資生堂ジャパン 直川紀夫社長 2023年新春インタビュー

週刊粧業 2023年1月1日号 6ページ

カンタンに言うと

  • 生活者との接点への積極的な投資を拡大
  • 「市場は再び動きだす」創業150周年イベントで確信
  • これから先の100年に向けて「共存共栄」の精神で歩み続ける
資生堂ジャパン 直川紀夫社長 2023年新春インタビュー
生活者との接点への積極的な投資を拡大

 創業150周年の大きな節目となった2022年、日本ローカル市場での長期愛用者基盤の拡大を重点戦略に掲げ、着実に成果に結びつけた資生堂は2023年、「チェインストア制度」100周年を迎えた。

 「『生活者起点、現場起点』の考えのもと、積極的に生活者との接点への投資を拡大し、この2023年を飛躍の年にする」と語る資生堂ジャパンの直川紀夫社長に、2022年の化粧品市場動向の振り返りと資生堂ジャパンの長期愛用者基盤の拡大に向けた取り組み成果、2023年の事業方針、チェインストア制度100周年を迎えた想いなどについて話を伺った。

「市場は再び動きだす」
創業150周年イベントで確信

 ――まずは、2022年の市場動向からお聞かせください。

 直川 感染症拡大防止のための行動制限は緩和されたものの、マスク着用の常態化やインフレに伴う節約志向の高まりなど、厳しい環境が継続しましたが、ワクチン接種が進みこれから日本は経済や社会の回復に向かって、大きな転換期を迎えます。

 私たちは企業使命「BEAUTY INNOVATIONS FOR A BETTER WORLD(美の力でよりよい世界を)」のもと、お客さまお一人おひとりの生涯を通じて健康美を実現するため、お客さまと店頭の絆を深める取り組みを加速し、全社一丸となって、新しい時代に合うビューティービジネスの成長に向けて取り組んでいきます。

 まず、2022年の振り返りですが、上期においては「我慢の半年」となりました。2020年以降、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点からリモートワークの定着や外出の自粛に伴い消費意欲が低い状況が続き、2022年に入っても6月頃まではなかなか市場が回復しないと感じていました。どこでアクセルを踏むべきなのか、昨年上期はそれを見極めていた時期でした。

 外出機会が増えればお客さまは必ず店頭に戻ってくると考えていました。7月頃から徐々に回復の兆しを感じ始め、それが確信に変わったきっかけは、当社の創業150周年を記念して、7月から全国7都市で実施したスペシャルイベント「Beautiful me STATION」でした。

 新型コロナウイルス感染拡大後初めて全社を挙げて開催したリアルイベントで、「いちばん好きな私を見つける場所」をテーマに、チャネルを横断したブランド・商品からパーソナライズ美容提案を行う体験ブースやサンプリング、ゲストによるトークショーなど、150周年ならではの特別なコンテンツを展開しました。

 実際に私もイベントに参加して、お客さまは「化粧したい」「化粧を楽しみたい」という強い気持ちをお持ちになっていると感じました。例えば、各会場でイベント開始前から入場待ちのお客さまの行列ができ、それが終日続いて受付終了の時間を予定よりも早く繰り上げなければなりませんでした。コロナ禍の店頭では100%の実習ができず、ご来店いただいても短時間でお買い物を済ませるお客さまが多い中、イベントでは行列に並んででも「アドバイスを受けたい」「化粧をしたい」というお客さまの思いを実感しました。

 イベントに参加したビューティーコンサルタント(現パーソナルビューティーパートナー)はご来場いただいたお客さまが笑顔になられることをとても喜んでいました。お客さまに「触れる」活動の大切さを改めて実感できたと思います。当社にとって、7月のイベントがアフターコロナに向けた一つのターニングポイントになったと思っています。

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