プロパテント時代到来!知的財産戦略で技術とアイディアを武器に

プロパテント時代到来!知的財産戦略で技術とアイディアを武器に

皆さんは「プロパテント」という言葉を聞いたことはありますか?
プロパテント(Pro-patent)の “patent” は「特許」
そして “pro” は「支持する・促進する」を意味します。
つまり、「プロパテント」とは、
特許権をはじめとする知的財産権全般の保護強化を意味します。

近年では、多くの企業が戦略の重要なポイントとして
知的財産権部門の強化等の対策をとるようになりました。
そこで、今回から前編後編の2回に分けて
「プロパテント」についてご説明したいと思います。

知的財産の定義

知的財産とは、
知的創造活動により創作されたものを指し、
創作者固有の財産として、保護されます。
前編では、その中から
(1)「商標権」、(2)「意匠権」、(3)「実用新案権」、(4)「特許権」
の定義について、
ケーススタディを交えて簡単にお話し致します。

1、商標権

商標とは、商品・役務の名称・マーク(文字、図形、記号、立体的形状)で、
以下のような機能を持ちます。

➢自己の商品・役務を、他社のそれと区別させる(自他商品識別機能)
➢自己の商品・役務のユーザーに、自社の情報を周知させる(出所表示機能)
➢自己の商品・役務のユーザーに、品質・機能を理解してもらう(品質保証機能)
➢結果として販売促進につなげる(宣伝広告機能)

更に、2017年4月より以下の新商標も確立されました。

区分(商品・役務の種類)が異なれば、同一又は類似であっても商標は成立します。

類似商標はNGですが、下記のケースでは、①→②→③の応酬の末、D社の主張が通りました(パロディ商標)。

2、意匠権

意匠とは、美しい外観、使い心地の良さを追求した結果、
創作された「工業デザイン」のことで、
物品の形状、模様、色彩、又はこれらの組合せです。

2018年5月、米国連邦地裁が Samsungに命じた損害賠償金5.39億ドルの内99%が、
僅か3件のApple保有意匠権の侵害に対するペナルティでした。
意匠が如何に重要な知財か、ご理解いただけると思います。

3、実用新案権

実用新案権は、考案の独占実施権です。
考案とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち、
物品の形状、構造又は組合せに係る考案」です。
例えば、P社は、「消せるボールペン」に対し、
実用新案権と特許権の両方を取得しています。
前者は後者に比べて、簡易な創作であることが分かります。

4、特許権

特許権は、発明の独占実施権です。
発明とは、「自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」です。
特許の成立要件では、新規性(誰も知らない未知のもの)であるか、
既知であっても
進歩性(容易に思いつけない高度な改良・新機能)があるか、が問われます。

特許には、基本特許と応用特許があります。
人類史上、「自転車」が存在しなかったと仮定します。
もし、Aが
「乗員が踏むペダルの回転力で駆動される人力二輪車(自転車)」という特許を
取得したとします。
以下の通り、Aの特許①の存続期間中は、
Bは苦労して取得した②も③も実施(製造・販売・輸出入・譲渡・使用)できません。
①の様な権利範囲が広い特許を基本特許と呼び、②や③を応用特許と呼びます。

この状況を打開する為のBの戦略は、以下の通りです。

現実的な解は、(b)又は(c)で、特に(c)は
クロスライセンシングと呼ばれて、広く活用されています。

(d)も可能ですが、長期に渡る訴訟に陥りかねませんし(特許庁審決→知財高裁→最高裁)、
敗訴の可能性もあります。

以上より、基本特許(未知の物質・未知の方法の新規発明)の重要性が
ご理解いただけたかと思います。

医薬品・化学・食品分野においては、以下の特許が認められています。


上記①+②が基本特許、③~⑤が応用特許と考えられます。
①を取得する際には、出願時に請求の範囲に、
可能な限り多数の構造を書いておく必要があります。
この多数の構造を網羅する記載方法を、マーカッシュ形式と呼びます。


この記載方法によって、類似品の出現を牽制できます。

以上が、産業財産権の定義の概略です。
次回は、知財の価値について、
現実の企業や国家の戦略を通じてご説明いたします。

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