COHRO e-PRO(大阪・梅田)、アドバンテージとなるブランド見出し継続成長へ

週刊粧業 2015年6月1日号 7ページ

カンタンに言うと

COHRO e-PRO(大阪・梅田)、アドバンテージとなるブランド見出し継続成長へ

 大阪・梅田で半世紀にわたり化粧品専門店を運営しているコーロは、2007年よりディアモール大阪にあるDTタワー地下2階のディアモールフィオレ店内に移転し、専門店「COHRO e-PRO(コーロ・イープロ)」を展開している。

 2011年12月に売上げの中軸メーカーとなったアルビオンのオンリーショップに近い形で「ALBION Produce by CHORO e-PRO」を打ち出し、2年後には年商1億円を突破する億ショップへと歩みを進めた。

 その後も「アルビオン」「イグニス」「エレガンス」の3ブランドが揃って好調を維持し、2015年3月期の売上高は2013年度比約1.5倍となった。

新客獲得を優先・強化し
出店する商業施設に貢献

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 同社の播磨正文社長は取材冒頭で、このほど「1店舗で年商5億円構想」を打ち立てたことを明らかにし、そのためには3ブランドの中でも「『イグニス』の育成がカギを握る」と語った。

 首都圏や主要都市部では、昨年の秋頃からインバウンド需要の拡大に期待感を高める商業施設は多い。オリンピックイヤーとなる2020年まで続くと言われている。高い品質レベルを誇る日本の化粧品もその対象とされており、日本の高級化粧品を扱う専門店も例外ではない。しかしながら、播磨社長は「もっと長いスパンでの継続的な発展を考えた場合、安定要素とは決して言い難い」といい、大手家電量販店が40店近く閉鎖すると発表した先日のニュースに触れ、「決して他人事ではないと感じた」と専門店業態が出店を増やしているショッピングモールや駅ビルといった商業施設内に出店する専門店の行く末を危惧する。

 「商業施設の中にも不採算店舗は存在し、閉鎖・撤退は十分にあり得る話だ。経営者は、自店ではどうにもならないリスクも背負っていることを意識すべきだ」

 そうしたショップインショップの場合、契約更新時などに、売上状況から店舗の移転・移動を施設側から要求されることも珍しくない。播磨社長は「数十メートルでも店が移動すれば、客足が大きく変わってしまうことを、身をもって経験してきた。施設の来客数に寄与する店づくりを推進していくことも必須だ」といい、同店では「新規客の獲得数」を注力テーマに掲げ、最優先で取り組んでいる。

 オープン当初は、フロア内の奥まった一角にあったことから、新規来店客数が伸び悩んだ時期もあったが、年間3000人以上の新規来店客を獲得する店舗にまで成長させた。

 施設への貢献度は、同じフロアに入店するショップの顔ぶれの変化からも明らかだ。オープン当初は、アパレルショップに囲まれていたが、現在はエステやネールサロン、さらには阪神百貨店のサロンなど美容系のサービスを提供する店舗が軒を連ねる。顧客の回遊性は落ちるが、ビューティフロアとして認知が高まれば、同店の認知度も自然と高まっていくことが予想される。

 播磨社長は「施設側との関係づくりも経営者の重要な役目だ」と述べ、来客数アップにつながる施設側の提案に協力することに加え、自身のアイデアや意見を伝えていくことも重要だと続けた。

 「メーカーや施設側の提案を待っていては、いずれは経営難に陥る。輸入雑貨店などは、海外へ自ら赴き、商品を直接仕入れてくるから、売ることに対して必死だ。売れなければ返品できる化粧品店とは、売ることに対しての本気度の違いを強く感じることは多い」

 また、他業界では対価を払い、セミナーを受講するのが一般的だが、専門店業態はメーカーのセミナー・勉強会に、ほとんどを無料で受講することができる。播磨社長は「そうしたことの蓄積が専門店業界の歪みとなったのがこの20年間だ」といい、こう続けた。

 「20年前に今の専門店ブランドの状況を的確に予測できていた人は少ないはずだ。実際にその間、№1、2の専門店ブランドを扱っていた有力店が、シャッターを下ろしていくのを何十軒と見聞してきた。反対に、アルビオンを取り扱ってきた専門店オーナーは、私を含め、アルビオンがここまで専門店業態で存在感が高まってくるとは予想できなかったはずだ」

 だからこそ、これから20年後の予測も非常に難しいといい、「好調なブランドをしっかり育成していく活動と併行し、10年、20年先の安定経営を見据えた活動を推進していかねばならない」と今後への意気込みを語った。

安定経営の基盤強固に
「イグニス」育成を進言

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 コーロ・イープロでは「アルビオン」を軸に据えつつ、数年前から「イグニス」のポテンシャルの高さに着目し、新規会員の獲得を図っている。

