化粧品・医薬部外品・健康食品分野で機能性原料の研究開発を行っている一丸ファルコスは、パーマやヘアカラー、ブリーチといった化学的な処理による髪ダメージから、紫外線やドライヤー熱など日常的な髪・頭皮のダメージまで、それぞれのダメージ原因を突き止め、新製品の開発や既存製品で新たな有効性データの取得を行っている。
開発したそれらのヘアケア原料は、作用機序別に「毛髪保護素材」マップとしてまとめられ、ヘアケアのトレンドやニーズに合わせて適宜、編集を行っている。
最新の「毛髪保護素材」マップでは、天然素材でありながら、シリコーンと同等の滑り性を持つ「メドウラクトンVE」、キューティクルのCMCを補給してダメージ毛を修復し、なめらかで自然な毛髪に仕上げる「ユズセラミドB」、キューティクル保護や毛髪感触改善をもたらす「カシミヤコート」、コルテックスを補強してウェーブ保持能を高めるヘマチン製剤「グロスフィリンP」、ドライヤーなど熱処理で髪を補修する「プロティキュート」、毛髪強度を高めるシルクペプチド「シルクゲンGソルブルS(N)」の6つのヘアケア素材を紹介している。
ヘアケア向け原料の複数組み合わせによる多機能・トータルケアの提案では、ヘアカラーの染色効果を高め、色持ち効果も向上させる天然ポリアミノ酸「ポリリジン10」などの紹介も進めている。
2022年11月には、新規ヘアケア原料として、漆黒色の液体で見た目も特徴的なヘアケア原料「グロスフィリン」(表示名称:ヘマチン)」から、エタノールフリー(ベンチレングリコール)タイプ「グロスフィリンP(PD)」の販売を開始した。
「グロスフィリン」は1989年の発売以来、ヘアサロン向けのプロ用製品を中心に機能性ヘアケア原料として30年以上の実績がある。
同社は、「長年採用されてきた中で、刺激低減の観点からエタノールフリータイプのものを要望されることも少なくなかった」と話している。そこで今回、エタノールを使用しない「グロスフィリンP(PD)」を開発した。
合わせて、グロスフィリンの新たな有効性データも取得した。より低刺激で高機能な製品開発をサポートし、フリー処方にこだわるホームケア製品にも提案を広げていく。
グロスフィリンは、ヘモグロビンより製造された分子量633.5のポルフィリン誘導体「へマチン」を主成分とする機能性ヘアケア原料。パーマネント・ウェーブやブリーチ処理による毛髪のダメージ部や老化によって起こる毛髪の脆弱化部に付着し、毛髪を補修、風合いの良好な、光沢がある髪に仕上げる。
また、S-S結合形成を強化する作用(触媒作用)があるため、パーマネント・ウェーブ処理において、セット力や毛髪自体の強度を高める効果が期待できる。
グロスフィリンは、ヘマチンに由来する漆黒カラーで「黒いシャンプー」など見た目でも製品の差別化が可能で、ホームケア製品での採用実績も多数ある。同社では、1~5%の配合を推奨しているが、10%以上を配合する製品もあるという。
一方、近年は生活者の髪ダメージに対するケア意識が高まり、髪にやさしい製品のニーズが拡大している。そこで今回、グロスフィリンから、刺激性のより少ないエタノールフリータイプを発売し、機能性とやさしさを兼ね備えたヘアケア原料として紹介を進めていく。
また同社は、グロスフィリンの研究を進める中で、グロスフィリン(P)で処理した毛髪に、「キューティクルCMC溶出のダメージ改善(ねじり剛性改善)作用」(図1)、「ブリーチ処理によるキューティクルダメージの改善」(図2)、「ダメージによる毛髪ハリ低下の回復作用」(図3)の3つの新たな効果も見出している。
これまで紹介してきたパーマネント・ウェーブ保持作用やブリーチ剤に使用される過酸化水素の消去作用などと合わせて、「総合的なヘアケア原料としてプロの施術に役立つ原料となっている」(同社)。
「キューティクルCMC流出のダメージ改善」では、キューティクル細胞間の接着が脆弱になった毛髪に対してグロスフィリンによる継続処理で、さらにねじり剛性を改善する効果が認められており、グロスフィリンの付着によるダメージ毛の強度改善が示された結果といえる。
また、ブリーチ処理による毛髪ダメージでも、グロスフィリン未処理に比べて、キューティクルの乱れが大幅に改善されている。