ライオン、日立と健康診断データを解析

粧業日報 2023年2月20日号 2ページ

カンタンに言うと

  • 職域における歯科健診導入が口腔・全身健康に寄与する可能性を確認
ライオン、日立と健康診断データを解析
 ライオンは、日立製作所 日立健康管理センタ(茨城県日立市)と協働で、職域における歯科健診の導入が従業員の口腔・全身健康に及ぼす影響について調査研究を実施した。

 2016年10月から2020年3月までの約4年間、日立健康管理センタで人間ドックを受診した従業員(年間約1万3000名)を対象に、歯科健診を実施し、そのデータを解析したところ、歯科健診の導入により従業員のオーラルケア行動の実施頻度が経年で増加し、口腔の健康状態が改善することが明らかとなった。

 また、唾液検査指標と全身健康指標との間に関連性が認められ、口腔の健康状態が全身健康と関連することを見出した。研究の一部内容については、2023年1月27日~28日に開催された「日本総合健診医学会 第51回大会」にて2社共同で発表している。

 歯周病が全身疾患悪化の一因となる可能性が報告され、口腔健康の維持増進による全身健康維持に注目が集まる中、「骨太方針2022」では、健康維持を目的とした国民皆歯科健診の概念が提唱されており、その施策の1つとして、企業の健康診断における歯科健診に対しても注目が集まることが予想される。しかし、これまで職域で歯科健診を実施することによる口腔や全身健康への影響を解析した大規模な調査研究は少なく、情報が限られていた。

 そこで今回は、年間1万人以上の従業員に対して人間ドックを実施している日立健康管理センタと協働で、職域における口腔と全身健康状態との関連性の解明に向けた調査研究を実施することとなった。

 同センタでは、2016年度から受診項目に歯科健診を導入しており、検討では、職域における歯科健診の実施が従業員の口腔状態・全身健康状態に及ぼす影響について検証した。

 2016~2019年度に取得したオーラルケア行動に関する問診データ(期間:2016年10月~2020年3月、16年度4794人、17年度1万2150人、18年度1万2246人、19年度1万1319人)を解析した結果、健診導入後から経年的にオーラルケア行動(1日の歯みがき回数、フロス使用率)の実施頻度が増加していた。また、歯科通院率に関しても同様に歯科健診導入後から経年的な増加を確認できた。

 定期的に歯科健診を受診し、さらに自身の口腔内の状態をSMTや口腔内カメラで視覚的に把握することが、従業員のオーラルケア習慣の向上につながったものと考えられる。

 また、2016~2019年度に取得した唾液検査項目のうち、歯ぐきの健康状態(唾液中の白血球値)を口腔の健康状態の指標として解析した。その結果、歯ぐきの健康状態が悪い人(白血球値が高め)の割合は、歯科健診導入年度の2016年度と比較して、2019年度では約20%減少し、歯ぐきの健康状態が良い人(白血球値が低め)の割合は約10%増加していた。オーラルケア習慣が向上したことにより、口腔健康状態が改善した結果と考えられる。

 歯科健診の初回受診時における、歯ぐきの健康状態(唾液中の白血球値)と全身健康の指標(CRP、HbA1c)との関連性を解析したところ、歯ぐきの健康状態が悪い(白血球値が高め)群では、全身の炎症状態を示すCRP値、検査前1~2カ月間の血糖値を反映するHbA1c値が有意に高いことがわかった。このことから、口腔の健康状態と全身の健康状態が関連する可能性が考えられる。

 さらに、初回の受診時に唾液中の白血球値が高かった群のうち、2回目受診時にその値が改善した群では、改善しなかった群と比較してCRP、HbA1cの値の悪化が有意に低減していた。このことは、口腔健康状態の変化が全身健康の変化と関連することを示唆しているという。
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