一般社団法人ジャパン・コスメティックセンター(JCC)は、2023年11月11日に設立10周年を迎えた。
これに伴い、2023年11月10日、佐賀県唐津市のHotel&Resorts SAGA-KARATSU 2階ロイヤルホールにて、設立10周年記念式典を開催した。
海外クラスターが多数参加し、各国の取り組みを紹介するプレゼンテーションが行われたほか、その後の基調講演では、愛知淑徳大学教授の真田幸光氏が「変動する世界のゆくえ~私たちはどうあるべきか」のテーマで講演を行った。
サプライチェーンや海外販路構築、
地域素材の活用にも力を注ぐ
一般社団法人ジャパン・コスメティックセンター(JCC)は、2013年11月の設立から、佐賀県・唐津市に国際的なコスメティッククラスターを創出するべく、サプライチェーンの構築や地域素材活用、海外販路の構築など、幅広い事業を推進してきた。
11月10日に唐津市内で行われた設立10周年記念式典では冒頭、会長を務める山﨑信二氏(ブルーム代表取締役社長)が挨拶した。
「JCCはこれまで、多くの企業や関係機関の皆様にご賛同いただき、現在は130を超える会員で構成されるまで成長した。会員間の交流はもとより、国内外問わず、積極的なマッチングや、大学との共同研究に取り組んだ成果が形になりつつあるように思う。地元企業の新規参入などを後押しすることで、コスメ業界におけるサプライチェーン構築や雇用の創出にわずかながら貢献できているのではないかと自負している。今後については、会員ニーズに応えながら、人と環境に優しく、地域資源と優れた技術を活かした、国際的コスメクラスターの創造を推進していく」(山﨑氏)
JCCは、美と健康をサポートするコスメ産業を、佐賀県を代表する新たな産業に育てるという強い思いから、コスメティック構想を推進する組織として設立され、様々な分野の企業や大学、生産者を連携させることで、コスメティック構想の推進に取り組んできた。
佐賀県産業労働部長の井手宣拓氏は、祝辞にて、「設立から10年間、企業誘致から地産素材を活用した商品開発、国際取引など、コスメ産業の振興に寄与していただいたことに感謝している。また、コロナ禍によって中止していたフランスのヴァルドワーズ県との交流も今年は再開しており、6月5日、4年ぶりに訪問団の皆様に佐賀県にお越しいただき、佐賀アリーナや県内コスメ関連企業を視察いただいた。また、私が面会した際には、団長のジャン=フランソワ・ブノン氏から、『ヴァルドワーズ県と佐賀県の交流が今後も継続していくことを祈っている』とコメントいただき、連携強化の継続を確認した。佐賀県はアジアに近く、コスメの原料となる豊富な農林水産物を有している。さらに、JCCという核があり、コスメ先進地であるフランスのコスメティックバレーとも強いパイプがある。佐賀県だからこそ、コスメ構想を実現できると確信している。これからもコスメ構想の発展のため、皆様とともに力を尽くしていく」と語った。
6カ国の世界クラスターと連携、
地域産業活性化プロジェクトも
JCCは国際取引の拡大にも貢献しており、6カ国の世界クラスターと協力連携協定を締結、輸出支援の連携や、会員企業との展示会への共同出展などに取り組んでいる。さらに、世界的な化粧品クラスターを束ねる団体・グローバルコスメティッククラスターに参画し、日本唯一の組織としてセミナーに登壇するなど、日本の化粧品クラスターとして認知度を高めてきた。
また、地域素材の活用においては、2022年10月より、佐賀県、唐津市、玄海町の協力のもと、ポーラ・オルビスグループのACROと連携して、国産ハーブ原料の栽培を通し、耕作放棄地の活用、地域産業の活性化を目的とするプロジェクトをスタートしている。
温暖かつ降水量が少ないため畑作に卓越している佐賀県唐津市西部、東松浦郡、玄海町方面に広がる上場台地の特性に着目して、玄海町薬用植物栽培研究所とパートナーシップを組み、その風土に適したハーブの栽培を行っている。これにより、日本初の高品質国産ハーブ原料の開発を目指すとともに、耕作放棄地等を活用し、新たな地域産業の創出を図る。
この取り組みによる成果は、ACROのライフスタイルコスメブランドである「THREE」の新たな付加価値として、今後の商品に活用される予定だという。
唐津市副市長の脇山行人氏は、「JCCは2013年11月の設立以来、多くの企業、関係機関の賛同を受け、会員間の交流はもとより、国際取引の拡大、地域素材の活用、コスメ環境の整備、関連産業の集積など、この10年間で着実に成果を成し遂げていることに敬意を表したい。一方で、本州を含め、地方都市では人口減少が本格化し、国内市場の縮小が懸念される中、いかにして農林水産業を含めた地域経済を持続的に発展させるかが、今後の大きな課題といえるだろう。そのような中で、唐津市としても、長期的な将来を見据えた産業のリーディングプロジェクトとしてコスメ構想に取り組んでおり、新たな産業の創出や企業誘致による雇用の推進、地域産業の活性化を図るためにも、引き続きJCCの活動を支援してきたい。今後も、JCCの長期的かつ持続可能な国際ネットワークの構築により、国際取引拡大の実現とともに、経済、地域、人材が交流するプラットフォームになっていくことを期待している」と語った。
なお、参加した海外クラスターはフランス、イタリア、台湾、タイ、韓国で、各国の取り組み紹介プレゼンテーションが行われたほか、スペインは動画での紹介となった。
フランスの「Cosmetic Valley」は、会員数525社、22の大学との連携のほか、これまで500の研究プロジェクトを支援してきた。1990年から発展、フランス全土にネットワークを持ち、香水・化粧品産業における世界最大のクラスターとして知られている。
イタリアの「Polo della Cosmesi」は、会員数90社、2000年からイタリアのクレモナ県で活動する化粧品関連企業の自発的な企業集積として発展、イタリアの化粧品全体サプライチェーンに携わる企業を代表するクラスターだという。
台湾の「Taiwan Beauty Valley」は、会員数100社、産・官・学・研・医を結び付けるクラスターで、化粧品産業を台湾を代表する産業にするために2016年に設立された。
タイの「Thailand Cosmetic Cluster」は、会員数50社、協力専門家1500人で構成されており、タイの化粧品業界の成長と革新を推進する先駆的な取り組みとして、業界をリードする企業、政府機関、学術機関の協力により、2007年に設立された。
韓国の「IBITA」は、会員数716社(2022年時点)で、2012年に韓国の中小企業庁管轄の下、特定非営利活動法人として設立され、韓国全土にネットワークを持っている。
スペインの「Beauty Cluster Barcelona」は、会員数240社、協力専門家3000人で構成されており、会員の国際化支援や人材育成を推進している。
JCCはこれからも、唐津・玄海を中心とした佐賀県、北部九州の地域資源を活かして、企業、学術研究・人材教育機関の立地や、国内外の経済取引の活性化に寄与することにより、情報・人材・産業を集積し、本地域を起点にした新たなコスメティック産業を創出し続けていく。