アンチエイジング、日本のヒト幹細胞培養液のパイオニア

週刊粧業 2023年9月25日号 7ページ

カンタンに言うと

  • ニーズを捉えた提案を続々と発表
  • エクソソームを表示できる原料好調、クリニックのプロデュースにも着手
  • 冷凍保存と冷蔵保存を比較、由来より培養法が機能性を左右
アンチエイジング、日本のヒト幹細胞培養液のパイオニア
 アンチエイジング社は、日本のヒト幹細胞培養液におけるパイオニア企業として、2012年の設立以来、ヒト幹細胞培養液を専門に化粧品原料を供給し続けている。

 「ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム」を成分表示でき、かつ比較的安価な価格帯を実現した「RS Liposome 3.0E Complex」が好調に推移しているほか、今年12月頃には、化粧品原料としてのNMNの弱点を克服した原料の上市を予定している。



エクソソームを表示できる原料好調、
クリニックのプロデュースにも着手

 アンチエイジング社では、豊富なエビデンスや高い品質を強みとしながら、トレンドや顧客ニーズを踏まえた研究開発に取り組んできた。現在では、要望に合わせて幅広い提案ができるラインナップが揃っているが、最も人気が高いのが、昨年10月に上市した、「RS Liposome 3.0E Complex」だ。

 エクソソームへの注目が集まる中で、化粧品のパッケージに表示したいというニーズが高まったことを受けて上市されたのが同品となる。濃縮エクソソームを後から添加しているため、「ヒト脂肪由来間葉系細胞エクソソーム」を成分表示でき、加えて購入しやすい価格を実現したことから、非常に引き合いが多くなっている。

 また、化粧品におけるエクソソームの需要が拡大するとともに、クリニック関連の案件が増えている。そうした中、美容クリニックをプロデュースする取り組みをスタートしており、今後については、ヒト幹細胞培養液を使用した施術用商材やホームケア開発のほか、施術プログラムの検討などを進めていくという。

 運営を行うのは非営利の一般社団法人となっている。プロデュースを通じて、化粧品メーカーや急増するクリニック関連の顧客に対してフィードバックを行いながら、よりよい提案につなげていくことを一番の目的とし、研究と臨床を繰り返していく。

 クリニック関連の実績が蓄積するとともに、エステティックサロンや美容室からの引き合いも増えるものと考えられることから、マーケティング施策としても有効に働くことが予想される。

 同社ではそのほか、今年12月頃に、浸透型NMN原料「Pentide-NMN」の上市を予定している。

 近年、化粧品原料としてのNMNにも注目が集まっているが、NMNは皮膚に浸透しないため、化粧品に配合しても効果を発揮できないという弱点があった。Pentide-NMNは、これまで化粧品には不向きな原料だったNMNに浸透型ペプチドを結合させることで浸透性を高めたもので、既に多くの問い合わせがあるという。

 Pentide-NMNや、浸透型ペプチドビタミンC誘導体・Pentide-Cは、ヒト幹細胞培養液と組み合わせることでより高い効果を発揮するよう設計されているが、企業によってはヒト幹細胞培養液の使用が難しいケースもあることから、単独での引き合いも多い。

 「今後は、Pentideシリーズとして、ヒト幹細胞培養液に次ぐ新たな柱にしていきたいと考えており、トレンドを意識したラインナップを拡充する方針だ」(同社)

 さらに、ヒト幹細胞培養液に、Pentide-NMNとエクソソームを加えた原料も年内に上市予定で、「Wアンチエイジング」のキャッチコピーのもと、9月末に大阪で行われる化粧品開発展でも紹介する。

 なお、ヒト幹細胞培養液を使用したいというニーズは多いものの、まだまだ安全性に関する懸念を持っている企業も少なくない。そうした中で、同社は安全性の情報を細かく開示することで信頼を得ており、これまでヒト幹細胞培養液の取り扱いについて足踏みをしていたOEMメーカーとも新たな取引をスタートしている。

 「当社は幹細胞培養液を専門とした原料メーカーであり、OEM部隊との連携ができる点や、韓国の研究所とともにニーズを捉えた共同開発を行っている点が、他社と比較した際の強みであるといえるだろう。今後は、蓄積してきた試験データをさらにブラッシュアップし、エビデンスを強化し、品質のよさを徹底的に追求することでさらなる差別化を図る」(同社)



冷凍保存と冷蔵保存を比較、
由来より培養法が機能性を左右

 市場が拡大し、多くの会社からヒト幹細胞培養液が供給されるようになってきた昨今、様々な情報が流布されている。

 その一つにヒト幹細胞培養液は冷凍保存しないと機能性が落ちるという情報がある。エクソソームを例にとると、確かに水溶液中で緩やかに分解していくが、冷凍することでも融解する。一度の凍結で減少するエクソソームは20%を超えるというデータもある。

 一方で冷蔵保存された場合は、1年間で10〜20%分解している。これらは、冷凍、冷蔵の条件によって変わってくるものの、冷凍保存よりも冷蔵保存が劣っているということではない。【図1】は同社の冷蔵保存のヒト幹細胞培養液と冷凍保存のサンプルの比較だが、同社の原料は圧倒的にエクソソームが含有されていることがわかる。

 冷凍保存の最大のメリットは防腐剤の添加が必要なくなることだ。そのため医療で用いられるヒト幹細胞培養液は冷凍保存される。一方で化粧品に配合される段階で防腐剤が添加される化粧品原料としてのヒト幹細胞培養液では、冷蔵保存と防腐補助剤の組み合わせは合理的な選択といえる。

 様々な由来の幹細胞の培養液が供給されるようになり、由来の違いをアピールすることも多いが、幹細胞の由来による機能性の違いはそれほど大きくない。

 【図2】は骨髄、臍帯血、脂肪組織それぞれの由来の幹細胞による創傷治癒効果の実験データだが、培養条件を揃えて試験をすると、その違いはほとんどない。

 一方で、同社の「ローリングボトル培養のRemyStem」と、「一般的な培養方法で得られた幹細胞培養液」、「老化した細胞」による創傷治癒効果を見る実験を行ったところ、「ローリングボトル培養のRemyStem」が良好な結果となった。

 幹細胞の由来よりも、培養方法や細胞の状態が機能性を大きく左右する。通常の化粧品原料とは違うノウハウが必要なヒト幹細胞培養液だが、特性を理解すれば、非常に多機能な性質を持つ原料であり、今後のさらなる市場拡大や原料としての一般化に向けては、正しい知識に基づき、ヒト幹細胞培養液を活用していくことが求められるだろう。
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