長引くコロナ禍で在宅・リモートワークの定着化が進む中、新しいビジネスチャンスや顧客接点の創出・拡大にオンライン展示会市場が注目を集めている。
2020年10月にはDMM.comが新規事業としてオンラインイベント事業部を立ち上げ、21年9月より「DMMオンライン展示会」をスタートし市場参入した。
「DMMオンライン展示会」は、出展費用も来場費用も無料(※出展は一部有料プランあり)なのが特徴で、今年2月までの約半年で既に57の展示会を開催し、延べ1万社が出展しているという。
21年11月17~19日に開催した「コスメ&ビューティー EXPO ONLINE」には206社(化粧品86社、美容関連66社、ヘルスケア54社)が出展して新たなビジネスチャンスを広げた。
今回、化粧品業界でマーケティング・コンサルティング事業を展開しているソフィアリンクス代表の三原誠史氏(写真左)にオンライン展示会の魅力と成長可能性について伺うとともに、DMM.comオンラインイベント事業部の古波鮫大己(こはざめ・たいき)事業部長(写真中央)と中井照道氏(写真右)に話を聞いた。
新たなビジネスチャンスを創出、
約半年で累計1万社が出展
三原 コロナ禍を契機にオンライン展示会が注目を集めています。DMMオンライン展示会の業種・テーマはどのように設定されているのですか。
古波鮫 オンラインイベント事業部では、「あらゆる展示会をオンライン開催へ」をモットーに、リアルの展示会の反響分析をしながら、オンラインの開催でも多くの出展社や来場者が見込めそうな業種やテーマを抽出して取り組んでいる。
三原 かなりスピード感を持って取り組まれている印象です。
古波鮫 初年度なのでオンライン展示会に様々な可能性を見出すことも狙いとして持っている。21年秋から約半年間で57個の展示会を開催した。今期(22年3月~23年2月)も同程度の開催を計画している。
三原 プラットフォームの認知や出展社および来場者の集客に向けてどのようなプロモーションを展開していますか。
中井 ターゲットの幅を広く取りながらリスティング広告やディスプレイ広告、TwitterやFacebookなどのSNS広告など当社が得意とするデジタル領域での広告を行っている。
三原 各展示会の出展社数や来場者数はどれくらいを見込んでいますか。
中井 展示会のテーマによって異なるが、出展社は多い時で約400社、平均すると200社前後になる。これまでに延べ1万社に出展いただいている。
来場者数は開催3日間で多いものでは1000名から3000名を超えるものもある。昨年度の全体平均としては700~800名規模の展示会となっている。
数的にはもっと伸ばせると思っているが、初めてにしては効率的に集客できていると思う。
三原 効率の面でいうと、オンライン展示会は、距離的・時間的な制約がかからないといったメリットも大きいと思います。
中井 オフラインの展示会に比べ、出展までの準備や作業の負担が少なく、人やモノの移動を含めた時間的・距離的なハードルが低いこともあって、多くの出展者の獲得につながっている。
古波鮫 コロナ禍が長期化する中、多くの企業が何か行動しなければいけないと感じていると思う。出展費用が無料ならばトライアルしてみようという企業はまだまだたくさんあると思うので、今期も出展費用を無料(一部有料プランあり)にし、出展社数の増大につなげるとともに、プラットフォームとしての認知拡大を図っていく。
オンライン特有のメリット創出へ、
リード情報の提供等で付加価値化
三原 昨年11月に実施された「コスメ&ビューティー EXPO ONLINE」は振り返っていかがですか。
中井 出展社からは、新しい顧客とつながることができたといった評価から取引につながったといった声も届いている。また、これまでリアルの展示会に出展された経験のない企業にも多く出展いただけた。
三原 コスメの場合、使用感やテクスチャー、香り、容器の質感など実際に手に取って試しながら商談したいというニーズも高いようですが。
古波鮫 そうした五感による情報提供に関しては、オンラインイベント全体の課題と捉えているが、そこはリアルの大きな強みでもある。そうした楽しさやワクワク感で言えば、コロナが収束に向かう中、イベントや展示会はまたリアル中心に戻っていくことになる。
オンライン展示会に求められること、オンライン展示会にできること、そしてDMMだからこそできることを追求していくことで、リアルの展示会との共存関係を築いていきたい。
三原 今期もオンライン展示会を積極的に開催されるとのことですが、今後の事業戦略についてお聞かせください。
古波鮫 前期は様々な業界に当社のオンライン展示会を知ってもらう、体験してもらうことを狙いとして取り組んできた。今期は各展示会で、新たな商談や取引につながるなど出展社が成果として実感してもらえるような展示会にしていきたい。
そのため、来場者の母数を増やすことも課題として持って今期は取り組んでいく。基調講演・企業セミナーの開催をはじめ、プラットフォーム内のバナー広告の展開やマッチングビジネスサポートなど新サービスの検討も重ねていくつもりだ。
中井 出展された企業は、名刺交換された方や資料をダウンロードされた方、事前予約で商談を申し込まれた方などのリード情報をシステム上で確認できるようになっている。
今期はそうしたリード情報をもっと細かく分析し、可視化することで出展のメリットを享受できるようにしていく。
三原 おっしゃるように、オンライン開催では来場者の行動データがどんどん蓄積されていきますね。
それらを収集・分析したビッグデータを、貴社がどのように活用されていくのかにも注目したいと思います。