コーセー、南アルプス工場のエネルギーに水素を活用

粧業日報 2024年6月26日号 1ページ

カンタンに言うと

  • 山梨県が誇る水を活用したエネルギーの地産地消モデル構築に着手
  • 小林社長、「水」を中心とした理想の工場を実現
  • 恵まれた水資源と敷地の広さが工場建設の決断を後押し
コーセー、南アルプス工場のエネルギーに水素を活用

 コーセーは、山梨県南アルプス市に新たな生産拠点である「南アルプス工場」(建設地=山梨県南アルプス市野牛島、敷地面積=11万1525㎡)を建設するにあたり、山梨県、同社の生産子会社であるコーセーインダストリーズと三者で連携し、豊かな水資源を活用しながら持続可能な社会の構築に向けて取り組んでいくことで合意した。

 山梨県産の「グリーン水素」(再生可能エネルギーを使って発電された電気を使い、水を電気分解して得られた製造時にCO₂を排出しない水素)をはじめとした環境に配慮したエネルギーを最大限に活用し、水由来のエネルギーの地産地消に取り組んでいく。

 コーセーは、「南アルプス工場」建設の第一期工事(延床面積=3万9300㎡、従業員数=300名程度、投資額=250~300億円)を2024年7月に着工し、2026年上期中の稼働を計画している。

 化粧品の製造において「水」は重要なファクターであり、原料として必要なことに加え、工場設備の洗浄や従業員の飲食に関わる様々な場面で必要なことから、清澄で豊富な水資源に恵まれた山梨県に新工場を建設することとした。「美しい知恵 人へ、地球へ。」という企業メッセージに基づき、人と地球の双方に向き合い、広く人に寄り添いながら、水資源や森林などの環境保全に取り組むサステナブルな要素を取り入れた工場として整備していく。

 工場の稼働にあたっては、水資源以外にも、原料の溶解や混合、運搬、工場内の湿温度管理などのあらゆる場面で電力や熱の「エネルギー」も必要であることから、南アルプス工場において使用するエネルギーに山梨県産の自然豊かな資源を最大限に活用していく。

 メインの電力にも水由来のエネルギーを活用し、県営の水力発電により作られたCO₂フリー電力とも表現される再生可能エネルギーを用いるほか、日照時間の長い山梨県の特徴を生かした太陽光による自家発電も使用する。なお、県営の水力発電により作られたCO₂フリー電力100%を建設段階から工事のエネルギーとして使用するのは、全国で初めての事例になる。

 さらに熱エネルギーとしては、従来の化石燃料から山梨県が注力事業として取り組む県産の「グリーン水素」に段階的に転換していくことで環境に配慮していく。

 具体的には、化粧品の製造に必要な熱を生み出すエネルギーを、従来の化石燃料から山梨県産水素に転換していく。「やまなしモデルP2Gシステム」により製造される水素は、太陽光発電による余剰電力と山梨県の水から作られた再生可能エネルギー100%のグリーン水素。この水素を専用のトレーラーにて南アルプス工場へ調達し、利用していく。このように、水素を既存燃料に置き換えて事業活動のエネルギーとして使用していくことは国内でも先進的な事例という。

 今後は、水素発生装置「やまなしモデルP2Gシステム」の導入なども視野に入れ、例えば工場内で循環処理された水と太陽光から自家発電した電力を利用して水素を発生させるなど、工場稼働後も資源を循環させながら、環境に配慮したエネルギーへの転換を推進していく。

 山梨県が誇る水を活用したエネルギーの「地産地消モデル」の構築を、全国に先行するモデルとして行政とともに取り組み、カーボンニュートラル社会の実現と地域の活性化に積極的に取り組む。

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