コーセー、処方自動生成システムを開発

粧業日報 2023年2月14日号 1ページ

コーセー、処方自動生成システムを開発
 コーセーは、量子コンピュータと従来型コンピュータを組み合わせたハイブリッド型アルゴリズムにより、高速に動作する化粧品の処方自動生成システムを開発した。

 システムの適用例として、角栓除去能の高さを目標品質としたクレンジングオイル処方を自動生成したところ、安全に使用できる条件を満たしながら、これまでの一般的な処方よりも高い角栓除去能をもつ処方が得られた。今後、他の剤型など適用範囲を広げていく。なお、このアルゴリズムについては関連する特許2件の出願を済ませている。

 量子コンピュータは次世代コンピュータ技術として、幅広い産業において多くの期待が寄せられている。この技術の中でも、「組合せ最適化問題」と呼ばれる課題によく用いられる量子アニーリング方式は、材料開発や創薬などの分野で商業利用が盛んに始められている。

 「組合せ最適化問題」とは、与えられた組み合わせの中から制約条件を満たしながら最も良い組み合わせを選び出す問題であり、無数の原料の組み合わせから安全性などの制約条件を満たしながら、目標品質をつくり上げる化粧品の処方設計に応用することができるのではないかと考えた。

 そこで、同社では量子コンピュータを用いて、目標品質に最適な化粧品処方を高速に自動生成させることができるアルゴリズムの開発を試みた。さらに、開発したアルゴリズムの適用例として、角栓除去能の高さを品質指標としたクレンジング処方の自動生成と評価を実施した。

 現時点では、量子コンピューティング技術は発展途上で、量子コンピュータ単体で計算される解には精度面で課題がある一方、従来型コンピュータでは莫大な候補の中から解を探すのに多くの時間を要してしまう。そこで、量子コンピュータと従来型コンピュータのそれぞれの利点を組み合わせたハイブリッド型の独自アルゴリズムを新たに開発した。

 このアルゴリズムは、量子コンピュータの強みである高速な演算能力を活かし、無数にある原料の組み合わせの探索領域を目標品質に合わせて高速で絞り込み、続いて、従来型コンピュータを用いて絞り込んだ中で目標品質に最適な処方を正確に生成させることができる。これにより、これまでは実用的な時間では計算が困難であった自動処方生成を、量子コンピューティング技術を活用することで実現できるようになった。

 開発した処方自動生成システムの適用例として、角栓除去能に優れたクレンジングオイル処方の自動生成を試みた。

 角栓は毛穴の詰まりや黒ずみ、ニキビなどの要因の1つであり、シート状のケア商品による物理的な除去やクレンジングオイルなどで溶解させて除去する方法が知られている。

 今回は角栓を溶解させる物性値を角栓除去能として目標品質に設定し、安全に使える原料配合量を条件として、クレンジングオイル処方の自動生成を実施した。

 その結果、自動生成した処方はこれまでの一般的な処方よりも高い角栓除去能を示した。今回のクレンジングオイル処方の自動生成において、処理に要した時間はわずか数秒であり、量子コンピュータを用いないアルゴリズムと比較して、約900分の1に短縮できた。

 今回の研究により量子コンピューティング技術を応用することで、人間の思考を超えた化粧品処方を高速で自動生成する実用性と将来性を実証した。同社では今後も継続して量子コンピューティング技術の可能性を探索するとともに、一人ひとりの顧客が求める品質に合わせたパーソナライズ処方開発サービスなど、市場価値提案を検討していく。
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