コーセー、日やけ止めがサンゴ成育に与える影響の評価法を確立

粧業日報 2022年4月22日号 5ページ

コーセー、日やけ止めがサンゴ成育に与える影響の評価法を確立
 コーセーは、沖縄のサンゴ養殖の専門家である金城浩二氏と連携して、実際の日やけ止め使用がサンゴの成育に与える影響を確認できる評価法を確立した。この方法により、紫外線吸収剤の有無の両方で、同社で汎用されている日やけ止め剤型(ジェル、ミルク)を評価したところ、いずれもサンゴの成育に悪影響を与えないことが確認できた。

 日やけ止めに含まれる一部の紫外線防御成分はサンゴの成育への悪影響が報告されており、米国ハワイ州などのサンゴ礁を有する地域では販売や持ち込み、使用が禁止されている。一方、米国パーソナルケア製品評議会(PCPC)では科学的根拠が十分でないと懸念しており、紫外線から人々を守る有効な手段である日やけ止め料の使用を控えることには慎重な姿勢をとっている。

 同社ではこのような状況を踏まえて、2009年から継続している雪肌精「SAVE the BLUE」プロジェクトによるサンゴ保全への取り組みを研究領域にも広げ、2022年2月にはメトキシケイヒ酸エチルヘキシル(オクチノキサート)など7種類の紫外線防御成分が環境濃度においてサンゴの成育に影響を与えないことを確認していた。

 今回は実際の日やけ止め使用がサンゴに与える影響を評価できる方法を確立し、汎用される日やけ止め剤型(ジェル、ミルク)にてサンゴの成育に影響を与えいことを確認した。

 研究では、同社と金城氏で確立した水槽内でサンゴを健全に飼育する実験系を用い、実際の日やけ止めの使用を想定したサンゴ成育への影響評価を行った。実際の使用状況に近づけるため、基板上に一定量の日やけ止め製剤を塗布し、乾燥させたものを試験サンプルとした。

 塗布量は、成人の平均的な体表面積と、日やけ止めの推奨使用量である1c㎡あたり2mgから算出した。これは全身に日やけ止めを塗った大人10人が25mプール1レーンに入った濃度に相当しており、日やけ止め使用者が密にいる状況を想定してサンゴへの影響を評価することが十分可能と考えた。

 サンゴ検体には造礁サンゴの1つであるウスエダミドリイシを用い、実際の海水中を想定して、適度な水流を発生させた水槽内にこの試験サンプルを設置し、その中で2週間の飼育実験を行った。サンゴの健康状態については、専門家による目視評価と画像評価により判定した。

 構築した実験系にて、代表的な4種類の日やけ止め製剤を用い、これらの使用がサンゴの成育に与える影響を評価した。ジェル剤型と二層式ミルク剤型の2剤型で、それぞれ紫外線吸収剤を使用しているもの、使用していないものの計4種類を用いた。

 紫外線の防御効果の指標であるSPFとPAは同社で汎用されるスペックをカバーできるよう、SPF35~50+、PA+++~++++の範囲で設定した。使用した紫外線吸収剤としては同社で汎用される4種類を、紫外線散乱剤としては酸化亜鉛、酸化チタンの2種類を選択した。

 これらの日やけ止め製剤それぞれに対して試験サンプルを作成し、水槽内に設置して2週間の飼育実験を行った。

 2週間後の目視評価・画像評価の結果、どの検体においても、サンゴの成育に異常は見られなかった。以上のことから、今回の4種類の日やけ止めは、実際の使用において、サンゴの成育に影響を及ぼさないことが確認できた。

 今後、これらの結果を応用することで、市販される日やけ止め製剤や使用シーンの変化に合わせたサンゴへの影響を保証することが可能となる。研究を活用し、「海に入る人の肌を紫外線から守りながら、サンゴにもやさしい化粧品の開発」を実現していく。
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