専門的な知識を持つエステティシャンやドクターからペプチド化粧品の説明を受けてしまうと、作用機序が理解できなくてもほとんどの女性達が目を輝かせ財布のひもを緩ませてしまうのは当分続きそうな美容業界における世界的なトレンドである。
日本の化粧品技術者向けデータベースサイト(Cosmetic-Info.jp)においても、ペプチド原料は100種以上が既に表示成分リストに登録されている。
従来のペプチド原料は、 コラーゲン加水分解ペプチドのように、保湿原料のような基材的な使われ方をしていたが、近年は、成長因子のような、細胞に対して特異的機能をもつペプチドが人気の中心である。化粧品に使用されるペプチドは大別して2種に分類される。
第1にコラーゲンを酵素分解したペプチドのように主に保湿等の化粧品基材を目的に使用されるものである。第2に、細胞の成長を促進したり特定の酵素反応を阻害し、又は促進するなど生理的な機能を及ぼすことを目的に使用されるものである。
近年、化粧品原料として注目されているのは後者の機能性ペプチドである。現在化粧品原料として利用される機能性ペプチドは、ほとんどがサイトカイン様の働きを示すものである。
サイトカインとは、 細胞から分泌されるペプチドで、特定の細胞に情報伝達をする働きがあり、その種類としては免疫調節に関与するインターロイキン、白血球遊走化を促進するケモカイン、ウイルスや細胞増殖抑制作用をもつインターフェロン、上皮成長因子 (EGF)、線維芽細胞成長因子 (FGF)、肝細胞成長因子等の細胞増殖活性を引き起こす細胞増殖因子、腫瘍壊死因子等のアポトーシス誘発作用をもつ細胞傷害因子、食欲や脂質代謝の調節を行うアディポカイン、神経細胞成長促進作用をもつ神経栄養因子等多くの種類が存在し、免疫反応、炎症反応、細胞の増殖、分化、細胞死、創傷治癒等のプロセスの活性化に関与することが知られている。
中でも細胞増殖因子であるEGFやFGFは、皮膚を構成する細胞の増殖を促進するためにシワ等に対して効果的なイメージがあるために化粧品製剤に配合されている。
その他の化粧品に添加される機能性ペプチドとしては、特定のコラーゲンやプロテオグリカンの産生促進作用を持つペプチド、 メラニン産生を抑制するもの、 神経伝達物質の阻害を目的としたペプチド等が報告され美容分野においてシミ、 シワの予防等の目的のために配合されている。
しかし、 これらの細胞成長因子のほとんどは、 分子量が7000~2万と大きいため化粧品に添加して外用しても皮膚吸収されにくいと考えられる。
そこで最近は、 分子量が400~700と比較的小さなペプチド類をスクリーニングして疑似細胞成長因子を探し出す試みが活発化している。 さらにペプチド鎖で3~5の比較的小さなものに、 脂質エステルを修飾して両親媒性を付与したり、 処方的に吸収促進剤と併用して経皮吸収性を高めるなどの製品も開発されてきている。
DDS製剤などにペプチドを包摂して皮膚からの浸透性を高めたものなどもある。 エレクトロポレーションやイオン導入器等の経皮吸収促進デバイスを使用して皮膚へ浸透させる試みも試されている。 マイクロニードルなどのパッチシートを用いた導入法なども検討されている。
化粧品用ペプチド原料の詳細は、 http://provitamin.jpまで。
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