資生堂は、独自に設定した高周波電気刺激(RF:radio frequency、ラジオ波)をベースとする特殊複合エネルギー(特殊RF)の照射と、オタネニンジン根抽出液を組み合わせることで、メラニン生成を抑制することに成功した。
シミの原因の1つとして知られる老化線維芽細胞の出現を抑制し、正常な線維芽細胞の増殖を促すことで、これらの細胞のバランスを整え、真皮のシミ肌環境を改善する。美容医療よりも優しい力で作用する物理エネルギー刺激(RF含む)にて、真皮線維芽細胞を介したシミ改善のアプローチはこれが初めてとなる。
研究成果の一部は、第33回国際化粧品技術者会連盟(IFSCC)バルセロナ大会2023 (2023年9月4~7日)にて発表を予定している。
老化線維芽細胞は、真皮におけるシミの原因の1つとして知られているが、これまでは美容医療でのアプローチが主であり、一般的に肌に負担を与えずに真皮環境を十分に改善することは難しいとされてきた。また同社は、長年にわたりシミの改善に向けて研究に取り組む中で、家庭用美容機器へも応用が可能な物理エネルギー刺激の1つであるRFが真皮まで作用することに着目してきた。そこで今回、美容医療よりも優しい力で独自に設定した特殊RFを用いて、真皮のシミ肌環境を改善する新たなアプローチを探索した。
シミのある肌の真皮では、老化線維芽細胞が多数存在し、蓄積した紫外線ダメージによってメラニン産生を促進していることがわかっている。今回、紫外線により老化線維芽細胞に特殊RFを照射することで、老化線維芽細胞が減少することを確認した。また、オタネニンジン根抽出液の添加により、線維芽細胞全体に占める老化線維芽細胞の割合が低下し、真皮環境が改善することが示された。
特殊RF照射・オタネニンジン根抽出液を加えた老化線維芽細胞と3次元表皮モデルを組み合わせて、紫外線照射によるメラニン生成におけるそれぞれの効果を確認した。
特殊RFを老化線維芽細胞に照射すると、3次元表皮モデルのメラニン生成が有意に抑制された。オタネニンジン根抽出液単独ではメラニン生成抑制効果が認められなかったが、特殊RFと組み合わせることで特殊RF単独に対して有意にメラニン生成を抑制することを確認した。今回、老化線維芽細胞の比率が変化する際に、メラニン量が有意に低下したことから、シミ改善には老化線維芽細胞と正常な線維芽細胞のバランスが重要であることもわかった。
「特殊RFと植物エキスの組み合わせによって、シミ肌環境を作り出す老化線維芽細胞と正常な線維芽細胞の両方に働きかけ、真皮のシミ肌環境を改善し、メラニン生成を抑制することを発見した。経営戦略ビジョン『Personal Skin Beauty & Wellness Company』の実現に向け、従来の化粧品にとどまらないビューティーイノベーションに挑戦し、一人ひとりの本来の美しさを引き出すことを目指す」(同社)