サンスターは、信州大学医学部との共同研究により、長野県塩尻市の国保特定健診受診者を対象に任意の歯科的介入として歯科健診、歯科保健指導、口腔清掃補助用具セット(歯間ブラシ、洗口液、使い方説明書)の配布を実施し、口腔と全身の状態と保健行動の変化を分析した。
その結果、特定健診と歯科的介入を受けた人は、歯間ブラシや洗口液の習慣化や運動・飲酒習慣等の保健行動が改善し、それらを通じて、口腔・全身状態にも良い影響を与えたことを明らかにした。
この結果から、受診者が自身の健康状態を振り返る場となる特定健診時に、併せて歯科的介入を実施することは、受診者の口腔・全身の状態、保健行動の改善につながることが示された。
研究では、メタボリックシンドロームに焦点を当てた特定健診時に歯科的介入を実施し、特定健診のみを受診した者と比較して、口腔・全身の保健行動が変容するかを調査することを目的とした。さらに、これらの保健行動の変容に伴う副次的効果として、口腔・全身状態の経時変化を確認した。
具体的には、長野県塩尻市の国保特定健診受診者のうち、研究参加に同意し、2018年・2021年の両年に特定健診と任意の歯科的介入を受けた131名(平均年齢60.9±8.5歳)、特定健診のみ受診した197名(平均年齢62.2±7.8歳)を対象とした。歯科的介入として、特定健診受診時に歯科健診、歯科保健指導を実施し、さらに受診時、2~3カ月後郵送にて計2回、口腔清掃補助用具セット(歯間ブラシ、洗口液、使い方説明書)を配布した。その後、特定健診と任意の歯科的介入を受けた人の3年後の口腔に関する保健行動や状態の経時変化と、さらに特定健診のみを受けた人と比較した3年後の全身状態に関する保健行動や状態の経時変化について分析した。
特定健診と歯科的介入を受けた人の口腔状態について、歯肉出血ありの割合、未処置歯ありの割合は3年後に有意に減少した。また、歯周ポケット深さ4mm以上ありの割合も減少した。さらに、全身状態について、特定健診と歯科的介入を受けた人は腹囲、脂質異常症、高血糖該当ありの割合が3年後に減少したのに対し、特定健診のみ受診した人は高血糖ありの割合のみが減少した。
特定健診と歯科的介入を受けた人の口腔に関する保健行動については、歯間ブラシ、洗口液の使用率がそれぞれ3年後に45.8%→56.5%、25.2%→44.3%へ有意に増加した。また、生活習慣については、特定健診と歯科的介入を受けた人は、特定健診のみ受診した人と比べて多くの項目で行動変容が見られ、特に「30分以上/日の運動をする」「飲酒を毎日または時々する」「朝食を3回/週以上抜く」「間食を毎日または時々する」割合が改善した。
口腔状態と全身状態に良い影響を及ぼした背景には、このように特定健診と歯科的介入を受けた受診者の健康意識が高まり、健康行動に変化が生じたことがあると考えられる。
この記事は粧業日報 2024年3月5日号 1ページ 掲載
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