成AIの活用により簡潔な表現で検索者へ表示する「知識伝承のAI化」ツールの開発を開始している。

 こうした中、ライオンとNTTデータは、2022年1月からライオンの中長期経営戦略フレーム「Vision2030」の実現に向け、事業変革、DX推進プロセス確立・展開、人材開発の強化、2社共創ビジネスの創出を目指して業務提携している。

 NTTデータは、ライオンに対して、主にマーケティング領域におけるデータの分析や活用基盤構築を支援し、データ活用の高度化による顧客理解の深化やDX推進に向けた戦略策定、新規ビジネスの検討や技術検証などに貢献してきた。

 一方、ライオンはこれまで社内のデータベースにある形式知化された情報を、効率的に集めて提供する技術開発を進めてきた。また、生産技術領域においては、熟練者の知識・技能を伝承するため、OJTやマニュアル・手順書を活用してきた。

 しかしながら、衣料用粉末洗剤の製造プロセスを開発する際、効率的に検討を進めたり、工場での生産時に原料の性状などを考慮した運転条件を設定したりするノウハウといった暗黙知を学ぶのに、時間を要するという課題があった。

 そこで両社は共同で、ライオンの衣料用粉末洗剤の生産技術領域を対象に、暗黙知も含めた熟練者の豊富な業務知識を、生成AIを活用し伝承していく取り組みを開始することにした。

 NTTグループは、これまでに暗黙知を抽出し文章化する取り組みを進める中で得られた知見を活用し、熟練者へのインタビューや幅広い役職の社員間でのワークショップから情報収集を行い、暗黙知化している技術や知識・ノウハウを抽出し「勘所集」として文書化。ライオンが取り組んでいる生成AIを活用した検索サービスである「知識伝承AIシステム」に「勘所集」を取り込むことで、熟練者のノウハウを円滑に継承する仕組みを構築する。さらに、抽出対象となる暗黙知の範囲を拡大することを見据え、勘所集作成の効率化を図る。具体的には先進的な技術を生かし、インタビュー結果をまとめる工程への生成AIの適用を検討する。

 これにより、新たに衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発業務にあたるメンバーは、勘所集が取り込まれた「知識伝承AIシステム」を参照することで、熟練者から効率的に技術を継承し、担当業務に取り組むことが可能となる。

 具体的には、衣料用粉末洗剤の製造プロセス開発業務にて勘所集を取り込んだ知識伝承AIシステムの活用シーンとして「熟練者が経験してきた製造工程において、品質に影響する留意すべき事項を容易に検索・活用することで、効率的に検討手順を学習し短期間での技術力向上を図ること」「熟練者が長年かけて習得した原料の性状などの諸条件を考慮した製造条件を設定するコツを生成AIに伝承させることで、新規参画者への指導にかかる負荷を軽減すること」を想定している。

 ライオンは、今回の取り組みにより、既存文書の整備と熟練者の暗黙知の抽出を合わせて、伝承するべき知識の形式知化を実現する。さらに、熟練者の暗黙知の抽出範囲の拡大や定期的な抽出・他製品への展開を進めることで、国内・海外拠点における技術力の向上を図り、グローバルな競争力の強化につなげる。

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