花王、「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択

粧業日報 2022年9月5日号 4ページ

カンタンに言うと

  • タイにおけるデング熱予測モデル・予報システム構築の取り組みで
花王、「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択
 花王が、タイ保健省疾病管理局(DDC)、タイ国立電子コンピューター技術研究センター(NECTEC)と共同で進める「タイ王国におけるデング熱予防のためのAI技術を活用した蚊媒介ウイルスの拡散予測モデルの構築と予報システムUXの向上を図る実証事業」が、経済産業省が推進し、日本貿易振興機構(ジェトロ)が事務局として実施する「日ASEANにおけるアジアDX促進事業」に採択された。

 同社は、蚊から未来のいのちを守ることを目指す「GUARD OUR FUTURE」プロジェクトを推進しており、その1つのアクションとして、より早く、より正確に、デング熱発生を予測するモデル構築に取り組んでいる。

 蚊が媒介する感染症であるデング熱の流行を防ぐためには、生活者ひとり一人が適切な予防行動をとることが重要なことから、将来的には、デング熱情報を提供するアプリを開発・運営するNECTECと連携し、生活者の予防行動を促し、デング熱の発生を未然に防ぐことに貢献していく。

 タイではデング熱に年間5~15万人、中でも子どもが最も多く感染し、重症化すると死に至ることもある。また、罹患すると治療やそれに伴う労働の機会損失、被害拡大を防ぐための対応など、経済への負担が大きいという観点からもASEAN地域共通の社会課題となっている。しかし現在は、デング熱の安全で有効なワクチン、治療薬がないため、感染を防ぐには蚊に刺されないことが重要で、そのための啓発活動が盛んに行われている。

 同社は、蚊に刺されることを防ぐ研究を進める中、2020年、肌上に低粘度のシリコーンオイルを塗布することで肌表面を蚊の嫌う物性に変化させ、蚊を肌にとどまらせず、吸血を阻害するという独自の蚊よけ技術を開発した。この技術を応用した製品「ビオレガード モスブロックセラム」を2022年2月DDCに寄付し、同省と協働して8万個をタイ国内で配布、さらに同年6月からは、商品としてタイ国内での販売も開始した。

 これを契機に、蚊から未来のいのちを守るグローバルプロジェクト「GUARD OUR FUTURE」を正式に発足。花王パーソナルヘルスケア研究所と花王インダストリアル(タイランド)が中心となり、DDC、NECTEC、タイ工業団地公社(IEAT)、アマタ・コーポレーション、マヒドール大学らとともに、デング熱に関する啓発活動や実証実験、研究活動などを包括的に推進している。

 今回の事業では、デング熱流行を早期に予測するモデル構築のための実証研究を行う。具体的には、DDCの保有するデング熱罹患者情報と気候などの環境要因、蚊のデングウイルス伝播をあわせて機械学習による解析に取り組む。この予測モデルを生活者の予防行動に役立ててもらうことを目指し、デング熱情報を発信するアプリを開発・運営するタイ科学技術庁傘下のNECTECと連携する。

 また、デング熱予測モデル構築、デング熱予報の提供を通じて、タイの生活者にデング熱のリスク増加を伝達し、予防行動を促すことにより、デング熱患者を減少させることを目指す。適切な予防行動の啓発を通じて蚊対策品市場を拡大し、デング熱によるASEAN地域の経済損失回避に貢献していく。
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