ライオン濱逸夫社長、若手幹部登用など将来の成長に向けた布石着々と

週刊粧業 2016年1月1日号 38ページ

カンタンに言うと

ライオン濱逸夫社長、若手幹部登用など将来の成長に向けた布石着々と
 ライオンは、2012年度を初年度とする新経営ビジョン「Vision2020」において、「国内市場の質的成長」「海外市場の量的成長」「新しいビジネス価値の開発」「組織学習能力の向上」という4つの戦略を推進することにより、中長期的な成長軌道、収益基盤の強化を目指している。

 同社では、2015年度からスタートした3カ年の「V‐2計画」で収益性の向上を最大のテーマに取り組んでいるが、初年度は過去最高益の更新がほぼ確実な情勢であり、幸先のよいスタートを切った。

 2015年の動向と2016年の展望について、濱逸夫社長にインタビューした。

「V‐2計画」初年度の15年度は
過去最高益の更新で好発進

 ――まずは、2015年度を振り返っていただけますか。

  「Vision 2020」では、2012年~14年までの「V‐1計画」で、いかに収益を上げる基盤をつくるかがポイントでした。2012年にややつまずきましたが、13年、14年でかなりマネジメント改革が進み、収益が上がる基盤が整いました。その流れを受けた「V‐2計画」は、さらに成長するための体力・筋力をつくり、結果を出すことが課せられたステージであり、「V‐3計画」への成長の布石を打つことを目標にしています。

 その目標に対して、「V‐2計画」の初年度である2015年度は、しっかりと収益力を高めることができ、まずまずいいスタートが切れたのではないでしょうか。

 利益面では、「国内外における原料安」「コストダウンの推進」「国内外における付加価値商品への商品構成のシフト」により、大幅な改善がみられました。

 原料安については、国内外でメリットをある程度享受できていますし、コストダウンについても想定以上に進みました。

 付加価値商品への商品構成のシフトは、国内ではオーラルケア分野で顕著になっており、薬品やホームケア(台所用洗剤など)でも利益性の高い付加価値品へのシフトが進んでいます。このような動きは、今後も継続させていきます。

 海外についても、ファブリックケア(洗剤)から収益性の高いオーラルケア、ビューティケアへのシフトが進んでおり、全体として想定以上の利益改善につながっています。つまり、利益貢献度という点では、昨年度に比べると非常に大きい状況といえます。

 特に、中国ではEコマースの売上げが非常に伸びており、全売上高の35%を稼ぎ出すまでになっています。近いうちに5割を超える構成比になるだろうと予測しています。その中国では、日本製品に対する信頼度が非常に高く、収益性の高い付加価値品が大きく伸びており、収益拡大に貢献しています。

 韓国についても意識的にプロダクトミックスを変え、利益商材に重点的にプロモーションを投下しているほか、販促費の投入を敢えて絞るといったことにも取り組み、収益性が大幅に改善されています。

 海外事業で最も売上規模が大きいタイでは、中国経済減速の影響を大きく受ける中、中間所得層の拡大により、トイレタリーでも付加価値を求めるニーズが高まってきています。我々は、そうした兆候を捉えて、韓国と同様にマネジメント体制を整え、オーラルケア、ビューティケアの付加価値品を投入してきた結果、収益性を高めつつ、GDP伸長率を上回る成長をしっかり確保することができています。

 ――収益性が向上した背景には、汎用価格帯で無理な売りをしないことがあったと推察します。具体的にどのようなことに取り組みましたか。

  付加価値ブランドを育成していくことの重要性は、これまでの中期計画の中でもずっと謳ってきたことです。しかし、それが実現できなかったのは、営業の評価軸にそのことがきっちり組み込まれておらず、インセンティブにもなっていなかったことが要因でした。

 そうした中、とにかく売上計画を達成するためにかつては、売りやすいもので売りをつくってしまっていました。しかし、2012年の後半ぐらいから収益力向上に向けた戦略を確実に実行に移せるようなマネジメント体制をつくり、営業への定着を図っていきました。

 その際、数値目標を売上軸から利益軸に持っていきましたし、評価制度にも利益を重視する指標を取り入れました。そして、付加価値品の販売を伸ばすためにどのようなことをすべきかを営業が自らアイデアを出して動くことができ、自分なりにその取り組みがうまくいったか、いかなかったかを検証することができるような、成功事例や失敗事例を共有できるような体制に変更しました。

 このように体制をしっかり構築してきたことが、収益性向上に最も大きく貢献しているといっても過言ではありません。

 最近、販売店様に「ライオンは良くなってきた」と随分言われるようになってきましたが、我々の目指す方向性が小売業の政策と一致してきたという思いを強くしています。

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