資生堂、CBRCと共同で表皮幹細胞の老化制御の可能性を解明

粧業日報 2023年6月27日号 3ページ

カンタンに言うと

  • 皮ふの幹細胞研究は「量」に加え「質」へと進化
資生堂、CBRCと共同で表皮幹細胞の老化制御の可能性を解明
 資生堂は、マサチューセッツ総合病院皮膚科学研究所(CBRC)との5年来の共同研究により、表皮幹細胞の老化を抑制するRNA結合タンパク質YBX1がリン酸化により機能低下し、細胞老化を引き起こすことを明らかにした。

 さらに、YBX1のリン酸化を抑制することで表皮幹細胞が増加することを明らかにし、表皮幹細胞の量を維持するためには、表皮幹細胞の「質」も重要であることを示した。研究成果を応用し、表皮幹細胞の老化抑制を介した様々な肌のエイジング悩みへのアプローチを目指す。

 皮ふのターンオーバーは、表皮の細胞が絶えず増殖・分化することで起こり、健やかな肌の維持に役立っている。その細胞の供給源となるのが、表皮の最も深い部位である基底層に存在する表皮幹細胞で、資生堂はこれまで、表皮幹細胞を健やかに保つことが若々しい肌の実現にとって非常に重要であると考え、10年にわたって表皮幹細胞研究に取り組んできた。その結果、表皮の基底層の下に存在する基底膜を介して表皮幹細胞の維持をサポートすることで、肌の保湿やバリア機能、真皮のコラーゲン産生にも寄与することを発見してきた。

 研究の共同研究先であるCBRCのAnna Mandinova助教授のチームは、これまでの研究で、YBX1というRNAに結合するタンパク質の減少が、表皮幹細胞を老化させ、周囲の細胞を老化させる物質の分泌をも促してしまうことを明らかにしている。

 研究では、表皮幹細胞の量だけではなく、質の変化にも着目し、さらなる幹細胞研究の進化に挑んだ。

 CBRCのMandinova助教授のチームと資生堂は、様々な年齢のヒトから採取した表皮幹細胞の多くで、YBX1がリン酸化し機能低下していることを明らかにした。また、YBX1のリン酸化を抑制する薬剤を表皮幹細胞を含む培養細胞に加え、細胞老化の指標であるベータガラクトシダーゼ(beta-Gal)を染色し、その量を比較した結果、細胞老化を抑制する効果が見られた。

 実際のヒトの皮ふでは加齢や日光の影響による表皮幹細胞の減少に伴ってYBX1陽性細胞が減少していた一方で、日光の当たらない部位(非露光部)の皮膚に比べて日光の当たる部位(露光部)の皮膚において、リン酸化したYBX1が著しく増加していることが明らかになった。つまり、長年日光を浴び続けることにより引き起こされる皮ふの変化、光老化が、YBX1のリン酸化の要因になっている可能性が示された。

 以上の発見により、表皮幹細胞の老化抑制のカギであるタンパク質YBX1が、リン酸化により機能低下し、表皮幹細胞の老化を促すことが明らかになった。
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