筑波大学 黄順姫教授、化粧・ファッションの研究書が初版完売のヒット

週刊粧業 2019年8月26日号 16ページ

筑波大学 黄順姫教授、化粧・ファッションの研究書が初版完売のヒット
 高麗大学教育大学院時代の恩師が九州大学で教育社会学を学んでいたことが縁で、1983年に来日した。

 その後、黄順姫氏は九州大学で教育学研究科教育社会学の博士課程を修了し、1991年12月に筑波大学に着任した。研究分野は教育社会学・文化社会学・スポーツ社会学で、着任から今もなお筑波大学で教壇に立ち続けている。

 黄氏はその理由として、「他校からの打診もあるが、豊かな自然に囲まれたこの場所が研究するのには最適な環境で、毎日ここへ来られることができて幸せだ」と笑顔で語る。

 長年の研究の集大成として、2019年3月に学文社より出版された著書「身体文化・メディア・象徴的権力―化粧とファッションの社会学―」は、発刊から2カ月で早くも初版が完売した。

 同書は、「化粧・ファッションの構造と実践論理」(第1部)と、「化粧品広告と身体文化(実証研究)」(第2部)で構成され、第1部で戦後から現在までの日本の化粧・ファッションの現代文化史などに触れている。

 第2部では、日本と韓国の女性ファッション雑誌からみる国内外の化粧品メーカーの化粧品広告イメージ戦略を比較分析し、図表を用いた実証研究の考察などを詳細にまとめている。

 「広告のキャッチコピーでは、アメリカがSPFなど科学的な用語を用いて説明するのに対し、日本では美しいポエムのような感受性に訴えかけるイメージのものが多い。モデルの顔の雰囲気に関しては、日本が可愛らしい顔のモデルを起用する企業が多いのに対し、韓国では健全な意味でのセクシーさやかっこいい女性が重視される傾向にある」

 こうした実証研究の考察を踏まえて、最後に黄氏は日本の化粧品メーカーに向けて「グローバル時代を迎え、世界と共存共生していくためにも、可愛いだけではない日本女性の身体文化を形成することが重要であり、社会を変えるパワーを持つといった概念で化粧品づくりに取り組んで欲しい」と語った。
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