化粧品受託製造大手の日本色材工業研究所(東京・港区、奥村浩士社長)は、UVやパウダーを中心に市場を切り拓く最新の独自技術を数多く披露するほか、国内に加えて海外市場も広げていこうという姿勢を鮮明に打ち出している。特にメークアップの領域では数々の画期的な研究成果を打ち上げてきた同社だが、今回のCITE Japan 2015(2015年6月3日(水)~5日(金)パシフィコ横浜)はどんなメニューが並ぶのか。顧客である販売メーカーをフルコースでサポートする展示内容に迫った。
UV防御と軽い感触を両立
「面」で描くデザインフィラーも
今回は、展示テーマに「調和・融合」「無限の広がり」を掲げる。奥村社長によると、同テーマには「処方や充填技術などイノベーションを広げる」というイメージを込めたほか、「国内に加え、グローバル市場にも広げていきたい」と海外戦略を強く意識したメッセージも投げかけている。
そのうえで、具体的に「UV」「ドーム」「ベースメーク」「リップメーク」「アイメーク」、そして国際化粧品技術者会連盟「IFSCC」世界大会での研究発表という6つのカテゴリーに焦点を当てた。今回は展示品目数をあえて30弱に絞り込み、「新しい技術を活用し、かつ市場のニーズにもマッチしたものを選んだ」(奥村社長)という。
中でも来場者の関心を集めそうなのが、紫外線防御の最高基準「SPF50+・PA++++」の「UVミルク」だ。皮脂や汗に強い設計でありながら、軽い仕上がりやベタつかない使用感を実現したといい、石鹸でも簡単に洗い落とせる点も特徴的だ。医薬部外品として使用できる処方も開発済みで、注目のUV市場で一歩抜け出そうという技術に仕上げてみせた。
一方、「IFSCC」の研究発表では、パウダーを中心に独自技術をアピールする。
その筆頭格が、昨年のパリ大会でポスター発表した、花弁状ケイ酸カルシウムを用いたUVルースパウダー(SPF50+・PA++++)だ。
UVルースパウダーにおいて、技術的に困難とされてきた感触とUV防御の両立を実現したものだ。花弁状ケイ酸カルシウムを用いることで、これまで配合できなかった量の紫外線吸収剤を取り入れることができるようになり、同時に優れた感触を生み出すことに成功した。
また、同様にケイ酸カルシウムを利用することで、カメオのような複雑で立体的な表面形状を持ちつつも、軟度を保つプレストパウダーも展示する。3Dデザインでここまで表面をくっきりと浮かび上がらせる技術は希少価値が高く、特許も取得している。これも、2008年の「IFSCC」バルセロナ大会で世界に向けて発信した自信作だ。
このように、同社は世界的権威の「IFSCC」で数々のポスター発表を行ってきた。発表回数は昨年までに計9回に達し、競合企業と比べても飛び抜けて多い。ここに、技術力の高さや研究への強い探求心が垣間見える。
展示会ではこのほかにも、従来のデザインフィラー技術を応用した最新の研究成果も披露する。奥村社長は、「これまで『線』でデザインを描くことはできたが、今回は『面』で描画する技術を開発した」と力を込める。
同社は例年、「ビューエンス」シリーズと銘打って株主優待品を開発しているが、今年はこの最新技術を盛り込んだ美容液をつくり出した。内容物の中に、くっきりとバラが浮かび上がるアイキャッチ効果の高い製品になっている。
品質管理の世界基準を担保
アジア、欧米市場開拓を後押し
今回の展示会では、国内に加えて海外市場も全面的にサポートする姿勢を強調している。
最新技術を発表するUVは、まさにそうした海外市場の開拓も視野に入れた取り組みの1つだ。
例えば、北アメリカでは現在、UV商材がOTC(一般用)医薬品に分類されているように、高度な品質管理が求められている。また、ヨーロッパでは「ISO22716」(化粧品GMP)が義務づけられるなど、世界的に規制強化の流れが加速している。
こうした市場背景から、同社は近年、主力の「座間工場」(神奈川県)などで品質管理強化のための要員の拡充と体制の整備を実施。昨年稼働した「つくば工場」(茨城県)でも、そうした高い管理基準をクリアする体制を整えている。
奥村社長は、展示会の目玉の1つとなるUVについて「つくばも座間も、FDA(アメリカ食品医薬品局)の査察をパスできる環境を準備している」と自信を見せる。「特に当社は海外のお客様が多い。グローバルでどう展開していけるかは重要な経営課題だ」(奥村社長)
今後は国内メーカーによる海外進出がさらに加速していくことが予想されるとともに、展示会にはアジアを中心に海外メーカーからも熱い視線が注がれている。独自の処方技術とともに、充実した品質管理体制も武器にして、販売メーカーのグローバル戦略をサポートしたい考えだ。
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この記事は週刊粧業 2015年5月26日号 掲載
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