資生堂は、独自開発した「肌内外3D弾性イメージング技術」を活用し、角層が硬化すると、表情などで皮ふが動く際に真皮に加わるメカニカルストレスが増大し、シワの根本原因「2層(角層と真皮)の肌ギャップ」を進行させることを確認した。また、シワを改善する効能効果が認められている有効成分「純粋レチノール」に角層柔軟化作用があることを見出し、皮ふ表面から奥へのシワの進行を防ぐ新たな機能があることを明らかにした。
純粋レチノールは、高い肌改善効果を有する一方で、酸素・熱・光などで容易に分解されるため、効果を十分に発揮させるためには、安定に保ち、肌に確実に届ける工夫が必要だが、同社は30年以上にわたるレチノール研究の中で、製品中に純粋レチノールを安定的に配合できる独自技術「Shiseido Retinol TripleLock Technology(資生堂 レチノール トリプルロック テクノロジー)」を開発し、「純粋レチノール」の効果を肌へ確実に届けることを実現している。
同社は、30年以上にわたるレチノールの研究成果を基盤に、日本で初めて、有効成分「純粋レチノール」によるシワ改善効果の訴求を厚生労働省から承認された。その効果は確実なもので、皮ふの浅い層である表皮から深い層の真皮まで、それぞれの層においてシワ改善につながる機能を明らかにしており、首のシワなどに対する効果も確認してきた。
確実な改善効果の一方で、肌の生理的変化には数週間を要することから、さらに効率の良いシワ改善を求めて、シワの根本に迫る、皮ふの力学構造の研究も行ってきた。従来の力学測定では不可能とされてきた、皮ふの微小領域ごとの弾性を三次元で計測できる「肌内外3D弾性イメージング技術」を世界に先駆けて開発したことがきっかけとなり、角層は加齢に伴って硬くなる一方で真皮層は柔らかくなり、この硬さのギャップによってシワが形成されるという「シワの根本原因」を発見している。
今回の研究では、より早く、確実にシワを予防・改善する方法を開発することを目指し、「シワの根本原因」に関わる角層の硬化に着目した研究を進めた。
角層が硬くなることでシワにどのような影響が及ぼされるか検証を行うため、コンピューター上で実際の皮ふ構造を反映したモデルを構築し、角層が柔らかいときと硬いときの圧縮による変形のシミュレーションを行った。
その結果、角層が硬いモデルにおいては、真皮の変形は大きくなり、真皮に加わるメカニカルストレスが増加することが明らかになった。過去の研究により、真皮に加わるメカニカルストレスは、コラーゲン分解酵素の産生を促進させるという知見が見出されているため、角層が硬い場合、表情などで皮ふが動く際のメカニカルストレスは増大して、真皮の軟化が誘引され、シワの根本原因である「2層の肌ギャップ」の進行につながると考えられる。つまり、角層の硬化が皮ふ表面から奥へのシワ進行につながることが示唆されており、角層を柔らかく保つとことが、シワ改善にとって重要なケアであることが明らかになった。
日本香粧品学会が策定した「新規効能取得のための抗シワ製品評価ガイドライン」に従い、目尻に浅いシワからやや深いシワが認められる健常な日本人女性35名を対象に、純粋レチノールを配合したクリームの半顔連用試験を12週間実施して、角層の硬さの変化を評価した。その結果、純粋レチノールを配合したクリームを4週間連用すると、使用前と比較して角層は有意に柔らかくなり、連用することで、角層のやわらかさは保たれ、シワ面積の減少につながることが示された。
純粋レチノールには、角層を生理的・根本的に柔らかくする効果があることを示したが、生理的な変化を引き起こすためには数週間の期間が必要となることから、短時間で角層を柔軟化しシワ予防につながる成分についても検証を行った。
その結果、角層シートに、ヒマシ油やビスジグリセリルポリアシルアジペート-2などを含む複合油分を配合した成分を塗布した直後の角層の弾性率を確認した結果、それら成分の塗布によって短時間で角層を柔らかくできることが示された。また、実際の肌にそれら成分を塗布して10分後、皮ふ表面にある角層の硬さを測定したところ、やわらかく変化した。油分は肌から洗い流されると効果は消失するが、純粋レチノールと併用することで、根本的な肌の柔軟化効果をサポートしつつ瞬時に肌を柔らかくほぐすことが期待され、純粋レチノールの角層柔軟化効果を最大限に引き出すことができるという。
同社はこれまで、純粋レチノールの表皮や真皮への効果を明らかにしてきたが、今回は、皮ふ表面にある角層への柔軟化効果があることを明示し、皮ふ表面と内部の硬さのギャップのコントロールと、コラーゲン分解を引き起こす真皮へのメカニカルストレスを防ぐことで、シワを改善していくことを示した。