クラレ、多機能保湿剤イソペンチルジオールを紹介

C&T 2021年12月15日号 52ページ

カンタンに言うと

  • 防腐、ダメージケア、角栓洗浄
クラレ、多機能保湿剤イソペンチルジオールを紹介
 化学メーカーのクラレは、あらゆる化粧品に使える多機能な保湿剤「イソペンチルジオール(IPG)」について紹介した。

 同品は、保湿性、抗菌性に優れるとともに、臭いが非常に少なく、さまざまな種類の原料との相性がよいなど、バランスの良さが認められ、ヘアケア製品やスキンケア製品をはじめとしたさまざまな化粧品・トイレタリー分野で使用されている。

 医薬部外品原料規格に適合した安全性の高い製品で、1991年の上市以降、日本だけでなく多くの国で使用されている。

 「化粧品全般に対応できる原料だが、特にクレンジングやコンディショナーにおける実績が豊富だ。メークや角栓落ちに優れた性質を持つことや、毛髪のダメージ抑制と補修の効果が期待できることが理由と考えている。また、近年ではフェイスマスクへの採用も増えてきている」(機能化学品販売部 水上博貴氏)

 IPGは、保湿力をベースとしながら、その他にも優れた機能を持っており、セミナーでは「優れた洗浄機能」「毛髪のダメージケア機能」「防腐ブースト」の3つの特長を紹介した。

 1つ目の「優れた洗浄機能」では、まず、クレンジングリキッドでの角栓洗浄力評価試験について説明した。

 赤く着色した人工角栓を、5種類のクレンジングオイル(ポリオールなし、IPG12%配合、BG12%配合、DBG12%配合、グリセリン12%配合)でこすったところ、IPG入りクレンジングオイル使用時で最も人工角栓が良く落ちる結果となった。

 なお、ポリオールの濃度を変えて角栓の洗浄力を計測した結果も紹介され、1%配合であっても、他と比べて優れた角栓洗浄力を発揮することも示された。

 加えて、クレンジングリキッドだけでなく、クレンジングオイルにおいてもIPGが優れた角栓洗浄力を発揮した。

 続いて、メークの洗浄力についても紹介した。アイライナーを、IPG配合クレンジングと、IPGなしのクレンジングの2種類でそれぞれふき取ったところ、IPG配合クレンジングは、IPGなしのクレンジングと比べて良く落ちていることが確認できた。

 リキッドタイプ・クリームタイプの両方で同様の結果が確認できたほか、アイライナー以外のメークアップに対しても優れた洗浄力を発揮することが分かった。

 水上氏は、「ここまで洗浄力について話してきたが、そこで気になってくるのが肌への刺激だろう。これだけよく取れるということは、刺激が強いのではと思われるかもしれないが、IPGは刺激が強い原料ではない」と話しながら、敏感肌対象スティンギングテストの結果を紹介した。

 スティンギングテストは敏感肌の人を対象に行った刺激性テストであり、皮膚刺激指数が高いほど、ピリピリ感を感じた人が多いということになるが、IPGはBG、PG、グリセリンと比べて数値が低く、ピリピリ感を感じた人が少ない結果であった。



 続いて、2つ目の「毛髪のダメージケア機能」について紹介した。毛髪は水に濡れることで膨潤するが、膨潤するとキューティクルが剥がれたり、たんぱく質が流出しやすくなるなど、ダメージによる損傷を受けやすい状態となる。IPGはその膨潤を抑制する効果があるのだという。

 水上氏は、「イメージとしては、乾燥わかめが分かりやすい。乾燥わかめは、水を入れると膨らむが、IPG水溶液に入れてもそれほど膨らまない。IPGを含んでいると、膨らみを少し和らげることができる」として、毛髪膨潤評価試験を紹介した。

 同試験では、水、IPG20%水溶液、BG20%水溶液、グリセリン20%水溶液に浸したときに、髪の毛がどれだけ膨潤するか、顕微鏡で厚みを測定した。結果、水やBG20%水溶液では5%以上、グリセリン20%水溶液も4%以上膨潤しているのに対し、IPG20%水溶液は3%程度しか膨らまなかった。

 ふくらみを抑えることで、たんぱく質の流出も軽減できるが、これをさらに裏付けるために毛髪タンパク質の溶出量評価試験も行った。水とIPG水溶液のたんぱく質溶出量を確認したところ、IPG水溶液の方が流出するタンパク量が少ないということが分かった。

 さらに、ソルビトールとの併用で、毛髪補修効果を発揮することが確認されている。その効果が局所的でないことは、リング落下試験で確認されている。損傷毛を各混合液(5%IPG+5%ソルビトール水溶液、5%DPG+5%ソルビトール水溶液、5%BG+5%ソルビトール水溶液、5%PG+5%ソルビトール水溶液)で処理したのち、リングを通して自由落下させて落下距離を測定する。

 落下距離の長さは、さらさらでなめらかな髪の毛であり、損傷毛が補修されていることの裏付けとなる。IPGとソルビトールの混合液では、落下距離が最も長く、毛髪ダメージの補修効果を確認できた。



 最後に3つ目の「防腐ブースト」について紹介した。IPG自体にも防腐効果はあるものの、IPGは防腐助剤であり、フェノキシエタノールやペンチレングリコールと併用することで、防腐効果を相乗的に発揮する。



 今回は、フェノキシエタノールと併用した際のデータが紹介された。

 IPGとフェノキシエタノールを併用した際に、標準細菌混合菌、排水混合菌、真菌混合菌に対して、他ポリオールと比較しても良好な防腐効力を示した。なお、クレンジングリキッド、シャンプー両方において同様の効果が見られた。

 「IPGは、角栓・メーク・皮脂などにおける、優れたクレンジング性能をもち、膨潤抑制・キューティクル補修など、毛髪のダメージケア性能も兼ね備えている。そして、防腐ブースト効果も期待できる、多機能な保湿剤となっている。さらには、なめらかで滑り感のある感触も与えるので、感触の改善にも貢献しうる」(水上氏)
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