カネボウ化粧品では2015年、ヘア領域まで含めた「トータルビューティカウンセリング」を開始し、その深耕を進めてきた。2016年には感動をともなう接客を競うカウンセリングコンテストがスタートする。
「KATE」「suisai」「ルナソル」「RMK」等が健闘し、さらなる成長が見込まれる。花王との販社の一体化もスタートした。
夏坂真澄社長は2016年、一歩前に踏み出した攻めの姿勢で国内外における様々な戦略を掲げている。
メークブランドが軒並み好調
「KATE」がアジアで急成長
――2015年は化粧品業界にとって、どのような一年でしたか。
夏坂 2015年12月に発表された7~9月期の国内総生産(GDP)改定値は、設備投資が大幅に引き上げられたことなどにより、年率換算では、速報値のマイナス0・8%からプラス1・0%に転じました。一方で、個人消費や輸出は力強さを欠いている状況にあることから、景気回復の動きは足踏み状態にとどまっています。
経済産業省の化粧品出荷統計では1~10月で前年比101%(金額ベース)でした。化粧品市場では日本のお客さまの消費動向が7月以降、回復基調にあります。なお、チャネル別では、1~10月で前年を超えたのは専門店のみであったことから、カウンセリングへの回帰傾向が継続していることがうかがえます。
室町時代、日本はアジアと交易が盛んであったため、当時は九州や日本海沿岸が経済の中心でした。明治時代になると、米国との交易が盛んとなり、太平洋側に経済の中心が移りました。
現在、貿易総額の約半分をアジアが占めるようになっており、再び、日本経済の中心は、西に移りつつあります。今一度「アジアのなかの日本」という観点で、企業がマーケティング活動や営業活動を考える時期にきています。
――2015年の国内事業の概況をおきかせ下さい。
夏坂 2015年1~9月の実績では、メークブランドが全般的に好調でした。前年比2ケタ伸長の「KATE」はアイシャドーやアイブロー、秋に発売したアウト展開対応のカラーリップスティックがヒットし、アジアでは、前年の約1・6倍の伸びを達成。グローバルでの売り上げは、すでに200億円を超えており、300億円も視野に入ってきました。今は東アジアを中心に伸長していますが、今後、ASEANでもさらなる成長が期待できます。
「ルナソル」は、2015年8月に上質なショコラをイメージした個性的なコレクションを発売し、大きな反響がありました。アイテムでは特にアイシャドーや口紅が伸びています。
「ルナソル」は、カネボウのカウンターの中で展開しているため、ブランドアイデンティティを発揮しきれていないといった課題があります。このほど銀座三越さまにおいて、ルナソルカウンターを導入しましたが、好調に推移しています。
8店舗まで出店を拡大した「CHICCA」は、前年比2ケタ伸長しており、今後も育成を続けながら、2018年までには12店舗前後に拡大していきたいと思います。
別会社であるエキップは、「RMK」「SUQQU」がともに好調で、前年比2ケタ伸長しました。「RMK」は、2014年よりクリエイティブディレクターにKAORIさんを起用したことでファッション性が高まり、若いお客さまやおしゃれ感度の高いお客さまからも支持を得ています。
「SUQQU」は、好調なポイントメークに加え、品質に定評のあるベースメークが高伸長しました。
スキンケアブランドはカウンセリング系のお客さまが戻りつつあります。「トワニー」では「グロー」で新客獲得ができました。2016年に20周年を迎えるので、攻めの姿勢でのぞみます。
「カネボウ フェースアップパウダー〈ミラノコレクション2016〉」はご販売店さまのサポートもあって過去最高の予約数を達成しました。
このような名品をこれからも輩出するため、職人的なスキルを社内で共有する「名品づくりプロジェクト」を発足しました。
例えば、「ミラノコレクション」には、そのネーミングはもとより、カネボウ独自の高度な技術が随所に活かされています。このような名品に込められた知恵をあらためて検証し、未来の名品づくりに活かしていきたいと思います。