岩瀬コスファは、創業以来90年にわたり化粧品原料・機能性表示食品原料を取り扱い、オリジナル原材料の開発・提案を展開している。
美白・サンケア領域では、このほど、リキッドファンデーションの処方におけるST-710EC及びST-705SAの2種類の原料を顔料級酸化チタンと比較して評価を行ったことを報告した。
顔料級酸化チタンの粒子径は可視光での光散乱能が最大になる0.3㎛程度で、隠ぺい力が高くメイクアップに使用されることが多い。一方、ST-710ECやST-705SAは、粒子径は顔料級酸化チタンとほとんど変わらないものの、粒状が多い顔料級酸化チタンと異なり、ウニ状(図1)であるため肌に接する面積が小さくなり、滑らかな感触であることが特徴である。
また、顔料級酸化チタンと比べると隠ぺい力は低いが、赤色光を選択的に透過することから血色を損なわず明るくナチュラルな仕上がりが期待できる。赤色光を選択的に透過するため、肌内部に赤色光だけが伝わり、内側から赤色光だけが見えることで肌の凸凹をぼかす効果もあるという。ST-710EC及びST-705SAはどちらも赤色光を透過するが、ST-705SAの方がよりその効果が高い赤色ため「赤色光透過酸化チタン」と呼ばれている。
同社は、今回の実験の背景として「顔料級酸化チタンは隠ぺい力が高く、ST-710ECとST-705SAは隠ぺい力が低いと言われているが、SPF値で比較したデータがなかったため、実際にどの程度の違いがあるのかを比較するに至った」と話した。
実験ではまず、W/Oクリームファンデーション処方において、評価粉体をそれぞれ8%で固定し、SPF値の変化を測定した。実験の結果としては、ST-710EC及びST-705SAはどちらも顔料級酸化チタンよりも高いUVB防御効果が確認できた(表1)。この結果により、STシリーズの2原料は、顔料級酸化チタンに比べて隠ぺい力は劣っているがSPF値は高いということが明らかになった。in vitro試験、in vivo試験両方を実施し、どちらも同様の傾向がみられたため精度は高いといえる。
次に、隠ぺい力においてはどの程度の差異がみられるのか評価を行った。隠ぺい率の測定は、隠ぺい率試験紙に20㎛の塗膜を引き、分光測色計CM-600d(コニカミノルタ株式会社製)を用いて白背景及び黒背景の塗膜を測定し、①Lab表色系での色差(⊿E)を比較(数字が小さいほど隠ぺい力は高い)、②XYZ表色系の明度Y値の変化率を比較(数字が大きいほど隠ぺい力は高い)の2通りの方法で行った。顔料級酸化チタンは方法①では数値が最も小さくなり、方法②では数値が最も大きくなった。
STシリーズの2原料については、数値としては隠ぺい力が低いものの、若干赤みがある写真写りになったことから、自然な仕上がりが期待できるという結論に至った(図2)。
同社はさらに、STシリーズの2原料の配合量を増加することで、顔料級酸化チタンと同程度の隠ぺい力を出せるのではないかと考え、次の実験ではSTシリーズのみ配合量を12%に上げて評価を行った。結果としては、STシリーズはどちらも12%に増量することによりさらに高いUVB防御効果が確認できた。隠ぺい力を比較すると、ST-710ECは12%に増量することで顔料級酸化チタンと同程度まで数値を上げることができた。また、ST-705SAの隠ぺい力は、数値は低いままではあるものの、20㎛の塗膜写真で比較すると8%配合の場合よりも隠ぺい力は上がっているため、「ナチュラルさを残しつつ隠ぺい力を上げている」という結果が得られた。
以上の評価により、リキッドファンデーション処方にST-710EC及びST-705SAを配合することで高いUVB防御効果が付与できることを確認した。隠ぺい力は顔料級酸化チタンが最も高いが、ST-710EC及びST-705SAは配合量を増やすことで顔料級酸化チタンに近づけることが可能である。ただ、値段や感触なども考慮し、量を増やすよりも顔料級酸化チタンとの併用が現実的だという。ST-710EC及びST-705SAは粒子径や使用している表面処理剤が異なるため、処方系や感触を考慮して原料を選ぶ人も多い。
「昨今、サンケア市場では下地効果やトーンアップ機能がついているサンスクリーンが増加傾向にあり、自然な仕上がりになるSTシリーズ2原料はさらにニーズが高まっていくと考えられる」(同社)