マニュアル化しない接客を基本姿勢に17年、
スタッフのコミュニケーション力に自信
「DAIKOKUYA」の創業は1931年、今年で80年を迎える。以前は駅ビルの「ロンロン」に店舗を構えていたが、ロンロンがアトレに移行するにあたり改修工事が始まったため、ダイヤ街に移転した。老若男女すべてが来やすく、住みよい街であるため、訪れる人の数も多い。
好条件下での店舗経営とも思えるが、一方で、駅ビルや百貨店、ドラッグストアなどの競合店がひしめく激戦区でもある。そのため、顧客獲得には「いかに店に足を運んでもらうか」が重要になってくる。
「DAIKOKUYA」では、通行人が思わず覗いてしまうインパクトのある内装に加え、通い続けたくなるような店自体の雰囲気で確実に顧客を掴み、移転後の1年間で前年比約170%の顧客獲得に成功したという。
17年前、店のオーナーに就くまで普通の主婦だったという臼井好子氏と、同じく学生だったという娘の和世氏に、同店の取り組みについて話しを聞いた。
接客は「スタッフの感性に任せて、
お客に合わせカスタマイズ」を基本に
コンセプトは「ちょっぴりの幸せ、共にDAIKOKUYA」。接客をマニュアル化せず、スタッフ個々の感性に任せてお客に合った対応をすることを基本姿勢としている。お客と仲良くおしゃべりするスタッフ、美容のアドバイスをするスタッフ、お客の浪費をたしなめるスタッフなど様々だが、こうした自由な接客が、店全体に親密で暖かい雰囲気をもたらしている。
「化粧を通じて、お客様がちょっとでも幸せになるお店でありたい。キレイになる話を聞いて、ほんわりとした心地になって帰って頂いて、次に繋げられたらと考えている。それを感じ取って頂いて初めて、この店のお客さんになろうとしてくれるのだと思う」
好子氏は「ちょっぴりの幸せ」について、こう説明する。
また、「消費者」という言葉は、その人を記号化するようで「使いたくない」といい、店に来るお客の顔をきちんと一人ひとり思い浮かべながら商品を提供することも重要視している。
カウンセリングを行う場合も、「マニュアル化しない接客」を基本とする方針は変わらない。メークアップの技術は確かに必要だが、接客には技術は一切使わず、その時その時の感性で行うことに重点を置く。
「カウンセリングはどこまでお客様に触れられるかで、次に繋がるかどうかが決まる。手だけではなく、顔までタッチを施せるまで距離を近づけないと。それなら、やっぱりお互い笑顔が絶えない接客が大事」(好子氏)
こうしたお客に対する姿勢は、好子氏が店のオーナーに就いて以来、ずっと貫いてきたことである。その成果が、同店で働くスタッフのコミュニケーション力の高さによく表れている。
ロンロン閉店に伴う改修工事が始まった09年9月、スタッフ皆が一丸となって行ったことが「顧客の誘導」である。ダイヤ街への店舗移転に際し、それまでロンロン店に通っていたお客を新店舗へ誘導するために、スタッフはメーカーの枠を超えて協力し合った。その時の店内の様子を「何とも言えないが、とても暖かい空気が包み込んだ」と振り返る。
移転後の1年間でロンロンからの顧客を70%誘致することに成功し、ダイヤ街で新たに獲得した客を合わせると前年比約170%まで会員を増やした。
現在、毎月行っているお客へのアプローチは、最近あまりレギュラーに来なくなったお客に対してお手入れを提案するDMを出すこと。スタッフは1カ月に20名分のDMを、一人ひとり丁寧に手書きして出すそうだ。そうすると、20名のうち大体15人からアクションがあるという。
これは、単にお客が手紙の内容に興味を持ったというだけではない。「DMを出せば恐らく何らかのノックが返ってくるだろう」とスタッフが見極めたお客に出すことで、より高い確率で再来店へと繋げているのだ。これも「普段からスタッフがお客様を見てコミュニケーションが取れていないと、ここまで引き込めない」(和世氏)という。
接客ができていると自信を持って言えるお客なら、DMの返信率が高く、従って再来店の見込みも高まるのだろう。
目立つ内装と雑貨で興味喚起に成功、
メークアップ品でも推奨販売に手応え
店内に入ってまず目を引くのが、壁面に飾られたハリウッドスターの写真である。さらに、化粧品専門店には珍しい、赤と黒の内装もユニークだ。「テンションが上がる店づくりがしたいし、私の個人的な趣味」(好子氏)と謙遜しつつも、様々な店が林立する街中で店にお客を呼び込むためには「壁にならない工夫が必要」と話す。
入口にはモニターを設置し、店舗紹介のDVD映像を流しているほか、「意外な人気で外せない」(和世氏)と語る花柄の洗面器を置いて、通行人が中を覗いてみたくなる工夫を加える。いわば洗面器もユニークな内装も重要なPOPの役割を果たしているのである。
1階は約14坪あり、カウンセリングも行う。置かれているメーカーは、資生堂、アルビオン、イグニス、コーセー、カネボウ、マックスファクター、フィルナチュラント、オパール、三善などがあり、1年半ほど前からハリウッド化粧品も導入している。同店ではブランド性の高い商品を扱っており、ハリウッドがカウンセリング商材で、ブランド価値を高める活動を行っていると感じたため導入を決めた。
2階はもともと吹き抜けがあった場所に床を作り、アルビオンコーナー、エステルームとして利用している。
今はスキンケア製品の売上げが大きいが、将来的にはメークアップ製品の比率を上げて、バランスよく販売していきたいと考えている。
最近のヒット商品は、「資生堂 マキアージュ」の「ルージュエナメルグラマー」で、東京支店における同商品の販売が、首位を争う売上げを記録したという。この時も、「スタッフが共通目標として販売を強化したことで、この結果が残せた」と2人は評価する。
現状把握のため小売店回りを提案、
メーカーもお客の顔を思い浮かべて
「ブランド性は小売店と小売店のスタッフが作りだすもの」。
商品のブランド性について、このように好子氏と和世氏は口を揃えて話す。お客は何が好きで、何を必要としているのか、どういう使い方をしているのかをよく知っているのは、一番近い距離で接している小売店だ。そのため、メーカーが作った商品がいかにお客にとって必要か、魅力的かを伝えるのは小売店の役目だとしている。
しかしながら、メーカーはブランド毎に商品展開しているため、たとえば美白商材一つとっても同じメーカーなのに異なる商品を複数ラインナップしている。そうした場合、小売店では売り方に苦労することもあるという。
商品を販売するにはメーカーの研究員と小売店との連携も欠かせない。最低1年に1度は小売店を見て回るだけでお客の顔が見え、現状把握ができ、より良い商品開発にも繋がる。「そうした互いの発展に繋がることなら協力は惜しまない」(好子氏)としている。
主婦から経営を仕切る立場に転身したこの17年間について、好子氏は次のように話す。
「嬉しいのは、色んなお客様との出会いがあること。やっていて本当に良かった」
また、和世氏は「元々主婦で、常識的な考えがあったからこそやってこられた面もある。母を見ていると、お店がある限り基本姿勢は続けていくべきだと強く感じる」と話し、母である好子氏に改めて敬意を表しつつ、将来の理想の店づくりに思いを馳せていた。
〈店舗概要〉
住所=東京都武蔵野市吉祥寺本町1-2-5▽営業時間=午前10時~午後8時▽電話=0422-22-2741▽FAX=0422-22-2927
この記事は週刊粧業 掲載
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