資生堂、「化粧の力の未来」を刊行

週刊粧業 2022年8月29日号 4ページ

資生堂、「化粧の力の未来」を刊行
 資生堂は5月20日、資生堂みらい開発研究所を編著者とした書籍「化粧の力の未来~コスメティック・サイエンスによる人と社会の新しい可能性~」(B5版 208ページ、3190円)を、フレグランスジャーナル社より刊行した。

 化粧に興味のある全ての人に向けて平易な言葉で表現しており、スキンケアやメークアップ、香りなどの化粧の効用について理解を深め、化粧の力が創り出す未来に思いをめぐらせる良いきっかけを与えてくれる書籍に仕上がっている。

 同社は、化粧が肌や心身に与えるさまざまな影響について、40年以上にわたり研究に取り組んでおり、1993年には化粧による心理的効果をまとめた「化粧心理学~化粧と心のサイエンス」(フレグランスジャーナル社)、2010年には化粧による臨床分野でのエビデンスをまとめた「化粧セラピー~心と身体を元気にする新しいちから」(日経BP社)を刊行している。

 刊行にあたっては、コロナ後の時代を見据え「世界中の人々が、『美』の力を通じて、生涯にわたって自分らしく、心の充足や幸福感を実感できるサステナブルな世界の実現」に向け、本業を通じた社会課題の解決に取り組む同社の研究メンバーが中心となり、「美」の中でも特に「化粧の力」に焦点をあて、総力を結集して化粧行為がもたらす効果について、幅広い視点で最新知見をまとめた。

 本書は、同社が創業150周年を迎える記念すべき2022年に、自分らしく幸せに生きるウェルビーイングから他者との関係性、社会にまで拡張して「化粧の力」を考察している。具体的には、化粧が人にどのような影響を与えるのかについて、資生堂が行ってきた研究をもとに、心理学、脳科学、表情、におい、バーチャルリアリティ技術など、様々な研究領域から化粧の力について23のサイエンスの視点で、化粧の力が人や社会へどう影響するのかを説明している。

 第1章「化粧の現在と未来」は、第1節「化粧を取り巻く人と環境の変化~ライフスタイル、ジェンダー、SDGs、クリエイティブ」と、第2節「化粧の力を解明するサイエンス~心理学、脳科学、ホリスティック、免疫、化粧療法」で構成されており、文化と同じぐらい長い歴史をもつといわれる化粧について、時代や地域の文化の状況によって変化してきた変遷を振り返るとともに、情報技術の発展、環境問題やジェンダーへの意識の高まりなど、美容や化粧をめぐる社会の変化について検証している。また、多角的な視点で将来の環境変化を予測しつつ、化粧品がもたらす心身機能への波及効果や行動変化についても詳述している。

 第2章「触れると化粧~触れるとスキンケア・感情・感触、触覚と皮膚」では、肌で触感を感じるメカニズムや、心身への作用、社会的な意味、化粧品の触れ心地の評価技術について新しい研究知見を紹介している。また、肌から心に働きかける効果を検証し、感情や意識を変える化粧品の可能性について言及している。

 第3章「見ると化粧~顔と心理・印象・色彩、表情と印象」では、メークアップによる印象の変化について紹介しつつ、色彩を含めた人が顔を見るときの認知メカニズムや、表情と感情についての研究など、化粧と顔を見ることに関する近年の学術的知見を紹介している。また、自分や他人の顔を見ることの心理的効果について触れ、満足度をさらに高める方向性についても展望している。

 第4章「香りと化粧~香りと心身・脳、においとコミュニケーション、においのメカニズム」では、人が香りを感じるメカニズムや、香りのもつ人と人とをつなげる力、過去と現在をつなげる力について、アロマコロジーや脳科学の知見を紹介している。また、実態はないものの、情緒的な価値を支える側面をもつ「香り」の可能性について、健康の領域まで踏み込んで来るべき未来を予測している。
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