化粧品容器の三洋化学工業、好奇心から始まるモノづくりで市場活性化

カンタンに言うと

化粧品容器の三洋化学工業、好奇心から始まるモノづくりで市場活性化

三洋化学工業・井上厚弘社長インタビュー

シンプルで個性的な容器が語るストーリー

 化粧品容器メーカーの三洋化学工業では固定観念にこだわらない柔軟な発想で容器に新たな可能性を見出してきた。 容器の役割は内容物を保護するだけではない。 ブランドの世界観を代弁し、 手にした人々にメッセージを伝えるという大切な使命がある。 このような“語る容器”を提供する同社の戦略について、 井上厚弘社長に語ってもらった。

「ミスティ」に続く次世代型容器 「エウレカ」でデザイン自由自在

 ――容器づくりでこだわっていることは。

 井上 我々は自社製品を容器第3世代と位置づけている。 第1世代は内容物を保護し、 腐敗を防ぐ容器。 第2世代は内容物を保護するだけでなく、 よりよくみせる容器。 そして第3世代の容器は、 自らがメッセージを語ることで内容物の物語性を引き上げる機能を持つ。

 最も大切なのは中身を引き立てる事なのでシンプルなフォルムは大命題であるが、 独自性を出して差別化をはかるという逆のベクトルも持っている。

 この2つのベクトルを両立させ、 広告媒体としても容器を認知してもらうことが重要だと思っている。 このスタンスに賛同してくれるお客様は多い。 例えば無料配布する製品を入れる広告媒体として、 容器を採用いただいたケースもある。 パートナーシップを組んでいる充填メーカーやOEMメーカーを紹介することで中身のプレゼンテーションも可能になった。

 ――その中でも特長的な容器は。

 井上  「EUREKA (エウレカ)」 シリーズである。 当社の主力商品 「ミスティ」 に続く次世代型インサートジャーで、 二層の樹脂の間にユポ紙などのフィルムを挟み込むことで精密なイラストやグラデーションなどの 「夢現デコレーション」 を可能にした。

 ユポ紙はユポコーポレーションと共同開発したもので、 樹脂製のため容器と一緒に廃棄できる。 フィルムが額縁の役割を果たすわけだが、 成形と同時に挟み込みが出来るので、 例えばワンロットを3000個とすると、 10種類のデザインがあれば300個ずつのバリエーションを順送りに造ることが出来る。

 サイズは30、 50、 80の3サイズで、 今後ラインアップを増やしていきたい。 「ミスティ」 でも使用している高透明のPP樹脂 「シエル (視得)」 (フランス語で虹を意味する) を使うことで中のクリームを鮮明に見せることができる。 すでに数社での採用が決まった。

 ――デコレーション機能では 「AILE (エル)」 も注目されているが。

 井上  「AILE」 は屋根裏の感覚で、 キャップの内部空間にシートを封入し、 オリジナルデコレーションをするシリーズだ。 興味を持つ企業は多く、 採用もいくつか決まった。 厚盛印刷、 多面体、 ラインストーンなど、 様々なオリジナルデザインが可能である。 今後は実例を増やしながら方向性を確立させていきたい。 蒸着のような特別な加飾はしなくても、 オリジナリティを出すことができる容器だ。 新サイズの導入準備も進めている。

 ミニサイズのPETジャー容器 「LINO (リノ)」 シリーズも健闘している。 高級感があり、 使いやすく、 コストパフォーマンスに優れていることが評価されている。

工場・倉庫など設備面を強化、提携企業とのビジョン共有も

 ――展示会では個性的なブースが注目されているが。

 井上 毎回、 楽しみにしてくれるお客様が多いので、 このキャラクターは続けていきたい。 「国際化粧品開発展」 では遊園地を思わせるにぎわい感のあるブースを出した。 昨年の 「CITE JAPAN」 ではグリーンを基調にガーデンを思わせるブースで独自性を出した。

 ブースのテーマを私が決め、 それをマーケティング課などで具現化していく。 来年の 「CITE JAPAN」 に向けて、 すでにブースのテーマをいくつか絞り込んでいるところだ。 会社のカラーを打ち出す演出には自信を持っている。

 広告も私がキャッチコピーをつけ、 社内でデザインを考案する。 数秒の間に見る人にインパクトを与えられる、 わかりやすいコピーをつけなくてはならない。

 ――設備面の強化は。

 井上 2009年7月に物流センターおよび検査室を 「CS (カスタマーサービス・カスタマーサティスファクション) センター」、 本社工場を 「T―O―F (タワーオブファクトリー)」 と名称変更し、 本社近くに移転開設した。 IT化を進めることで在庫管理、 生産管理体制を徹底させ、 財務、 販売、 マーケティング機能も高めている。

 CSセンターでは自動ラック倉庫を新導入して空間効率を高め、 マテリアルハンドリングに人手を必要としなくなった。 どこに何が何個、 いつ入出庫したのかデータ管理され、 財務システムと連動させた。 業績が好調なこともあって稼働率はほぼ100%に達している。 物資も加飾作業も増えているので、 自動化してよかったと思う。

  「T―O―F」 にはパートナー企業のホットスタンプ工場を誘致した。 さらに品質管理課を品質保証課にグレードアップし、 “攻め”の品質対策を構じている。

 パートナー企業とビジョンを共有するため、 このほど 「三洋共成倶楽部」 を立ち上げた。 会員企業の人事教育や金融対策などをインフラ単位でサポートすることでお互いに経営体質を強化し、 顧客満足につなげていくのがねらいだ。 すでに6社が加入し、 品質やサービスに対する意識の共有化を果たしている。

 ――人材教育の動きは。

 井上 外部との交換留学制度を導入した。 当社とパートナー企業間などで社員を数週間交換し、 現場を体験し合うことで相互理解を深める。 それぞれの苦労点も見えてくるので問題が課題に変わっていく。 本社に50~60名が入れる大会議室があるので、 外部講師を招いた研修にパートナー企業の参加を呼びかけることもある。

ジャー容器が売上げを牽引中、エコロジー&エコノミー追求

――現在の業績は。

 井上 前年度 (2010年4月期) は過去最高の売上げを達成した。 これを踏まえ今期は1~2%の成長を目標としていたが、 現在は約10%増で推移している。 楽観視はしていないが、 現在のペースを維持できれば商品販売の売上げだけで期末に30億円を確保できそうだ。

 好調な要因として、 ジャー容器の相互補完がある。 かつては 「ミスティ」 だけだったが、 今は新シリーズが増え、 “ジャー容器なら三洋化学工業”と言われるようになった。 今後は一般消費者の間でもジャー容器の認知度を高めていきたい。

 ――今後の展望は。

 井上 リフィルのジャー容器やコストパフォーマンスに優れた容器など、 エコロジー&エコノミーを追求していきたい。 金型メーカーとタイアップして資源とコストを意識した容器づくりに取り組む。

 ジャー容器を得意分野とし、 そのアイデンティティを確立していくための投資を今後も続けていく。 人間の最大の特長は好奇心であり、 全てはそこから始まる。 大切なのは決めつけない勇気を持つこと。 固定観念にとらわれず、 常に好奇心をもってモノづくりに取り組んでいく。

※CITE Japan 2011注目企業「三洋化学工業(株)」編コチラ

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