日本コルマー、「高リピート」につながる化粧品づくりへの挑戦

粧業日報 2016年5月19日号 2ページ

カンタンに言うと

日本コルマー、「高リピート」につながる化粧品づくりへの挑戦
乳液、クリームの再啓蒙で
「乾燥肌」悩みにアプローチ

 ――経済産業省が発表している化粧品出荷統計によると、国内化粧品市場はここ数年、約1兆5000億円で横ばいから微増で推移しています。研究者からみて、昨今の化粧品市場はどのように映りますか。

 田中 カテゴリーによっては、コンセプトや企画で面白い製品が展開されているものの、製品の中身に関しては、全体的に「これは!!」と感動するようなものが少なくなってきたと感じる。化粧品の開発製造を行う企業として、当社もこの事実をしっかり受け止めて研究開発に取り組んでいく必要がある。

 そこで、新規原料の開発や、既存原料から新たな美容効果を見出す研究といった従来の活動に加え、化粧品としての価値を高める製品開発をテーマに新規基剤の開発を昨年より本格的にスタートしている。今までの化粧品にはなかった新しい価値を生み出すとなれば、化粧品の骨格となる基剤の進化が必要だと思っている。

 東野 それは、開発した製品が市場でロングセラーに結びつくかどうかにも関連してくる。これまで消費者に支持されてきた化粧品の傾向をみると、配合成分に特徴づけられた企画・コンセプトによる競合製品との差別化と、また使いたくなるような使用感・効果実感の大きく2つにその特徴が分類される。

 近年依頼が増えているオーガニック・ナチュラルをコンセプトにした化粧品は、前者のポイントを重視したものが多い。しかしながら、植物由来エキスを中心に様々な美容成分の開発が進み、配合成分の特長を前面に打ち出した訴求も頭打ちになってきた。消費者も、新規成分の配合による「業界初」や「世界初」といったキャッチーな提案はそろそろ飽きてきているように思われる。

 小池 同時期には、複数の機能を兼ね備えたオールインワンタイプのジェル状美容液が流行し、市場活性化に大きく寄与してきた。

 しかしながら、ジェル状美容液が広く普及したことにより、一連のデイリーケアが手軽になる一方で肌の乾燥が気になる女性は増えてきているように思われる。ジェル状美容液の多くは、クリームや乳液の機能も唱えられており、通常のスキンケアに油系アイテムを取り入れる必要がなくなったと思われがちだ。しかしながら、保湿とともに、皮膚を保護する役割をもつ油分の補給が不十分であると、皮膚バリア機能が低下し、肌が乾燥しやすくなってしまう。

 東野 また、乾燥しにくい多湿・高温の夏場でも空調設備が整った環境で快適に過ごせる時代である。現代人の肌は年中、乾燥しやすい生活環境に置かれていると考えるべきである。

 そうした生活環境の変化を踏まえ、昨今は油分を多く配合したオールインワン化粧品の企画が実際に増えてきているように思われる。成分表を見れば、もはやジェルではなく、乳液やクリームと言えそうな製品もオールインワンジェルの売場に展開されているなど、多機能型の製品にも油系のアイテムが揃ってきた。

 田中 加えて、国内の化粧品市場は少子高齢化にともなう化粧人口の減少により、長期的に縮小していく。そうした中で、当社が継続的に成長していくためには、顧客に提供した製品が多くの消費者にリピートされ、長く愛用されてもらわねばならない。

 今回の基剤開発は、リピートにつながる化粧品づくりの一環である。大学の研究機関や原料メーカーの協力を得ながら、新たな油剤や界面活性剤を開発していく計画だ。

 具体的には、これまで使用してきた基剤を見直しながら、最新設備を積極的に導入し、改良を進めている。新しい生産技術、素材を組み合わせることで、同じ処方でも異なる使用感をもたらすことができる。肌への新たな効果を見出すことも不可能ではない。

 例えば、乳化系の化粧品で敬遠される理由の一つに挙げられる「肌への浸透性の悪さ」は、エマルジョンの粒子が大きいことに起因する場合がある。エマルジョンの粒子をより細かくする特殊な設備を用いることで、従来よりも浸透性の良い製品に改善することも可能である。

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