化粧品容器を総合的に展開するグラセル (本社=大阪) は、 常に時代のトレンドを反映した容器の開発を手掛け、 業界最多ともいわれる約800以上の金型を持つ。目指すは“化粧品容器のデパート”。谷村敏昭社長は 「うちの会社に来て頂いたら揃わないものはないというくらいにまで品揃えを充実させることが目標」 と力を込める。
豊富な品揃えに加えて、容器の品質の追求にも余念がない。化粧品容器に求められるデザイン性、機能性、環境対応といった3つのニーズを見据えた商品開発を常に行っている。現場で培った感覚を活かし、業界に確固たる地位を築く谷村社長にこれまでの歩みや事業方針についてうかがった。
逆境をチャンスに変え独自のノウハウ築く
社名の「グラセル」は、谷村社長自ら考案した「“グラス”を“セール”する」という意味を込めた造語。柔軟で機動力のある企業イメージを打ち出すとともに、創業の原点であるガラスへの想いが込められている。
谷村社長が化粧品容器に携わるようになったのは、父が創業した会社を継いで、医薬用品アンプル容器の販売を始めたことがきっかけだった。
引き継いだ当初、売上げこそ約1億円あったものの、取引き先は3社のみ。暇を持て余した谷村社長は一念発起し、知り合いのつてを活かし全国の製薬メーカーに営業に回った。ワゴン車を運転して配達から納品書の作成まで一人でなんでもやってのけ、5年後には6億円を売り上げるまでに会社は成長を遂げた。
ちょうどその頃、取引のあったデザイン会社から、たまたま「化粧品用容器の仕事をやってみないか」と持ちかけられる。化粧品のことを右も左もわからないながらも谷村社長は「とにかくやってみよう」とメーカーへの一括委託という形で請け負った。しかし半年後、その仕事が他社に奪われてしまう。
「何くそ、このままでは終わらんぞ。絶対化粧品容器でやったる、と思いましてね。それで化粧品容器のことを一から勉強したんです」
最初に手掛けたのは試供品の容器だった。当時、5gと10gのみで展開されていたクリーム容器に3gを作り、次いでローション用の試供品容器も同じように、これまでになかったサイズを自社で開発。出来上がった製品サンプルを全てセットにして、化粧品工業会の会員企業に送り届けた。
「興味を持って頂いた企業から引き合いを受け、製品サンプルから取引が広がりました。試供品はどの企業でも使うものですし、元々興味を持って引き合いを頂いているわけですから、交渉も大抵スムーズにいき、だんだんと取引先が増えていきました」
そうして得た利益の一部を新たな容器の開発に投資し、製品サンプルを送るということを繰り返す中で、谷村社長は「商品を右から左に流すことはせず、金型への投資を積極的に行って自分のところにしかないものを送り出していこう」と、現在に続く事業運営の根幹となる商売の流儀を体得する。
以来、「容器は単品で作るのでなく必ずシリーズで揃えるようにしました。一つひとつの金型の償却を考えたら、売れないものを作らない方が効率はよいように思える。しかし、シリーズを作った方が必ずモノは売れる。シリーズを揃えることで、お客様が色々な展開ができると安心して取引して下さるからです」
しかし、売上げが伸び新商品を次々と送りだせるようになると、新たな問題が生じることになる。取扱容器が増えて、社員ですら自社がどのような容器を展開しているかを把握できなくなってしまうためだ。
そこで誰もが分かりやすく使い勝手のよいカタログを手掛けることにした。同業他社にも呼び掛けて、他社の売れ筋商品まで網羅した総合的な自社カタログを作ると、これがまた反響を呼んで大ヒット。同社の売上げを飛躍的に伸ばすきっかけとなった。
以後、製品サンプルの送付に加え、定期的にカタログを刷新し企業に送り届けるといった提案活動のスタイルが確立。当初1シリーズだけだったカタログも、今では、スキンケア関連、メーク関連、提携韓国企業の容器をまとめたものの3シリーズに増えた。さらに、新製品情報のメールマガジンによる配信も随時行っている。
脱ガラス化を合い言葉にインブロ容器を充実
「カタログは見ているけど実物を手に取ってみたいとか、送られてきたサンプルだけでなく総合的に容器を見て検討したいという要望も多い」
そこで同社は大阪・東京・名古屋・福岡といった4拠点に主力容器をディスプレイしたショールームを設けている。来訪者は途切れることなく、新規の取引先が増えるという。
「化粧品容器は化粧品の“顔”であり、第一印象の決め手になるもの。だからこそ我々の作る容器は時代の先端を行かなければならないと考えています」
この市場ニーズに即した容器を作ろうという情熱が、不況下においても新規客を取り込み、売上げを伸ばす原動力となっている。
さらに、商品開発だけでなく品質面に対しての姿勢は、既存顧客との信頼関係をより強固なものにしている。
「製造に関しては各専門メーカーに委託していますが、お届けするものは全て自社製品であるという意識を持ち、検品や測定検査は必ず自社で行っています。新しい容器を作った際にも必ず社内で機能面、外観面の検査を行い、基準を満たしたものしか発売しません。そのため、大阪本社ではクリーンルーム内で全数検査が行えるラインを4つ、尼崎倉庫で3つ、千葉で1つと合計8つの検査ラインを整えています。右から左にただ商品を流す販売店ではなく、メーカーとして品質に対する責任があると考えているからです」
今年もデザイン・機能・環境に優れた多彩な容器を提案
同社ではデザイン性、機能性、環境対応といった化粧品容器に求められる3つの最重要テーマに基づき容器を開発。毎年、新商品を数多く投入している。
2010年は、デザイン面では、ガラスの質感を出すことができる肉厚のインジェクションブロー容器4シリーズを提案していく。楕円型2種類、角型、丸型各1種類を揃えた。
機能面では、クリーム容器 「ATTO」 に期待している。180度ふたを回転させるだけで「あっ」という間に開け閉めできるという。エアレスポンプはPCTという新素材を採用し、耐薬性や透明性により優れたものへと改良したものを提案している。気密性が高く、オイル製品の容器としても使うことができる。
環境面では、詰替対応のクリーム容器「ECOR(エコル)」がイチオシだ。容器は二重構造になっており、内側容器の付け外しがワンタッチでできる。レフィルとキャップはPP・バイオマスどちらの素材にも対応する。紙製のメークアップ容器も、新たな顔として期待している。環境に配慮でき、かつ、デザインの幅が広がることから、その商品の世界観もぐっと伝わりやすくなる。
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この記事は週刊粧業 掲載
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