化粧品の原料開発からOEM・一般消費者向けの販売までをグループで手掛けるホルス(本社=東京都中野区)は、完全国産化した「世界初」の「サイタイ血幹細胞培養液」をテーマにセミナーを行った。
同原料について「サイトカイン」や「エクソソーム」を豊富に含み、美肌効果やシワ、タルミの抑制等の効果を示す点について、有用性試験の結果なども引用しながら説明した。
「幹細胞」とは、細胞の基となる細胞のことを表し、自分のコピーを生成する「自己複製能」と、身体を作る様々な細胞へ変わる「分化能」を併せ持っている。
「幹細胞」そのものは化粧品への配合が認められていないが、幹細胞を培養して得られる上清液「幹細胞培養液」を化粧品に配合すると、細胞にアプローチし、肌根本からの改善が期待できる。
こうした中、同社が開発した「サイタイ血幹細胞培養液」は、臍帯(へその緒)血に含まれる幹細胞を培養して得られる上清液で、20~30代の「日本人」由来の臍帯血をドナーに使用しているという。
「細胞の採取から製造までの一連の流れを日本国内で行った原料で、『完全国産化』を実現した」と強調している。
幹細胞は体内の様々な部位から得られるが、今回「臍帯血」に着目した理由について同社は「サイトカインが他の部位由来の細胞に比べ、豊富に含まれることを確認している。また受精卵を胎児になるまで育てている臍帯血から抽出した幹細胞は人の身体の中で最も若い組織といえるため、肌細胞の活性化に適していると考えた」と語る。
実際に同社は、同原料の有効性を確認できるデータを多数取得しているという。
一例として、「サイトカイン量の比較」試験(図1)では、「脂肪由来の幹細胞培養液」と比較し、細胞の増殖を促すEGFやFGF、GDFー11をはじめ多数の「サイトカイン」がバランスよく含まれていることが確認されている。
「サイトカイン」は、体内の幹細胞を効率よく増殖させる役割を担っているが、そのバランスが崩れると幹細胞の増殖が鈍化する。
そこで「サイトカイン」をバランスよく補うことで環境が改善され、細胞の増殖を促すことができるという。
中でも同社の「サイタイ血幹細胞培養液」には、若返り因子と呼ばれる「GDF-11」が豊富に含まれていることが示されている。「GDF-11」は、幹細胞やコラーゲン、エラスチンなどの増殖を促し皮膚の再生やエイジング作用が期待できる重要な成分となっているが年齢とともに減少する。このため外から補うことで、アンチエイジング効果が期待できるという。
また、情報伝達物質である「エクソソーム」量の比較試験でも、脂肪由来と比べ「エクソソーム」を多く含有していることが明らかとなっている(同社比)。
「エクソソーム」は、細胞から分泌されるリポソームで、たんぱく質や核酸・脂質などを内包する。
細胞に取り込まれることで「サイトカイン」の産生や創傷治癒の優れた効果が期待されており、近年、新たな情報伝達媒体として注目を集めているという。
「当社の『サイタイ血幹細胞培養液』は、『エクソーム』や『サイトカイン』といった有効成分を単体で抽出することなく、培養によりそれぞれの量を増やしている。このため有効成分が相互に働き、体内の幹細胞量を維持しながら一般細胞の増殖も促進する。結果的に美肌効果に加え、高いエイジングケア作用も期待できる」(同社)
さらに同原料では、「シワ・たるみの抑制」「ターンオーバーの正常化」「保湿」など多数のエビデンスも取得しているという。
一例として、創傷治癒効果の指標となる「細胞遊走」試験では、培養した上で増殖を停止させた「角化細胞」を試験用の培地に播種(ハシュ)し、「サイタイ血幹細胞培養液」を添加した。
培地中央にあるギャップ領域へ向かう細胞の移動量を観察したところ、同原料を3%添加した細胞・10%添加した細胞それぞれにおいて、非添加の細胞と比較し移動が有意に示された(図2)。
創傷治癒の過程では、細胞がキズに向かって増殖・遊走するため、この結果から「サイタイ幹細胞培養液」を適切な処置をした後に、肌あれなどに塗布することで治癒効果が期待できることが分かった。
また「保湿」試験では、肌に同原料と水をそれぞれ塗布し、経時的な角質水分量を測定した。塗布後20分から80分後までの間に有意差が表れており、水と比較し高い保湿効果が確認された。
外用で期待できる肌の「きめ改善」を測ったモニター試験も行っている。洗顔後、同原料を2滴(0.1g)手に取り指先で目尻になじませた。塗布前後30分の計2回、マイクロスコープで撮影した画像を解析したところ、塗布30分後にはくっきりとしたきめが目視確認できた(図3)。
このため、「サイタイ血幹細胞培養液」の塗布によって「きめの改善」効果が示唆されている。
このほか、肌へのハリやシワへの効果を発揮する「コラーゲン産生促進」作用や、肌の柔軟性や潤いの維持が期待できる「ヒアルロン酸産生促進」に関する有用性試験でも、それぞれ効果が示されているという。
安全性の厳しい基準をクリア
「世界初」の成分表示も取得
「サイタイ血幹細胞培養液」はヒト由来のため、同社は細胞自体に厳正な基準を設けた安全性試験を行っている。幹細胞は衛生管理が十分に行われた施設で採取されるほか、ドナーの健康状態も確認。B型肝炎やC型肝炎、HIV、梅毒、クラミジア、白血病の抗体試験でそれぞれ陰性が確認された健康なドナーから採取した臍帯血を使用しているという。
また、一般的な化粧品原料へ行われる安全性試験では、代替皮膚一次性試験や代替皮膚感作性試験、敏感肌パッチテストなど各種において陰性報告を得ている。ウイルスチェックでも採取した幹細胞で細菌、真菌、マイコプラズマ、エンドトキシンの陰性を確認。最終製品も同様に細菌、真菌、各種ウイルスの陰性が確認されており、安全性にも配慮した原料であることがわかっている。
なお、同原料の製品名は「サイタイ血幹細胞培養液」で、2021年夏には世界で初めて、表示名称「ヒトサイタイ血幹細胞順化培養液」とINCI「Human Cord Blood Stem Cell Conditioned Media」を取得。「世界初」を謳える原料として提案している。