資生堂、日やけ止めで「オートリペア技術」を開発

粧業日報 2024年1月22日号 1ページ

カンタンに言うと

  • UV防御機能低下を防ぎ、自動でミクロレベルの傷やよれを修復
資生堂、日やけ止めで「オートリペア技術」を開発
 資生堂は、日やけ止めなどの紫外線(UV)防御機能をもつ塗布膜において、ミクロレベルの傷やよれを自動で修復する画期的な技術「オートリペア技術」の開発に成功した。

 日やけ止めの塗布膜は、手指との接触による「傷」や、表情の動きなどによってできる「よれ」により、その部分の塗布膜が薄くなり、UV防御機能が低下することがわかっている。同技術は、独自成分を含む粉末分散剤の組み合わせを配合することにより、塗布膜が完全には固化せず適度な流動性をもつことで、塗布膜にできたミクロレベルの傷やよれを自動で修復する。これにより、手指との接触や表情の動きによるUV防御機能の低下を防ぐことが可能になった。

 これまで同社が開発してきた、水や汗、熱によって塗布膜のUV防御機能を高める技術やUVを美肌光へと変える技術に加え、この技術を応用することで、同社の日やけ止め製品はさらに進化していく。今後も太陽の下で誰もが表情豊かに、より一層アクティブで自由に日々の生活を楽しむことができる未来を目指す。

 同社は、UVが肌に与える影響についてまだ広く知られていなかった時代から、いち早くUV防御研究に着手し、日常生活から過酷なUV条件下までのあらゆる環境下で、UVの悪影響から肌をしっかり守りたいという生活者ニーズに応えるべく、常に革新的な技術開発を行ってきた。

 2014年に、従来はUV防御の敵であった、水や汗に触れることでUV防御効果が強くなる技術を開発し、2019年に太陽などの熱によってもUV防御膜が強化される技術を開発した。さらに、2021年には、UVを肌に良い作用をもたらす可視光(美肌光)へと変換し、ただ環境中の脅威から逃れるだけではなく、環境と調和・共生しながら美へ導く技術を開発した。

 今回は日やけ止めの長年の課題である、手指との接触や表情の動きによって塗布膜が薄れ、UV防御機能を低下させてしまう点に着目した。

 このような塗布膜の薄れが自動で修復する現象は「自己修復」と呼ばれ、同社でも長年研究が続けられてきた。しかし自己修復機能を示す成分の多くはゲル(半固形)状で肌へ塗り広げると不均一になってしまい、紫外線防御機能を十分に発揮できない課題があった。

 そこで製剤を均一に塗り広げられて塗布膜の欠損も修復できる技術として、塗布膜の流動性を高めることに着目した。

 塗布膜の流動性を高めるためには通常、粉末の減量か不揮発溶媒の増量が必要だが、それにより手指への付着のしやすさや使用感のべたつきを招くというマイナス影響が出てしまう。その課題の解決に向けて、流動性の低下をもたらす粉末の凝集を改善する方法を検討した。

 その結果、同社のこれまでのマテリアルサイエンス領域の知見をベースに最新の粉末分散研究の知見を取り入れることで、特定の粉末分散剤が塗布膜中の粉末の分散性を改善し、塗布膜が流動的になることを見出しミクロレベルの傷やよれを自動で修復させる新技術「オートリペア技術」の開発に成功した。塗布膜の傷が自動で塞がる様子は、視覚的にも確認することができた。

 実際に、オートリペア技術を搭載した塗布膜において、UV防御機能の回復が高まるかを検証し、オートリペア技術によって流動化された塗布膜において、膜に傷をつけた5分後までにUV防御機能の回復を確認した。また、従来の手法で流動化された塗布膜と比べて手指へ付着しづらく、UV防御機能の低下量が少ないことも確認できた。

 今回開発したオートリペア技術は、日やけ止めへの応用だけではなく、ベースメーク製品やリップ製品の美しい仕上がり持続にも貢献が期待される。
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