花王は6月15日、タイ・バンコク郊外のパンヤピワット・コンベンションホールにて、タイ保健省、武田薬品工業らとともに、「デング熱被害を削減するイノベーションの活用」をテーマとするデング熱啓発イベントを開催した。
タイ政府は、「2026年までにデング熱を撲滅する」という目標を打ち出している。このイベントで同社は、タイにおいてデング熱被害を削減するための花王インダストリアル(タイランド)を中心とする取り組みとその意義を説明。さらに、タイにて販売を開始する独自の蚊よけ技術を応用した商品「ビオレガード モスブロックセラム(Bioré GUARD Mos Block Serum)」を紹介した。
今回のイベントは、ASEAN地域10カ国のデング熱啓発日(ASEANデングデイ)に、タイ保健省、タイにおいてデング熱被害を削減する取り組みを行う日本企業の花王、武田薬品工業の主催で行われた。同じ目標に向けて協業するタイの国立電子情報技術センター(NECTEC)、タイ工業団地公社、アマタコーポレーション、デングゼロ、CP ALL、Panyapiwat Institute of Managementなどの機関も参加。新型コロナウイルス感染症が蔓延する中におけるASEANのデング熱対策として、「イノベーション活用」をテーマに、官民合同で行う取り組みが紹介された。
午前に行われたセッションでは、「デング熱イノベーション-デング熱ゼロの地域社会を実現するサステナブルアプローチ」をテーマに、パネルディスカッションを実施。タイの女優パッティ氏がデング熱に感染した経験を語り、医師のリット氏や保健省のコミュニティボランティアが、タイにおけるデング熱の実態を解説しつつ、蚊に刺されないために自分自身で守ることの大切さを力説した。この模様はFacebookのLIVEを通じて、リアルタイムで配信された。
午後のセッションでは、梨田和也駐タイ特命全権大使がタイのデング熱削減に向けて日本の企業が精力的に取り組んでいることへの期待を表明。続いて花王の長谷部佳宏社長が登壇し、花王の取り組みとその意図について次のように語った。
「花王は約8年前、『蚊の完全忌避』を目指して研究を始めた。最も人を殺している生物は『蚊』であり、地球温暖化の影響でデング熱のエリアはどんどん広がっているためだ。人と物の往来が増え、蚊がウイルスを運べば、その影響はさらに広がる。デング熱は、もはや赤道近くの国々だけの病気にはとどまらない。今回の私たちの技術のポイントは、蚊を寄せ付けないのではなく、そもそも蚊が嫌う皮膚にしてしまうという発想だ。
タイにおいて、蚊に刺される多くの場面は室内だ。炭酸ガスの濃度が高く、暖かく、空気がたまっている学校や家に蚊は寄り付く。また外でも、スポーツやレジャーの場で、蚊は汗に反応する。近年の傾向として、これまでの忌避剤に対する抵抗力を獲得する蚊も発生してきた。私たちは蚊が耐性を獲得しにくく、かつ人に優しく、毎日塗り続けられる製品を開発しなくてはと考えた。
一方で今回、私たちは製品を届けながら、その一部を本当に困っている方々に届けるプログラムを構築する。ビジネスとは、豊かな人と貧困の世界を分けることではなく、1つの課題として一緒に解決することだと考えている。日常的な困りごとを解決したい人々の力を借りて、深刻な課題を解決する。まさに、ギアが連携し、それを後押しすることこそが花王の考える理想のモデルだ。花王は、こうしたチャレンジに取り組み、子供たちの未来のいのちを守るプログラムを強く応援する」
このセッションには、タイの副首相兼保健省大臣のアヌティン氏も登壇し、タイにおけるデング熱予防のために官民のパートナーシップを構築することの重要性を強調した。また、会場にはデング熱への理解を深めてもらうための関連情報を提供するさまざまなアクティビティブースも設けられた。NECTECによる健康情報アプリ「Rootan」の紹介ほか、参加機関それぞれの蚊忌避に関するアプローチが紹介された。
花王は、独自で見出した新しい蚊よけの技術を研究員らが説明するとともに、これを応用しタイにて販売を開始する「ビオレガード モスブロックセラム(Bioré GUARD Mos Block Serum)」を紹介した。参加者からは、新しい技術の着眼点に対する驚き、使用感の心地よさに関するコメントや、「タイで新たなデング熱対策品になる」という期待の声が寄せられた。