化粧品・トイレタリー容器メーカーのツバキスタイルでは、10年程前から再生PETやバイオマスPET、PEを導入した容器の製造・販売に注力しており、環境対策樹脂の使用量は化粧品業界でも最大規模に及ぶ。しかし、こうした容器も最終的には捨てられたり、燃やされたりすることは否定できないため、回収から容器製造までを一貫して行える仕組みの構築に着手した。
取り組みを開始するにあたっては新会社「BEAUTYCLE」を設立、容器大手のグラセルも資本参加しており、当面は両社の供給した容器を優先回収し、リサイクルしていくという。
なお、佐賀・神埼市に2階建て延床面積4000㎡のリサイクル工場と、延床面積1650㎡の倉庫を建設し、2023年春に工場を稼働させる予定となっており、化粧品、トイレタリー容器における「回収→洗浄→粉砕→樹脂化→容器再生」という水平リサイクルシステム構築を目指す。
工場には、1カ月でPET約250トン、PE/PP約150トンの処理が可能なラインを作る。また、FDA(米国食品医薬品局)の認証を受けた機械を導入することで、食品容器としても利用できる品質を実現し、より安心できるリサイクル化粧品容器の製造、販売につなげていく。
BEAUTYCLEの取り組みに賛同した新日本製薬では、使用済容器を店頭で回収し、水平リサイクルによって同じ容器に再生させる「パーフェクトワン リサイクルプログラム」を実施した。
今年4月からは全国のパーフェクトワン直営店に容器回収BOXを設置し、回収した容器はBEAUTYCLEにて「資源」として活用、同じ容器へと再生させる。新日本製薬との取り組みでは消費者からポジティブな反応がみられた一方で、課題も見えてきたという。
「消費者にはこれまで化粧品容器を再生のために持っていくという習慣がなかったことから、飲料ペッボトル以外のプラスチック製品でも回収して再生することができるという認識を広めていく必要があるだろう。まずは、パーフェクトワン リサイクルプログラムのように指定の商品で協力いただける企業との取り組みを中心に検証を進めていき、将来的には大手の小売業と組んで、大規模な回収・再生にも着手したいと考えている。ただ、ドラッグストア等には数多くの商品が並び、シュリンク包装だけの容器もあれば、洗浄による除去が難しい加飾が施されている容器もある。それぞれ洗浄のしやすさが異なることから、現在は、塗装・蒸着・強化ラベル仕様などの特殊な加飾にも対応できるよう、技術的な検証を行っている」(代表取締役 杉山大祐氏)
今後については、化粧品業界はもちろん、異業種ともアライアンスを組んで、マーケティング的な取り組みやリサイクルに関する啓蒙活動を行っていく方針だという。
「BEAUTYCLEのコンセプトに賛同していただける企業やSDGsの見識者とアライアンスを組み、勉強会やセミナーを実施したり、これまでの成功事例をPRするなどして輪を広げ、飲料PET以外のプラスチック製品でも回収・リサイクルができるということを、様々な形で発信していきたいと考えている」(杉山氏)
また、ツバキスタイルは、成形から加飾まで一貫生産を行うことができる自社工場を持っている。原料やエネルギー、段ボールなどの副資材、運送費など、各種コストの高騰が続く中でも、そうした強みを活かし、各工程での効率化や生産設備の強化、管理の徹底などを通じて、コスト削減に取り組んでいる。
ユニークな容器を次々と生み出す新たな価値創造力も同社の強みといえるだろう。
直近では、使った分だけ収縮して中身を酸化から守るデラミ容器や、見た目の美しい二層式容器の引き合いが多く、二層式容器については、シャンプーやトリートメントなど、ヘアケアでの採用が増えている。
「当社では、大ロットでコスト競争をして規模で勝つというよりは、その対極を行くような、容器としてのユニークさやオリジナリティを追求して、その価値に見合った価格を認めていただき、提供するという取り組みを進めてきた。こうした状況だからこそ、製品の価値を増幅させる提案力がより一層重要になってくるだろう。当社では、一貫生産を行える自社工場でできる限りコストを吸収するとともに、強みの提案力で価値ある製品を提案することで、単純な値上げに頼り切らない形での対応を進めている。各種コストの高騰が経営を圧迫することは確かだが、企業としての競争力を高める良い機会でもあると、ポジティブに捉えている」(杉山氏)