大成建設はこのほど、財団法人日本冷凍食品検査協会執行役員の新宮和裕氏とモンテール顧問の新留透氏を招き、第2回「食品工場フォーラム」を開催した。
新宮氏は、「現場力強化のための課題と改善のポイント」と題した講演の中で、工場が抱える課題や、品質保証体制構築のためのポイントについて説明した。
まず、品質保証体制の整備にあたっては、「組織がどこへどのように進むのか地図を描くことが必要」とし、そのビジョンに基づき、「方針の明確化」や「段階的目標の設定」を経て目標を明確にすることにより、「自社の力量に適したオリジナルな管理体制や、社会環境に対応したフレキシブルな品質保証体制を構築することが重要だ」と語った。
現場力の要となる製造現場のキーパーソンの育成に向けては、「部下と上司の信頼関係をつくり、動機づけし、計画的な指導で、考え方・行動を変える」という育成の基本を述べつつ、OJTによる育成の手順を解説した。
「OJTでは、どのような能力を、何のために、いつまでに、どのくらいのレベルまで伸ばすかを、上司と部下の相互の合意で決めた後、計画的な指導を行うとともに、『自分を変えるのは自分しかいない』『自分の可能性を信じる』『未経験の課題にぶつかる』『行動スタイルを変える』という4つのポイントを認識してもらうことで、はじめて部下の能力が向上する」
続いて、モンテールの元副社長で現在は顧問を務めている新留氏が、「洋生菓子製造における衛生管理の実践的対応」と題して講演を行った。
モンテールは、1954年(昭和29年)10月に創業。足立区の小さな町の菓子工場として出発し、ビスケットやウエハースの加工から、洋風中生アイテムへと転換を図り業容を拡大してきたが、1991年に来るべき時代の変化への強い危機感から一大決断を下す。
これまでの同社の屋台骨とも言うべき加工菓子や中生菓子の製造をやめ、未踏領域かつ食品分野で最も要求レベルが高いと言われるチルドデザートに参入。約5年ほどで全ての売上げをチルドデザート事業へと転換させた。
この決断が正しかったことは、2011年8月期の売上高が242億円となっており、この20年で転換前(1991年当時)の売上高(約25億円)の約10倍にまで拡大していることが証明している。当然のことながら、高付加価値アイテムへの転換を進めたことで、収益性はより高まっている。
同社では、“安心・安全”“おいしさ”“リーズナブル”の3つを実現する「小さな洋菓子店」を標榜し、従来は直営店や個々の店舗でしか売られていなかったチルドデザートを、スーパーやコンビニでも手軽に購入できる仕組みを開発したことで知られているが、衛生管理基準確立までの道のりにおいて、クリームやケーキの酸敗という危機に直面することになる。
そして、その酸敗を防ぐための衛生基準確立の必要性を痛感し、1960年代に米国で宇宙食の安全性を確保するために開発された食品衛生管理の方式である「HACCP」(ハサップ、危害要因分析必須管理点)に準拠した仕組みを業界に先駆けて構築。現在では、異物混入検査で満点を獲得するほど高いクオリティーを誇る独自の「製造基準」「加工基準」を確立するに至っている。
「当社では、良品のみを次工程に、安全は妥協してはならないということを徹底している。会社の方針を全社員がいつでも即答できる組織にし、工場では作業手順の文書化を徹底させている。『教えることのできない幹部はいらない』という考えを周知徹底してきた結果、工場の人員は全て(社歴の浅い)若い女性であっても十分と言えるだけのレベルに到達しつつある」
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