日本精化は、毛髪を構成する「メデュラ」、「コルテックス」「キューティクル」それぞれにアプローチできる原料を提案している。
毛髪の大部分はタンパク質で残りは脂質、メラニン色素等で構成されており、これらの成分の補給効果等が期待できる原料を揃えている。
コロナ禍では在宅時間の長期化に伴い、ヘアケアへの意識も向上しているという。こうした中、同社は「おうちケア」「サロンケア」のクオリティーを向上させる一助になればと、様々な視点で評価データを取得している。
「メデュラ」へアプローチできる原料として、水にも油にも溶解する両親媒性エステル油剤「Neosolue-Aqulio(ネオソリューアクリオ)」を提案する。
毛髪内部の「メデュラ」は、ダメージを受けると空洞化することがわかっているが、同原料には毛髪の浸透促進剤として「メデュラ」の空洞を補修し、改善をブーストするデータが確認されている。
毛髪に加え皮膚への浸透促進効果も各種試験で明らかとなっており(図)、各国規制にも対応する。
一方、毛髪「コルテックス」に対しては、毛髪結合脂質ナノカプセル「NanoRepair-CMC(ナノリペアシーエムシー)」を紹介。毛髪結合脂質である18-MEA、コレステロール、3つのセラミド(NG、NP、AP)などで構成したナノカプセルで、粒子が非常に小さいため毛髪に対する浸透性に優れており、TOF-SIMSでの可視化にも成功している。
実際の有用性試験でも、「NanoRepair-CMC」で処理することでダメージにより低下した毛髪破断強度や表面疎水性が健常毛に近いところまで回復する「ナノダメージセンサ」機能が確認されている。
表面部分の「キューティクル」に対しては、熱反応性素材「エルカラクトン」シリーズと、同機能を有しながら中国規制に対応した「RepairLipid-DSL(リペアリピッドディーエスエル)」、機能性エステル油剤「Neosolue-DiSM(ネオソリューディーアイエスエム)」が対応できるという。
「エルカラクトン」は、ナタネの種子から得られるエルカ酸から誘導された植物由来のラクトンで、ヘアアイロンやドライヤーなどの熱処理によってダメージ毛のアミノ基と反応し、アミド結合を形成してキューティクルのリフトアップを改善する。
毛髪表面を改善することで加齢による「ハリコシの低下」「うねり」「からまり」を改善し、まとまりやすい髪へと導く。
さらに、毛髪と結合することで毛髪表面が疎水化されるため、シャンプーなどで洗い流した後でもこれらの毛髪改善効果が持続するという。
同社は以前から「エルカラクトン」を展開しており、国内では認知や採用が進む一方、中国規制に対応していない点が課題となっていた。そこで2020年夏、中国規制に対応可能な「RepairLipid-DSL」を紹介できる体制を整えた。
「RepairLipid-DSL」は、主成分が「ステアロイルラクチレートNa」の全植物由来の毛髪アンチエイジング素材で、「エルカラクトン」と同様にドライヤーなどの熱で毛髪表面を反応し補修する。
毛髪のハリコシ改善効果がある一方、ふんわりと軽い仕上がりを付与でき、すすぎ時の滑り性を向上させ洗浄後もハリ・コシが持続するという。
「RepairLipid-DSLはエルカラクトンの代替原料ではなく、『熱反応性毛髪アンチエイジング素材』として提案できるラインナップを増やしたと捉えている。
例えば感触面で、エルカラクトンは実感のあるハリ・コシ訴求ができる一方、RepairLipid-DSLは、よりエアリーな感触が出やすく、使い分けも提案していく」(香粧品事業本部 香粧品営業1部 次長 兼 事業戦略室 担当課長 早坂友幸氏)
処方面では、透明シャンプーに配合可能で泡質を改善する機能性も持つ。透明シャンプーの開発では、コンディショニング効果向上のために油剤成分を配合すると、処方の白濁や泡立ち低下が課題となることが多いが、「RepairLipid-DSL」は化学構造上界面活性剤と親和性が高いため、白濁や泡立ちの阻害を起こさずコンディショニング効果の高い透明シャンプーを実現できる。透明シャンプーは中国でもニーズが高く、顧客から好感触を得ているという。
一方、「Neosolue-DiSM」は、さっぱりした感触なのにしっとりするユニークな高機能性液状油剤で、抱水性による保湿効果や難溶性成分の溶解性に優れる。毛髪に塗布すると、毛髪の指通りやしっとり感の向上、ダメージ毛のキューティクルを補修する効果が期待できる。さらに、先の「RepairLipid-DSL」と同様に透明シャンプーに配合しても処方の白濁や泡立ちの低下が見られないことから、コンディショニング効果の高い透明シャンプーを実現できる原料といえる。
このほか、同原料を配合したシャンプーは、従来品と比べカラーリングした毛髪の染料が抜けにくく、ヘアカラーの褪色を抑制するデータも確認されているという。
同機能はこれまでシャンプーの基材である界面活性剤をマイルドなもので処方設計する、すなわち洗浄力を犠牲にする事で対応することが主流であったが、同成分は添加剤としての配合により、「洗浄力とカラーロックを同時に実現できるのでは」と顧客から好評を得ている。
同社は今後、幅広いニーズに対応できる原料として提案を進めていく。