花王、肌状態と毛細血管の血流調節機能との関わりを確認

粧業日報 2019年8月9日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 顔肌の毛細血管を効率よく抽出できる画像解析技術を開発
花王、肌状態と毛細血管の血流調節機能との関わりを確認
 花王スキンケア研究所と情報システム部門は、血液循環などの身体機能にも着目し皮膚科学研究を行なう中、毛細血管の血流調節機能が肌状態と関連があることを見出した。また、このような毛細血管と肌に関する研究を深耕することを目指し、マイクロスコープによる顔の肌画像から毛細血管を自動抽出する画像処理技術を開発した。

 同研究内容の一部は、「第58回日本生体医工学会大会(2019年6月、沖縄県)」「第19回抗加齢医学会総会(2019年6月、神奈川県)」にて発表している。

 花王は、「皮膚も身体の一部」という視点から、血液循環などの身体機能にも着目して研究を行っており、2015年には、外部環境の変化に応じて血流を調節する力である「血管力」が高い人は皮膚性状が良好であることを初めて見出し、さらにこの血管力はストレスとも関連があることを報告している。

 血管の中でも、毛細血管は、全身の血管から細かく枝分かれして存在し、組織に酸素や栄養を供給し老廃物の回収を行うといった血液循環の最も重要な物質交換機能を担っているが、皮膚の毛細血管には常に血液が流れているわけではなく、全身の血管とは異なる制御機構を持っており、組織の酸素濃度や代謝活動に応じて、血流が調節されていることが知られている。

 しかしこれまでは、極めて微細な毛細血管のみを抽出して測定することは困難だったため、このような毛細血管の働きと皮膚の機能や代謝、肌の美しさとの関連や、その詳細はわかっていなかった。

 そこで同社は2017年、20~60代の日本人女性98名の肌の毛細血管をマイクロスコープにより観察し、定常状態における毛細血管の面積、長さ、密度、実験的に血流を亢進させた際の血流調節機能など、毛細血管に関するさまざまな指標と肌状態との関連性を検討した。その結果、定常時の毛細血管の状態よりも、血流調節機能の方が多くの肌状態と関連していることがわかった。

 さらに、毛細血管と肌性状との関連について深く検討するため、マイクロスコープによる撮像から毛細血管を高精度に抽出する技術開発を試みた。

 顔の肌には、メラニンや毛が存在するため、これまで毛細血管のみを抽出して測定することは困難だったため、今回の研究では、毛細血管を含む肌画像を、独立成分分析法により、ヘモグロビン・メラニン・陰影の各成分に分割し、ヘモグロビン成分画像にフィルタ処理を行い、管状構造を持つ毛細血管を選択的に抽出した。さらに、陰影成分から生成した画像を用いてマスク処理を行い、毛由来のノイズを低減する方法により、マイクロスコープ画像から毛細血管を高精度に抽出するアルゴリズムを構築した。

 このアルゴリズムと熟練者が画像を視認して毛細血管を人手でトレースする方法を比較したところ、全抽出画像のうち96.6%が一致し、高精度にかつ、短時間で肌の毛細血管が抽出できることを確認した。

 同社では、毛細血管の血流調節機能が肌性状と関連することを確認した今回の調査結果は、これまでの研究知見と合わせ、血流調節機能が肌の美しさに関わる可能性を示すものと捉えている。

 また、マイクロスコープによる肌画像から毛細血管を抽出、定量する新たな評価手法を開発したことにより、毛細血管の状態や機能の評価、顔の肌との関係性をより深く調べる研究が前に進むという。

 今後は、加齢や環境による血管の状態変化などについても検討を進め、肌の代謝やシミ、シワなどのさまざまな状態に与える影響の解析を行っていく。
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