グリコ栄養食品、植物由来の抗酸化素材を紹介

C&T 2024年6月17日号 52ページ

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グリコ栄養食品、植物由来の抗酸化素材を紹介

 グリコ栄養食品は、小麦グルテン、デンプン、着色料、米粉から機能性素材に至るまで様々な原料の製造販売を行っている。今回、技術開発センターウェルネス開発グループの舟橋依里氏が、植物由来の抗酸化素材として「バイオグリコーゲン」「PapriX」についての講演を行った。

 「抗酸化」は世界でも注目されており、特に化粧品における抗酸化を訴求した新商品数は、年々増加している。10代から70代の男女約1万人を対象にしたアンケートでは、4分の3以上の人が何らかの肌トラブルを抱えていると回答し、具体的な肌トラブルとしては、「シミ・そばかす」「乾燥」「しわ」などが上位に挙げられた。これらの肌トラブルは肌の酸化が一因と考えられる。

 肌の酸化は「活性酸素種(ROS)」により引き起こされる。ROSは、紫外線や大気汚染物質、呼吸やストレスなど、日々の生活の中で生成され、身体を守る役割を担う一方で、過剰な発生により様々な病気や肌のダメージにつながることがある。

 そのため、ROSによる酸化を抑えること(抗酸化)が必要となる。抗酸化は、「直接的抗酸化」と「間接的抗酸化」の2種類に分けられる。「直接的抗酸化」とは、抗酸化物質がROSに直接作用することでROSを消去する。反応速度が速い一方で、持続性がないという特徴を持つ。「間接的抗酸化」とは、抗酸化誘導成分により細胞が抗酸化酵素を産生しROSを除去する。持続性がある一方で、酵素発現までに時間を要するという特徴を持つ。

 「バイオグリコーゲン」は間接的抗酸化として機能する。グリコーゲンとは、D-グルコースがグリコシド結合によって重合した多糖類のことである。動物では主に骨格筋と肝臓に分布し、貯蔵エネルギーの役割を持つ。動物の皮膚には約0.05%のグリコーゲンが含まれており、紫外線によるダメージの回復などに利用されていると言われている。

 同社の研究では、ヒトの皮膚に存在するグリコーゲン量は、加齢に伴い減少することが確認されている。そこで、同社ではグリコーゲンが肌の健康に関与していると考え、研究を進めた。バイオグリコーゲンは同社の独自酵素を使用し製造したグリコーゲンであり、高純度かつ均一な分子サイズで、構造は天然のグリコーゲンとほとんど変わらない。

 同社は、紫外線に含まれるUVBによって発生するROSの蓄積量に対するバイオグリコーゲンの作用について検証を行った。正常ヒト表皮角化細胞に600μg/mLのバイオグリコーゲンを添加し、24時間培養後、UVBを照射(20mJ/c㎡,302nm)して30分間培養し、ROSの蓄積量を測定した。

 バイオグリコーゲンを添加していない細胞に対し、UVBを照射するとROSが大きく増加するが、バイオグリコーゲンを添加すると、有意にROSの蓄積量が減少することが確認された。このことから、バイオグリコーゲンは、UVB刺激によるROSの蓄積量を減少させる効果があることが分かった(図1)。さらに、PM2.5刺激によるROSの蓄積量に対する作用についても同様にROSの蓄積量の減少を確認した。

 同社では、このバイオグリコーゲンがROSを抑制するメカニズムについて、紫外線やPM2.5などの大気汚染物質によって細胞内にROSが発生・蓄積し、細胞死や炎症などのダメージが引き起こされるが、バイオグリコーゲンが転写因子Nrf2の核内発現レベルを上昇させ、抗酸化タンパク質の遺伝子発現を上昇させることによりROSの抑制につながると考え、ROSの抑制に関する抗酸化関連タンパク質としてNrf2、NQO1、HO-1に対するバイオグリコーゲンの作用を検証した。

 結果として、バイオグリコーゲンを添加した場合では各タンパク質の発現量が有意に増加し、バイオグリコーゲンが転写因子Nrf2を通して抗酸化タンパク質NQO1、HO-1の発現量を増加させることにより、PM2.5やUVBによって発生するROSを抑制することが示唆された。

 また、in vitro試験にて、PM2.5刺激による炎症に対するバイオグリコーゲンの作用について、炎症性サイトカインであるIL-6とTNFαを用いて検証を行ったところ、これらの炎症性サイトカインの発現抑制を確認した。

 同様に、UVB刺激による細胞死への働きとして細胞死に関わるタンパク質であるCaspase-3とCaspase-9を用いて検証を行ったところ、これらの細胞死関連タンパク質の発現減少を確認した。さらに、UVB刺激による細胞生存率への働きについては、UVB照射時の細胞生存率を増強することが確認された。


 in vivoにおける紫外線刺激低減効果についての試験では、健常な男女17名が0.5%バイオグリコーゲン配合クリームとプラセボクリームを1日2回、1カ月間塗布し、エリスマ値(メグザメーター)を測定した。

 結果としては、プラセボクリームに対して、バイオグリコーゲン配合クリームはエリスマ値を有意に減少させた。水分量増加・しわ低減効果についての試験では、日頃から肌の潤い不足を感じている45~59歳の健常な男女20名が1日2回、バイオグリコーゲン配合化粧水またはクリームとプラセボ化粧水またはクリームを1カ月間半顔塗布し、角層水分量、目視しわグレード診断、レプリカしわ解析によって評価を行った。結果としては、角層水分量・最大しわ平均深さともに向上が確認された。

 舟橋氏は、「バイオグリコーゲンは、抗酸化関連タンパク質の発現を促進することでROSを抑制する働きを持つ。また、肌の保湿成分であるヒアルロン酸やセラミドの産生を促進する働きも有しており、元気な肌に導くことができる」と話す。

 「PapriX」は直接的抗酸化として機能する。同原料は赤パプリカから抽出した7種類のキサントフィルを含有した製剤であり、特に「カプサンチン」「ククルビタキサンチンA」「カプソルビン」は強力な活性酸素消去能を有している。

 単一成分を用いて、ヒドロキシラジカル(呼吸によって発生するROSの一種)の消去反応を測定し、β-カロテンを1とした比活性として表記した。PapriXが含んでいる「カプソルビン」「カプサンチン」「ゼアキサンチン」は「β-カロテン」「アスタキサンチン」と比べ、高い消去能を有していることが分かった。

 さらに、一重項酸素(紫外線によって発生するROSの一種)についても検証を行った。PapriXに含有されている「カプソルビン」「ククルビタキサンチンA」「カプサンチン」は、アスタキサンチンを超える一重項酸素消去能を保持していることが分かった。

 in vivoにおける紫外線刺激低減効果の試験では、健常な成人男女43名がPapriX含有食品またはプラセボ食品を5週間摂取し、紫外線照射後の最小紅斑量(MED)、最小黒化量(MTD)を測定した。最小紅斑量では、PapriXはプラセボに対して有意な増加を確認し、最小黒化量でも増加傾向を確認した(図2)。紫外線ダメージによる肌トラブルの軽減に期待することができる。

 最後に舟橋氏は、「PapriXは高い抗酸化能を有しており、紫外線刺激の低減効果を有することが分かった。また、他の機能として、運動後の疲労感軽減に関する運動サポート機能、体脂肪・BMI低減サポートの機能も有している。PapriXを摂取することで、お客様の複数の悩みを解決することができる」と締め括った。

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