百貨店は2011年春、東日本地区を中心に震災による多大な影響を受けた。臨時休業や閉店時間の繰り上げなどで営業日数が例年より短縮された。震災は、景気回復に伴い百貨店の化粧品売場も上向き基調にあった矢先の出来事であった。後半の盛り返しをはかるべく、各店とも新客の来店を促す施策に力を注いでいる。
「新客が喉から手が出る程欲しい―」。これはある売場担当者の本音である。また、ある百貨店ブランドでは「ロイヤル顧客を1人失うとその分をカバーするのに3人の新客が必要だ」と指摘する。これは容易なことではない。百貨店が新客を欲しがるのもうなずける。
リーマンショック以降の節約志向がようやく緩和され始めたとはいえ、それ以前の状態には戻らないと言われている。人々の安心・安全志向が高まる中、配合成分に関心を持つ人も徐々に増えつつある。
この傾向を踏まえ、百貨店が注目しているのがオーガニック系ブランドである。定期的に催事販売を行ってファンを増やしたり、自主編成の売場を設けるなど、かつて国内大手と外資系プレステージブランドが席巻していた時代とは大きな変化を遂げつつある。
しかし、オーガニック系ブランドの大半はプレステージ系に比べると単価が低く、認知度もそれほど高くはない。このようなブランドを集積して顧客を育成していくには新たな接客ノウハウが求められる。
オーガニックという世界観を表現できる濃度までブランドを集めるか、競合との差別化を目指して特定のブランドを深く掘り下げるか、いずれにしても並べただけでは周辺のプレステージブランドの影に隠れてしまう。1つのカラーを明確に打ち出し、存在感を出さなければならない。
人々がオーガニックに求めるのはサイエンスを駆使した効能効果よりも成分や製造工程で裏打ちされた肌と環境へのやさしさである。背景にあるブランドストーリーもプレステージ系とは主眼が異なる。販売員は成分に関する詳しい知識が求められ、オーガニック認証間の違いも理解しなくてはならない。ソフト、ハード両面からの初期投資が必要となるだろう。
もちろん、導入のメリットはある。従来とは明らかに違う客層が訪れることになるからだ。オーガニックコスメの購入者は必ずしも全品をその路線で固めているわけではない。部分的にそれ以外のブランドも取り入れており、オーガニックコーナーから他ブランドへの回遊も充分見込める。完全なオーガニックでないナチュラル系ブランドとの相乗効果も期待できる。
百貨店でもはや珍しくなくなったのが、取扱い全ブランドを対象にした独自のカウンセリングコーナーである。新宿伊勢丹のボーテコンシェルジュに始まり、インフォメーション、ナビなど様々な呼び方で都市部の旗艦店への導入が進んだ。
百貨店がこのようなコーナー構築に力を注ぐのは、いまだに敷居の高さを感じている人が多いからだという。セルフの売場に慣れ親しんでいる人は「カウンターに座ってしまうと買わされるのではないか」という先入観を持つ。このような不安を取り除くためのワンクッション的役割を果たしてきた。
今後はこのようなコーナーの拡大版も必要ではないか。百貨店ブランドが別会場で販売をしないイベントを開くとものすごく賑わうという。サンプル目当ての人も多いだろうが、買わされないという安心感はやはり大きい。取扱いブランドを集めた別会場でのトライアルイベントや、いくつかのブランド間を回遊するナビゲーターツアーがあってもおもしろい。ブログやメールマガジンなど情報発信機能も整いつつある昨今、その豊富な情報に裏打ちされた製品に触れる機会も、比例して多くなっていかなければならないだろう。
その一方で、ネット通販に注力する店舗も出てきた。「あくまでも店頭販売の補完」(売場担当者)としながらも、今の時代に避けては通れない戦略の1つだ。外資系プレステージブランド自らEコマースを始める時代であり、売場にないブランドも取り込みながら売上げシェアを増やしていくことになりそうだ。
百貨店は他業態からの新客や男性客を取り込んで売上げをカバーしなくてはならない。今後はいくつもの顔を持ち、臨機応変な対応が可能な店舗が生き残ることになるだろう。
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この記事は週刊粧業 掲載
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