 同社の「アルビオン」「イグニス」「エレガンス」の各ブランドの2014年度平均月商は、5年前の2010年度を100とした場合、それぞれ227、177、238と好結果を残した。指数では劣るが、直近2年間の伸長率では「イグニス」が好調だ。月平均180万円だったブランドは、今では平均月商300万円を超えるまでに成長した。

 「継続的な発展と安定経営を実現するには、取扱店は最注力ブランドに位置づけるべきだ」

 そもそも「イグニス」は、「アルビオン」を月平均300万円売れる店であって初めて取り扱いができる。播磨社長は「『イグニス』を取り扱いたいという強い気持ちも、『アルビオン』の成長を大きく後押ししたと言っていい。当時の気持ちを大事にすれば、『イグニス』もしっかり成長させていくという強い意志を取扱店は持たなければならない」と話し、イグニスの販売を強化するメリットを次のように語った。

 アルビオンは、地域での取扱店を最小限に抑えてブランドロイヤリティを高める流通政策を採用しているが、「アルビオン」取扱店が1600店余りある一方、「イグニス」は約600店とさらに取扱店が限られている。専門店にのみ限定しているのも大きな特徴だ。

 「当店のように、百貨店が近隣にある都市部の専門店にとって、『イグニス』こそ、他店に浮気をされない希少性の高いブランドであり、大きなアドバンテージだ。取扱店は、限られた専門店にしかないブランドを取り扱っているという責任感を強く持たねばならない」

 また、専門店ブランドには数少ないオーガニックな世界観を打ち出すブランドであることも指摘する。

 「専門店は肌の悩みについては高い技術とサービスの提供を得意としており、ひと通りブランドも揃う。だが、『イグニス』は、フェースケアに加え、全身のケアも提案できる。カウンセリング販売を主としているが、一方でイグニスを好む若い女性たちは、セルフでの購入に慣れており、自ら進んで感触や香りをたしかめ、購入していく」

 また、経営者視点に立てば、メークアイテムがなく、アイテム数も少ない「イグニス」は在庫回転率や掛け率が「アルビオン」に比べて魅力的だと播磨社長は語る。

 掛け率では「アルビオン」と比べた場合、最大15%異なってくる。

 「賃料が高額な駅ビルやショッピングモールに出店する専門店にとって、この差は非常に大きい。他の取扱店も当然、感じているはずだ」

 しかしながら、「アルビオン」と「イグニス」を取り扱う専門店では、指名買いされることが多いという「アルビオン」に頼りがちな傾向が目立つ。「イグニス」の育成には、経営者と現場スタッフの育成ブランドに対するコンセンサスが求められてくる。

 「経営者は、どんな時代でもスタッフが気持ちよく働けて、一人でも多くの顧客にキレイになる満足度を高める環境づくりを提供していく使命を持っているが、それと同時に、強固な経営体質を作っていかねばならない。そのためにも『イグニス』を育成ブランドに位置づける必要がある」

月商500万円のブランドへ
取扱専門店の試金石に

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 コーロ・イープロでは、イグニスユーザーの裾野を広げる目的で、これまでは、アルビオンユーザーのクレンジング、乳液、化粧水といった基本ステップのプラス1品として、「イグニス」のアイテムを提案する活動を軸にしてきた。

 しかし、最近では「イグニス」を求めて新規来店する女性が増え始めているという。

 「昨年導入した『イグニスガーデン』の影響も出てきた。店内の約1/3のスペースを使い、6台の什器を導入したことで、オーガニックな雰囲気も打ち出すことができている」

 今期もイグニスの育成を強化し、将来的には月商500万円ブランドへの育成を目指す。ディアモール大阪に1日約5万人の通行客があることを踏まえれば、決して不可能な数字ではなく、既に一年に数回は500万円を超える月もあるという。

 播磨社長は「新たな計画目標には、ユーザーの裾野を広げる取り組みだけでは難しい。基本のスキンケアアイテムからの『イグニスでの会員づくり』を軸にしたロイヤルユーザーを増やしていく活動へシフトしていかねばならない」と今後の活動方針を打ち出し、コンスタントに500万円を売り上げるブランドづくりに取り組む。加えて、伸びしろが大きい「エレガンス」にも力を注ぎ3ブランドをバランス良く伸ばしていく。

 そのための準備を着々と進めていく考えだ。専門店の売上げは、売場面積と席数にある程度比例してくるため、売場の拡張とともに、人的投資を視野に入れている。

 「高い目標設定だが、駅ビル業態やショッピングモールなどで『イグニス』取扱店の試金石となるよう、早期達成を目指して取り組んでいく」

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