人とモノが出合う「楽しさ」を提案(エトワール海渡・早川謹之助社長)

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人とモノが出合う「楽しさ」を提案(エトワール海渡・早川謹之助社長)

 ファッション、アパレル、インテリア、生活雑貨などを取り扱う総合卸の老舗・エトワール海渡は、今年6月23日の取締役会で、海渡二美子氏に代わって早川謹之助氏が新社長に就任した。

 創業者の家系に生まれながらも、グラフィックデザインの世界に進むことを希望し、単身渡米。現地のデザイン学校で学び、帰国後フリーランスで活動しながらデザイン事務所「シナプスプラス」をおこした。Webデザインや、ロゴデザイン、クライアント企業のプレゼン資料まで請け負った仕事の経験は、2004年にエトワール海渡の経営に参画してからも生かされているという。

 創業から109年の歴史を持つ老舗企業を、いかに動かすのか。その方針を聞いた。

経験もとに企業理念を形で表現、新体制稼働しテーマ発信力アップ

  ――入社してまず取り掛かった業務は。

 早川 企業理念を目に見える形で表現した。現副会長の二美子氏は私の祖母にあたるが、社業に奔走していたのをずっと見てきたので、当社に入る前から常々、私が学んだデザインを通して何か会社の役に立てないかと考えていた。デザイナーとして、クライアントの企業理念をビジュアル化する仕事をしていたため企業理念に経営の基礎があると感じていた。エトワール海渡は私の入社した2004年当時すでに102年の歴史を持つ企業だった。そこには100年以上も生き残ってきた企業だからこその思いが絶対あり、それが長く続けてこられた強みになっているのだと思った。今後さらに生き残り、成長するにはその「思い」を再編集していくことが必要だった。

 この企業理念の礎となる、私たちが大切にしたい思いを6つの要素にまとめた。これらはエトワールのDNAなので、「E-DNA(エドゥナ)」と呼んでいる。先代や先々代の時代から、経営者や会社を支えてきた社員の皆が受け継ぎ、大事にしてきた理念から抽出した。「E-DNA」を皆で共有することで、これからも変わらないエトワールらしさを常に意識できる形に整えることができたと思っている。100年かけて培ってきた思いを次の100年に伝えたい。

 「E-DNA」は、エッセンスごとにイメージカラーも作った。社員の名刺にも6色のイメージカラーから好きな色を選べるようにするなど、活用を広げていく。

 ――就任から2週間と間もないが、今期の施策について教えてください。

 早川 今期はキーワードに「FUN-楽しさ」を掲げた。前出の「E-DNA」の中の、「思いやりや絆を大切にする」という気持ちを込めた「商人道」と、「夢ある心豊かな生活に貢献する」という気持ちを込めた「生活文化」という2つの要素にも関連する。

 「FUN―楽しさ」は、我々の企業理念やビジョンが行き着く先にあるものだと思う。我々の商品は、小売店様店頭で生活者と出会うが、この店頭での人とモノとの出合いの楽しさこそが、我々の商売の原動力となる。

 我々が「FUN」を集めることで小売店様に楽しさを感じて我々のファンになっていただく。そして小売店様が楽しさとともに仕入れた商品で個性的なお店づくりをして、今度は生活者が店頭で楽しさを感じてファンになる。その循環を絶え間なく続けていく。

 ――具体的な内容は。

 早川 当社では毎月テーマを決めて、それに沿った商品を総合的に提案し、ヴィジュアルでしっかりと訴求するなどして情報発信してきた。今期はこれをさらに強化する。

 そのために、7月1日より新体制で臨んでいる。新設したのは、現在15ある商品部門の上に位置する商品企画室。既存の営業企画室は3名だったのを6名まで増やした。また、各企画室と売場がスムーズに連携できるようにするために、各売場にセールスプロモーション(SP)マネジャー職を新設した。SPマネジャーには主に、毎月のMD企画の提案とお客様の仕入れをサポートする2つの役割を担ってもらう。企画面では、営業企画室が毎月立案した企画テーマやVMD計画に基づいて、各売場の催事・打ち出し・提案コーナーの展開を支援する。新製品や売れ筋商品の提案やお客様に合わせた提案を行い、仕入れが円滑に進められるよう動く。これにより、今まで以上にお客様と密なコミュニケーションをとることができるようになる。

 つまり「FUN」とは提案する側の自分たちも楽しんで、それを見る(仕入れる)お客様にも楽しんでいただき、最終的にはエンドユーザーも楽しめるように、商品の提案力を強化すること。全ての人を当社の発信する「FUN」のメッセージに巻き込んでしまおうという狙いがある。

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