AppBrewが2017年1月にサービスをローンチした「LIPS」は、商品との出合いから比較検討・購入・発信まで、カスタマージャーニーにおける一連のステップをシームレスに体験できる様々な機能を提供する国内最大級の美容に特化したプラットフォームで、2023年8月に累計1100万ダウンロードを突破した。
性別や世代を問わず、メークや美容を通じて個々人の「幸せ」や「なりたい姿」を自由に追求できるプラットフォームを目指すLIPSが現在注力している取り組みや今後の展望について、代表取締役の深澤雄太氏に話を伺った。
ユーザーへの収益制度に加え、
徹底したUI/UXが優位性に
――ここ数年で化粧品関連の様々なバーティカルメディアが登場しましたが、その中で「LIPS」はどのような点に優位性があると捉えていますか。
深澤 LIPSでは、美容系インフルエンサーのいわゆる「美容オタク」を中心に、約1000万人の月間アクティブユーザーから日々熱量の高いクチコミが集まっています。
そうしたクチコミを投稿されるユーザーの皆さんに対し、我々としても何か還元したいと考え、閲覧回数やクリップ数など、どれぐらいクチコミが参考にされたかに応じて収益を得ることができる制度「LIPSパートナープログラム」を2019年4月に導入し、今年4月にはユーザーへの累計還元金額が4億円を突破しました。
また、私が元々、東京大学工学部出身のエンジニアということもあり、コンテンツの見やすさに細部までこだわった「UI/UX(ユーザーインターフェース/ユーザー体験)」を徹底的に追求しています。優位性という観点では、この2つが主なポイントとして挙げられると思います。
SNSなどを通じて多くの情報が溢れる中で、コスメ好きの人が「本当に自分が好きなもの」「いいと思ったもの」として投稿されたクチコミが資産となり、嘘偽りのない価値ある美容情報を見たいという人たちが集まってLIPSというプラットフォームが成り立っています。
LIPSでは毎日投稿される熱量の高いユーザーさんが多く、LIPSパートナープログラムを通じて大卒社会人の初任給を超える収益を得ている人も少なくありません。
LIPS内でトップクラスのフォロワー数を抱える人になると、クチコミの投稿だけで生活できるレベルの収益が得られ、そこまでユーザーにしっかりと還元してきたことは我々の誇りです。
UI/UXに関しては、その人に合ったコンテンツが表示されているかが非常に重要で、LIPSを立ち上げる以前、学習塾を手がけていた時に「サービスを使う人の立場をちゃんと考えること」を教訓として学び、そこでの経験が今に活かされています。
見る人が見やすくなければつまらないし、見たいものが出てこないのもつまらないので、そこを両立させることは非常に難易度が高く、そうした裏側の細かな改善1つひとつの積み重ねが競合との非常に大きな差になってきます。
国内において美容特化のプラットフォームを自社で保有・運用し、さらに独自のAIを活用したシステムやプロダクトまで設計・開発しているところは我々だけだと自負しています。
こうした強みを活かすことで、様々なバーティカルメディアが登場してきた中でも淘汰されず、生き残ることができているのだと思います。
――ご自身がエンジニアとして活動されている中で、特に注力されている点は何でしょうか。
深澤 今はプラットフォームの健全性を保つことに最も力を入れており、中でも今月1日からスタートした「ステルスマーケティング(ステマ)」規制への対応を強化しています。
LIPSではこれまでも、独自のクチコミ調査やユーザーインタビューを実施し、ステマに対する調査を実施してきました。その上で、商品評価のレーティングシステムを再構築し、 商品ランキングについて公平・公正であるように努めてきています。
また、最新の検知システムを導入し、今後不正検知システムに抵触した投稿やステマの疑いのある投稿については、対策チームを軸に当社判断にて厳重な措置をとり、悪質なものについては消費者庁への報告も行っていきます。
こうしたステマへの対応はユーザーさんだけでなく、メーカーさん・代理店さん向けに広告表記に関する行動指針について特設ページを公開するなど啓蒙しており、操作的な行為をしっかりと排除していくことが美容業界の将来につながると考えています。
そして、クチコミ創出を目的とするSNSマーケティングにおいて、様々な角度から消費者へ商品をアプローチしたいというブランド・メーカーさんのニーズに応えるべく、LIPSでは広告ソリューションの提供を昨年から強化しており、LIPSだけにとどまらず、InstagramやX(twitter)などSNS全体でクチコミを醸成するマーケティング支援を提供しています。
インフルエンサー向けのサンプリング施策はその一例で、美容プラットフォームとして最多の88万人を超えるフォロワーを持つLIPSのInstagram公式アカウントと、業界屈指となる34万人超のフォロワーを抱えるX公式アカウントでサンプリングを実施し、使用した感想をLIPS内だけでなく各種SNSで投稿してもらうことで、商品認知を高める広告メニューを提案しています。
また、サンプリングにより投稿されたこれらのクチコミは、一定期間全件チェックを行い、提供品であることをしっかりと明示しているほか、他のSNSで投稿されるクチコミをプログラムで取得し、薬事法や景品法に違反が起きているかを徹底してチェックできる体制も整備しています。
このように媒体にとどまらない全般的なマーケティング支援サービスが提供でき、商品の露出を高めるためにこれまで代理店さんに依頼していた広告メニューを直接我々に全て依頼いただければ、マージンもなく効率的でいいことづくめですので、そこは今回、我々が最も伝えたいところです。
リアルでの様々なイベントを軸に
ユーザーとのコミュニティを強化
――LIPSのさらなる成長に向けて、今後はどのような取り組みを推進していきますか。
深澤 商品軸ではなく、人に紐づいた美容情報を発信するLIPSのさらなる成長を語るうえで、リアルイベントを軸にしたユーザーさんとのコミュニティ強化が欠かせません。
直近では、今月1~31日までの期間限定で「shop in ルミネ新宿店」さんと初めてのコラボレーション企画を実施しています。
このイベントでは、LIPSアプリ内で実に200万人が体験した「パーソナルカラー診断」を監修されたカラー&コスメコンサルタントの渡辺樹里さんによる対面でのカウンセリングが店頭で受けられ、その場でおすすめのアイテムが購入できる「パーソナルカラー別コスメプロモーション」を展開しています。
LIPSで高評価のアイテムや新作アイテムの中から、パーソナルカラー別に相性のいい色番をピックアップし、自分に似合うアイテムを実際にタッチアップしながら購入が可能で、参加されるユーザーさんにとっても非常に楽しめる内容となっています。
コミュニティの強化に向けては、研究系など業界のプロに近い正確な発信をされているインフルエンサーの方も呼び込むことが重要で、そうしたインフルエンサーさんとLIPSでトップクラスのフォロワー数を抱えるユーザーさんを招いた座談会などのイベントを今後は積極的に開催していきます。
このようなイベントを通じて、メーカーの担当者さんやインフルエンサーさん同士がつながり、ビジネスの機会が生まれることを我々が後押しし、美容業界でちゃんと活動していきたい人をフォローアップできてその場を創出できることを、我々の価値として打ち出したいと思います。
――最期に、今後の抱負をお聞かせください。
深澤 先程も少し触れましたが、「サービスを使う人の立場をちゃんと考えること」は今後も徹底して追求していきます。
「LIPSのユーザーさんが何を見たいのか」「どんな機能を求めているのか」を把握していくことは、今後もしっかりと取り組み続けていきます。
こうして活気のあるコミュニティの構築を進めていき、現状で1000万人の月間アクティブユーザー数を、将来的には1.5~2倍まで拡大できるように目指していきたいと思います。