ライオンファンを1人でも多く作っていくことに社内のベクトル合わせる
大学時代は法学部に在籍していた藤井氏。就職活動をしていくに従い民間企業でモノづくりに携わりたいとの思いが強くなり、当時、日用品分野で2強の一角を形成していたライオンに導かれるように入社した。
入社して4年間は、大手量販店のトイレタリー担当として大阪方面の10店舗ほどを任された。土日は担当店舗におけるイベント(exハミガキ、洗剤などの推奨販売)、量販店が休日となる水曜日は会議と忙しい日々を送っていたが、メーカーにいながらにして、自社の商品を直接ユーザーに推奨するといった小売りの経験は「生きた現場を知ることができ、とても貴重だった」と語る。事実、自らが推奨した商品を喜んで買って帰るユーザーの笑顔は、明日への活力になったという。
続いて、OTC医薬品の卸店、販売店のエリア担当に就任したが、同じ営業マンでもその難易度にはかなり差があったという。その当時、ライオンの業界内における位置づけが、トイレタリーでは「2大メーカーの1つ」であり、OTC医薬品では「数あるメーカーの1つ」であったためで、「トイレタリーは、売上目標の8~9割はライオンの企業ブランドの力で売れ、残り1~2割の中で営業マンが実力を発揮するという構図だったが、OTC医薬品の場合は、その割合が半々だった」(藤井氏)と振り返る。
次に、入社時には誰もが一度は憧れる「商品企画」のポジションについた。在籍期間は約1年と短かったが、会社の様々な部署と連携し、コミュニケーションの中から商品が出来上がっていく様を直に体験できたことが貴重だったという。「自分が動かなければ何も前に進まないこの仕事はプレッシャーも大きかったが、それを乗り越え商品化できた時にはとても嬉しかった」(藤井氏)
そして藤井氏が“一番の転機となった”と語る「IR室」に赴任した。商品企画の部署以上に「経営的視点」が求められ、企業活動全体を見て知って、そして考えることができる立場になった“この時”が人生におけるターニングポイントだと述べ、アナリストや投資家、専門家など、ストレートに善し悪しを指摘してくれる人々とのつながりが、否応なしに第3者的視点を持つ訓練をさせてくれたと語る。
日本においてIRという概念がまだ確立していなかった時期で、赴任当初は財務面の仕事がメインになると予想していたが、仕事を進めるに従い、「決算数値は過去のものにすぎない。表には見えにくいポテンシャルを判断してもらう機会を増やすことこそ重要」と次第に考えるようになっていった。
実際、個人投資家説明会や工場見学会などは藤井氏の発案から生まれたもので、ここでは「何もない状態から製品を作り上げる」という商品企画での経験が大いに活きたという。
最後に、藤井氏はこれからの広報センターの役割について、「ライオンファンを1人でも多く作っていくことに、全社のベクトルを合わせることがより一層求められる。営業や生産、企画など様々な部署の中からそうしたムーブメントが起こり、結果としてその中心に広報センターが存在するという方向にもっていきたい」と熱く語った。
藤井貴将(ふじい・たかかつ)氏 プロフィール
立命館大学を卒業後、1981年4月、ライオンに入社。入社後は、量販店向けのトイレタリー担当(大阪)を約4年、OTC医薬品の卸店、販売店のエリア担当(大阪、愛知)を約15年と、営業マンとして約20年間、現場の最前線で活躍した。その後は、薬品事業の商品企画に1年在籍した後、IR室で室長を務めるなど7年半在籍し、2009年9月より現職。
この記事はC&T 掲載
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