コーセー 小林一俊社長、「常にチャレンジャーであり続ける」|2016年新春インタビュー

週刊粧業 2016年1月1日号 60ページ

カンタンに言うと

コーセー 小林一俊社長、「常にチャレンジャーであり続ける」|2016年新春インタビュー
 コーセーは、「地力をつけた既存事業」「インバウンド消費」「タルト社の伸長」という3つの成長エンジンが噛み合い、2015年度上期の連結売上高が、3期連続で過去最高益を達成するなど、好業績に衰えがみえない。

 中期経営計画2017では、2つの基本戦略「世界に通用するブランドの育成」「経営資産の継続的なパフォーマンス向上」を掲げ、最終年度となる2018年3月期には売上高2300億円、営業利益率11%以上、ROA12%、ROE10%の達成を目指していたが、早くも初年度(2016年3月期)でROA以外の数値目標を射程圏内に捉えた。

 「慢心を退けよ。そして先取りを怠るな」という創業者・小林孝三郎氏の言葉を社内に発信し、チャレンジャーであり続けることの重要性を説く小林一俊社長に、2016年度の課題と抱負、今後の成長戦略についてインタビューした。

2015年上期は大幅増収増益
売上高・各利益とも過去最高に

 ――まず、2015年の国内化粧品市場を振り返っていただけますか。

 小林 経産省出荷統計によると、1~9月は金額が前年比101.1%、数量が前年比100.3%と微増で推移しています。2014年1~3月の消費増税前の駆け込み需要との差が大きく、9月になってようやく前年をクリアしましたが、実際はもう少し回復していると感じています。

 2015年は、14年4月の消費税増税に対する影響が一巡する中、訪日観光客誘致活動の高まりや円安を背景に訪日観光客数(1~10月で1631万人)が急増する一方で、今後の成長に向けた対策をメーカー各社がスタートさせるなど、総合的に好不調を評価するのが難しい一年間でした。

 そのような中、上期連結ベースでは、売上高が 1154億700万円(22.8%増)、営業利益が180億4500万円(156.1%増)、経常利益が186億9100万円(130.6%増)となり、いずれも上期としては過去最高を更新しました。

 国内外の比率については、日本が84.1%(売上高=970億500万円、伸長率=19.5%)、アジアが10.0%(売上高=115億200万円、伸長率=10.6%)、欧米が5.9%(売上高=68億9900万円、伸長率=195.8%)となっています。海外売上は前年比44.5%増となり、海外売上比率は前期比2.3P増の15.9%となっています。

 最近色々な場所で「ファミリービジネス」の功罪について、取材や記事になることが多いですが、幸い当社は「上手くいっている企業」の例として取り上げられ、「ビジョンや方針、政策がブレない」「中長期スパンで物事を考え、遂行していける」「スピーディーな判断や意思決定」といった点を評価していただいているようです。

 化粧品業界の小売業には、同じように「ファミリー」で事業を行っている方々も多くいらっしゃる中、お互い理解し合える点が多く、安心して一緒に商売をさせていただいているというのも好調のひとつの要因といえます。これは欧米でも同じように受け取られ、今後の欧米ビジネスにも生きていくと考えています。

 ――カテゴリー別、チャネル別の動向はいかがですか。

 小林 好調の要因は、3つの成長エンジン「『守り』と『攻め』の改革を通じて『地力』をつけた既存事業」「訪日外国人の需要を取り込んだインバウンド消費」「昨年買収したタルト社の継続的な成長」が噛み合い、実績を牽引したことによるものと捉えています。

 中でも、「既存事業」で地力がついたことによる影響が大きいといえます。

 過去の実績好調時は、好調なブランドやチャネルが実績の厳しいブランドやチャネルをカバーして、企業トータルとしてプラスの実績を出していましたが、今は全てのブランド、チャネルが総じて目標や前年実績を上回っています。

 これは2007年の社長就任以降進めてきた「守りの改革」「攻めの改革」の成果が着実に積み重なっているからといえます。

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